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帰国早々襲いかかってくる悪役令嬢。

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「確かに空気が悪いですね……」

 ウィン様と共に、私は自国へ帰って参りました。
 あの国とは違い、どこも工場だらけで嫌な雰囲気の漂う我が故郷を情けなく思います。

「えっ!? リラ!?」

 ふと、後ろから声をかけられました。
 
 侯爵令嬢のハレス・ミルガード様です。
 公爵家とは非常に接点が大きい――いわば今の私にとって、出くわしたくなかった人間のうちの一人と言えます。

「どうしてあなたがここにいるの? 隣のイケメンはどなた?」
「僕はウィンです。○○国の王子ですよ」
「……事情がありそうね」

 ハレス様が合図をすると、大勢の大柄な男たちが、どこからともなく表れて私たちを取り囲みました。

「ペットにすらなることができなかった、哀れな女のおでましよ! ボコボコにしてしまいなさい!」

 一斉に、男たちが殴りかかってきますが……。
 今の私は、魔法を隠すことはありません。
 
 風の魔法を唱え、あっさりと男たちを吹き飛ばします。

「は……?」

 ハレス様は、状況を理解できていないようです。
 ゆっくりと、ウィン様が、ハレス様に近づいていきます。

「なるほど……。やはり、リラ様は相当ひどい扱いをこの国で受けていたようですね」
「魔女の噂は……やっぱり本当だったのね!」
 
 ウィン様ではなく、その後ろにいる私を睨みつけながら、ハレス様は叫びます。

「私は……。そのようなことを企てようと考えたことは一度もありません。全て勘違いなのです」
「だったら今の力は何? まるで悪魔がため息をついたかのような、皮の抉れるような強い風……」
「ハレス様。他国ではありますが、王子として問いたい。……ご自身の命と、公爵家や国王の命、どちらが大事ですか?」
「くっ……。覚えてなさい!」

 ハレス様は、去っていきました……。
 
「ふぅ。疲れはありませんか? リラ様」
「はい。……ありがとうございます。ウィン様がいなければ、もっと苦労を強いられるところでした」
「そうでしょうか。あの力を見れば、きっと皆恐れて手出しなどできないと思われますが」
「だといいのですが……」
「敵は、どれくらいの数この国にいるのでしょう」
「今のハレス様を筆頭とする侯爵家。私との婚約を破棄した公爵家。そして――国王とそれを守る騎士団たちです」

 敵の数は、非常に多い――。
 それに対して、私たちはたった二人です。
 この国で、味方を得ることは難しいでしょう。

 それでも、国を追い出された時とは違い、私は全てを成し遂げることができるような気がしていました。

「僕たちの魔力は、相性がいいですから……。協力すれば、倒せない相手などいません。行きましょう」

 ウィン様と共に、私は侯爵家へと向かうことにしました。
 今であれば、戦力も削がれていますから、チャンスだと思ったのです。
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