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悪役令嬢の提案。
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翌日――。
私は自ら、侯爵家を訪れました。
「どちら様でしょうか」
「……昨日、お会いしたものですと、ご令嬢に伝えてくだされば、それで伝わるはずです」
私がそう言うと、執事は目を見開きました。
そうかそうか。こいつが噂の――。
そんな思考が、表情に浮かび出てしまっています。
しばらくして、私はとある部屋に案内されました。
……あきらかに、細工が施されている部屋です。
毒ガスか……。あるいは、槍などが飛び出してきて、相手を攻撃する部屋――。
「こんにちは。旅のお方」
ご令嬢が、真っ赤なドレスを着てやってきました。
その色が、まるで闘争心を表しているかのようで、非常に不気味に思ったのです。
「私は侯爵令嬢――カロイ・マーセルよ。あなたは?」
「名乗るほどの者ではありません」
「そうかしら。その気品、さらに言えば――見張りを魔法で退かしたことを思うと、相当身分の高い女性だと思うけれど」
どうやら、昨日逃げた見張りが、魔法の件を話したらしいですね。
ここまでくると、隠すことは難しいでしょう。
「私は――○○という国の伯爵令嬢でした」
「でした?」
「……何の断りもなく、たった一人で、かようにも遠くの国を訪れているというのは、そういうことです」
「まぁ。それは残念ね」
「単刀直入に申し上げます。――平民を虐めるのはお辞めになってください」
「えぇ。良いわよ」
昨日の夜と同じ――。
あっさりと、カロイ様は私の提案を受け入れました。
どう考えても、裏があります。
「ただし――。あなたが私の味方となることが条件」
「味方……?」
「この国には、公爵家がいない。いや、正確にはついこの間までいたけれど――追放されてしまったわ」
「……そうですか」
「理由は、国王になろうとしたから。そして――我が侯爵家は、その手伝いをしていたの」
「では、なぜ同時に国外追放されなかったのですか?」
「許しを得たのよ。父は追放され、現在の当主は母。それなりに大人しく動いていたけれど――。そういつまでも黙りこんでいるわけにはいきません」
カロイ様が、不気味な笑みを浮かべました。
「公爵家で敵わないのであれば、侯爵家でも無理なのでは?」
「人質を取るのよ。王子のガールフレンドを……」
「それを手伝えと申すのですか?」
「我が母が王女となった時、あなたには公爵家当主としての立場を与えることを約束するわ」
「いきなり現れた他国の人間に、なぜそのような提案をなさるのでしょう」
「魔法の腕が、確かだからよ」
カロイ様が、ゆっくりと近づいてきます。
手を伸ばしてきました。
握手を求められているのです。
「さぁ。この手を取って?」
私は――。
私は自ら、侯爵家を訪れました。
「どちら様でしょうか」
「……昨日、お会いしたものですと、ご令嬢に伝えてくだされば、それで伝わるはずです」
私がそう言うと、執事は目を見開きました。
そうかそうか。こいつが噂の――。
そんな思考が、表情に浮かび出てしまっています。
しばらくして、私はとある部屋に案内されました。
……あきらかに、細工が施されている部屋です。
毒ガスか……。あるいは、槍などが飛び出してきて、相手を攻撃する部屋――。
「こんにちは。旅のお方」
ご令嬢が、真っ赤なドレスを着てやってきました。
その色が、まるで闘争心を表しているかのようで、非常に不気味に思ったのです。
「私は侯爵令嬢――カロイ・マーセルよ。あなたは?」
「名乗るほどの者ではありません」
「そうかしら。その気品、さらに言えば――見張りを魔法で退かしたことを思うと、相当身分の高い女性だと思うけれど」
どうやら、昨日逃げた見張りが、魔法の件を話したらしいですね。
ここまでくると、隠すことは難しいでしょう。
「私は――○○という国の伯爵令嬢でした」
「でした?」
「……何の断りもなく、たった一人で、かようにも遠くの国を訪れているというのは、そういうことです」
「まぁ。それは残念ね」
「単刀直入に申し上げます。――平民を虐めるのはお辞めになってください」
「えぇ。良いわよ」
昨日の夜と同じ――。
あっさりと、カロイ様は私の提案を受け入れました。
どう考えても、裏があります。
「ただし――。あなたが私の味方となることが条件」
「味方……?」
「この国には、公爵家がいない。いや、正確にはついこの間までいたけれど――追放されてしまったわ」
「……そうですか」
「理由は、国王になろうとしたから。そして――我が侯爵家は、その手伝いをしていたの」
「では、なぜ同時に国外追放されなかったのですか?」
「許しを得たのよ。父は追放され、現在の当主は母。それなりに大人しく動いていたけれど――。そういつまでも黙りこんでいるわけにはいきません」
カロイ様が、不気味な笑みを浮かべました。
「公爵家で敵わないのであれば、侯爵家でも無理なのでは?」
「人質を取るのよ。王子のガールフレンドを……」
「それを手伝えと申すのですか?」
「我が母が王女となった時、あなたには公爵家当主としての立場を与えることを約束するわ」
「いきなり現れた他国の人間に、なぜそのような提案をなさるのでしょう」
「魔法の腕が、確かだからよ」
カロイ様が、ゆっくりと近づいてきます。
手を伸ばしてきました。
握手を求められているのです。
「さぁ。この手を取って?」
私は――。
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