あと一週間で、聖女の夫になることができたのに……。残念でしたね。

冬吹せいら

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後の二人

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「ぎ、ぎぎぎぎぎ!!!」

森に捨てられてすぐ、ゴブリンの群れに捉えられてしまった。

私も、トレバー様も、ボロボロの状態で……。
ほとんど抵抗することなんてできずに、奴らの巣へ。

外の世界に出たことすら、ほとんどない私。
――あと少しで、大国に行けるはずだったのに。

初めて見る外の世界が、ゴブリンの巣だなんて……。

「うああ! 離せぇ!!!!」

トレバー様が、木に縛りつけられている。
ゴブリンの生態は……。
本で読んだことがあるから、だいたいはわかっていた。

もし、捉えた人間の中に、男と女が、それぞれいた場合。
まず、男の方を殺し、力を示すことで、女の抵抗する意思を奪う。

「おいリアム! 何ぼさっと見てるんだ! 早く救え! 僕を救えよ!!」

私は声も出せなかった。
恐怖で、体が震えてしまう。

そんな私を、トレバー様は、ゴブリンと同じか、それ以上に冷たい目で、睨みつけるのだった。

「使えない女だ! ルイーザの方が百倍マシだった!」

あんなに、愛してると言ってくれたのに。
ルイーザなんて、嫌いになったと、言っていたのに。

どうして……。こんなことに?

そう思っていたら――。

「いひっ、いひひひっひい!!!!」

奇妙な笑い声をあげながら。
ゴブリンが、トレバー様を括り付けている木に……。

火を放った。

「お、おい! 嘘だ……。やめろぉ! やめてくれぇ!」
「ふ、ふひっ、ひひひひ!!!」
「ひひひ~!!!」

大勢集まってきたゴブリンたちが、木の周りを囲むようにして、踊り始めた。
そのせいで、私からは、トレバー様が見えなくなっている。

……見たくなんて、無いけれど。

「いやだああ!!! 死にたくない! 助けてくれぇ!!! 熱いよぉ!」

木が燃えている。
やがて、トレバー様の叫び声は、聞こえなくなった。

「ひぎいい!」
「痛っ!?」

いきなり、別のゴブリンに、頭を小突かれた。

「な、なんなの……?」

その痛みで、振り返った私。
そこに立っていたのは……。

他のゴブリンより、何周りも大きい、ボスゴブリンだった。

「ぐはははははは」

ボスゴブリンに抱えられ、私は巣の奥へと連れ去られていく。

ゴブリンの生態。

もし、捉えた人間の中に、男と女が、それぞれいた場合。
まず、男の方を殺し、力を示すことで、女の抵抗する意思を奪う。

その後、残った女を、巣の奥へ連れ去って……。

死ぬまでずっと、ゴブリンの欲望解消の道具にされる。

もはや、涙が流れることすらなかった。
深い絶望。
強い後悔。

だけど、これも全て報いなのだ。

……ごめんなさい。お父様、お母様。
リアムは……。

リアムは、期待に応えられませんでした。
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