あと一週間で、聖女の夫になることができたのに……。残念でしたね。

冬吹せいら

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聖女の認定

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トレバー様に婚約破棄を言い渡されて、一週間後。

私は教会で……。聖女としての認定を受けていた。

「あぁルイーザ……。辛かったわね。頑張ったわ」
「お母様……」

認定式が終わった後、お母様に抱きしめられ、泣いてしまった。

お父様も、そんな私たちを見て、静かに涙を流している。
普段は決して泣かない、強い父なのに。

それだけ……。突然私に起きた出来事は、衝撃的だったのだろう。

当の本人としては、あの暴力男と離れることができて、清々しているとすら感じているけど。

『聖女となりなさい』

そんな声が、いきなり頭の中に響いたのは、一か月ほど前のこと。
十五歳の誕生日に、私は聖女として目覚めることが、決まっていたのだ。

迷惑をかけたくないから……。誰にも言ってなかったけど。
昨日、それを伝えたら、かなり大ごとになってしまった。
家族はもちろん、教会も大騒ぎ。

「うえぇえん!! ルイーザ様~! おめでどうございまずぅう!!!」

家に帰ると、メイドのリーサンが、いきなり号泣しながら、抱き着いてきた。

「リ、リーサン……。どうしてそんなに泣いているの?」
「だっでぇ! ルイーザ様ぁ! 裏切られてぇ! 可哀そうでぇ~!!」
「わかったから……。落ち着いて?」

リーサンの頭を撫でながら、私も自分の涙を拭った。

しばらくして、ようやく落ち着いてくれたリーサンと、自室で紅茶を飲んでいる。

「それにしてもあの鬼畜野郎! 信じられませんね! 今日がリアムとの結婚式なんですって!」
「……へぇ」

正直、もうどうでもよかった。

トレバー様に婚約破棄を言い渡されてしばらくは、わざわざ家まで文句を言いに来る人がいたり、お父様やお母様の仕事にも、支障が出たりしたそうだけど……。

今日、私が聖女として認定されたことで、全てなくなるはずだ。

聖女には……。嘘の無いものしか、なることができない。

だから私は、あの場で、頑なに罪を認めなかった。
少なくとも、パーティに出席した人たちは、気が付くと思う。

国は、名家のシルバード家の令息が結婚するということで、そっちに目が行ってるみたいだけど。
あとで……。神父様の報告を受けたら、驚くだろうなぁ。

それにしても、リアムとトレバーが結婚するというのは、正直予想外だった。
リアムは偽物とは言っても、名門オーデンバム学園の首席。

大国に行く権利もあったのに。
惚れっぽい権力者に捕まると、ろくなことが無い。

それを、身をもって知ることになる。

「聖女様としての活躍を、私リーサンも、全力で支えますよ!」
「リーサン……。ありがとう」
「えへへ……」

リーサンの頭を撫でてやると、嬉しそうに頬を緩ませた。

さて……。明日から、聖女の仕事が忙しいぞ。
頑張れ。私。
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