田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら

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最後の説得

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ナイザー様に家まで送ってもらった後、しばらく部屋で休んでいると、メイドのルエールがやって来た。

「どうしたの? ルエール」

いつも、優しい笑顔を向けてくれるはずの、ルエールの表情が、どこか冴えない。

「模擬戦の件を、耳にしまして……」
「あら。聞いていたのね」

お父様に……。
模擬戦で勝利して、オーロラの不正を暴く。
そう話したところを、見られていたらしい。

「心配してくれているの? 大丈夫よ。きっと勝って見せるわ?」
「……お嬢様。どうか、今のうちに、謝罪をしてください」
「……謝罪?」
「お願いします……」
「ちょ、ちょっと。ルエール?」

ルエールが、深々と頭を下げてきた。

「どうしたのよ。謝罪って? 一体誰に謝罪するの?」
「お父様、ナイザー様、それから学園長……。件の少女……。数え上げれば、キリがありません」
「……ごめんなさい。何を言っているのか、さっぱりだわ」
「お嬢様。お願いします……」
「出て行って。今日はあなたと、会話したくないの」
「お嬢様!」

ルエールが、泣きながら、私にしがみついてきた。
せっかくの可愛い顔が……。台無しだ。

「このまま戦ったところで、あの少女には、勝てません!」
「大丈夫よルエール。これを見なさい」
「……それは」

私は……。自慢の毒林檎を、ルエールに見せた。
家に帰ってから、ずっとこれを作っていたのだ。

「これを食べれば、私の好きなタイミングで、とんでもない腹痛を起こすことができるわ。すぐに発動しないところがミソなの。模擬戦が始まる前に、これをあの子に食べさせて……。然るべきタイミングで、発動する。そしたらあの子……。ふふっ」

お腹を抱えて、悶え苦しむオーロラの姿が、目に浮かぶ。
きっと、糞尿を垂れ流し、涙と鼻水、それから涎が、止まらなくなるだろう。

新入生百人の前で、醜態を晒すあの子を見るのが、楽しみで仕方ない。

「お嬢様……。お願いですから。やめてください」
「どうして? ルエール。彼女の不正が暴かれれば、私は二番じゃなくて、一番になることができるのよ?」
「ですが、その二番も――」
「何を言おうとしているの?」
「……」

ルエールを睨みつけた。
全く……。今日は随分と、舌が回るみたいね。

「大丈夫よ。ルエール。必ず私は、勝ってみせるから……」
「……はい」

諦めたように、ルエールは部屋を出て行った。
……申し訳ないけど、邪魔をされるわけにはいかない。

明日、あの子を倒して、私が一番になる。
そうすれば、全て解決なのだから。
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