11 / 15
明かされた事実
しおりを挟む
「嘘です……。そんなこと、あってはならない」
「こんなことになったのは、君を強くしてあげられなかった、僕の責任でもある」
「違います! 責任など……。ナイザー様? こんなことは、何かの間違いです。婚約を解消するだなんて……。おかしいです」
ナイザー様が、首を横に振った。
「元々この婚約は、僕たちの親同士で取り決められたものだ。……解消するのも、親同士の勝手になってしまう」
「嫌です……。私、ナイザー様のことを、心から愛しておりますのに!」
「すまない……。僕は正直、父上が、君との婚約を解消すると言ったとき……。何も思わなかった」
ショックすぎて、目の前が真っ白になった。
あんなに、好きだと言ってくれたのに。
あんなに、頭を撫でて、可愛いと言ってくれたのに。
「……目の前で、糞尿を漏らしたからですか?」
「そ、そういうわけじゃ……」
「そういうわけでしょう!? 私は何も変わっていない! ただ学園を退学になっただけ! それなのに、どうして……」
「……君は、謙虚だったよ。すごく」
「……え?」
ナイザー様が、私を諭すように語り始める。
「自分に能力が無いと知りながら、入学試験の少し前まで、血の滲むような努力をして、少しづつ成長していた。だけど君は、これでは間に合わない、力が足りないと言い続け、倒れそうになりながらも、鍛錬を続けていたね」
そんなことも……。あったかな。
だいたい、入学試験の一週間くらい前までは、真剣に頑張っていた。
だけど……。
「実際、あの名門、バッテンデン学園に、一番ではなかったにしても、合格できるレベルまで、成長してみせたのだから、本当に尊敬していたよ……。だけど、事実は違った」
「事実……?」
「君を担当していた試験官が……。口を割ったんだ」
……え?
あっ……。
――終わった。
完全に、私の人生が終了した。
「オーロラが試験官を買収していたのではなく、君が試験官を買収していたんだね……。あの模擬戦を見た学園長が、君の実力を疑って、試験官を務めた教員全員に、調査をしたそうだ。そしたら……。最悪の事実が、明らかになった」
「違うんです。ナイザー様。私は――」
「何も違わない!」
「ひぅ……」
ナイザー様に、怒られたことなど、一度も無かった。
私はみっともなく、涙を流す。
「何があっても、君を信じた。模擬戦で君が負けた後も、色々動いて、なんとか君の居場所を作ろうとしたのに……。こんな形で裏切られるとはね」
呆れたように、ナイザー様が笑った。
「嫌です。ナイザー様。私たち、結婚……」
「……誰が、君のような女性と、結婚したいと思うんだ」
「……」
あぁ。
頭が痛い。
お腹も痛い。
そして何より、心が……。
「……受け入れてくれるかな。ディアナ」
「受け入れないと言ったら?」
「……さぁね」
「……さようなら」
私は手を振ることも無く。
頭を下げることも無く。
自分の部屋に戻った。
そして、オーロラに負けた日のように。
ベッドに入って、泣き叫んだ。
「こんなことになったのは、君を強くしてあげられなかった、僕の責任でもある」
「違います! 責任など……。ナイザー様? こんなことは、何かの間違いです。婚約を解消するだなんて……。おかしいです」
ナイザー様が、首を横に振った。
「元々この婚約は、僕たちの親同士で取り決められたものだ。……解消するのも、親同士の勝手になってしまう」
「嫌です……。私、ナイザー様のことを、心から愛しておりますのに!」
「すまない……。僕は正直、父上が、君との婚約を解消すると言ったとき……。何も思わなかった」
ショックすぎて、目の前が真っ白になった。
あんなに、好きだと言ってくれたのに。
あんなに、頭を撫でて、可愛いと言ってくれたのに。
「……目の前で、糞尿を漏らしたからですか?」
「そ、そういうわけじゃ……」
「そういうわけでしょう!? 私は何も変わっていない! ただ学園を退学になっただけ! それなのに、どうして……」
「……君は、謙虚だったよ。すごく」
「……え?」
ナイザー様が、私を諭すように語り始める。
「自分に能力が無いと知りながら、入学試験の少し前まで、血の滲むような努力をして、少しづつ成長していた。だけど君は、これでは間に合わない、力が足りないと言い続け、倒れそうになりながらも、鍛錬を続けていたね」
そんなことも……。あったかな。
だいたい、入学試験の一週間くらい前までは、真剣に頑張っていた。
だけど……。
「実際、あの名門、バッテンデン学園に、一番ではなかったにしても、合格できるレベルまで、成長してみせたのだから、本当に尊敬していたよ……。だけど、事実は違った」
「事実……?」
「君を担当していた試験官が……。口を割ったんだ」
……え?
あっ……。
――終わった。
完全に、私の人生が終了した。
「オーロラが試験官を買収していたのではなく、君が試験官を買収していたんだね……。あの模擬戦を見た学園長が、君の実力を疑って、試験官を務めた教員全員に、調査をしたそうだ。そしたら……。最悪の事実が、明らかになった」
「違うんです。ナイザー様。私は――」
「何も違わない!」
「ひぅ……」
ナイザー様に、怒られたことなど、一度も無かった。
私はみっともなく、涙を流す。
「何があっても、君を信じた。模擬戦で君が負けた後も、色々動いて、なんとか君の居場所を作ろうとしたのに……。こんな形で裏切られるとはね」
呆れたように、ナイザー様が笑った。
「嫌です。ナイザー様。私たち、結婚……」
「……誰が、君のような女性と、結婚したいと思うんだ」
「……」
あぁ。
頭が痛い。
お腹も痛い。
そして何より、心が……。
「……受け入れてくれるかな。ディアナ」
「受け入れないと言ったら?」
「……さぁね」
「……さようなら」
私は手を振ることも無く。
頭を下げることも無く。
自分の部屋に戻った。
そして、オーロラに負けた日のように。
ベッドに入って、泣き叫んだ。
211
お気に入りに追加
2,947
あなたにおすすめの小説

〖完結〗残念ですが、お義姉様はこの侯爵家を継ぐことは出来ません。
藍川みいな
恋愛
五年間婚約していたジョゼフ様に、学園の中庭に呼び出され婚約破棄を告げられた。その隣でなぜか私に怯える義姉のバーバラの姿があった。
バーバラは私にいじめられたと嘘をつき、婚約者を奪った。
五年も婚約していたのに、私ではなく、バーバラの嘘を信じた婚約者。学園の生徒達も彼女の嘘を信じ、親友だと思っていた人にまで裏切られた。
バーバラの目的は、ワイヤット侯爵家を継ぐことのようだ。
だが、彼女には絶対に継ぐことは出来ない。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
感想の返信が出来ず、申し訳ありません。

【完結】義姉の言いなりとなる貴方など要りません
かずきりり
恋愛
今日も約束を反故される。
……約束の時間を過ぎてから。
侍女の怒りに私の怒りが収まる日々を過ごしている。
貴族の結婚なんて、所詮は政略で。
家同士を繋げる、ただの契約結婚に過ぎない。
なのに……
何もかも義姉優先。
挙句、式や私の部屋も義姉の言いなりで、義姉の望むまま。
挙句の果て、侯爵家なのだから。
そっちは子爵家なのだからと見下される始末。
そんな相手に信用や信頼が生まれるわけもなく、ただ先行きに不安しかないのだけれど……。
更に、バージンロードを義姉に歩かせろだ!?
流石にそこはお断りしますけど!?
もう、付き合いきれない。
けれど、婚約白紙を今更出来ない……
なら、新たに契約を結びましょうか。
義理や人情がないのであれば、こちらは情けをかけません。
-----------------------
※こちらの作品はカクヨムでも掲載しております。

誤解なんですが。~とある婚約破棄の場で~
舘野寧依
恋愛
「王太子デニス・ハイランダーは、罪人メリッサ・モスカートとの婚約を破棄し、新たにキャロルと婚約する!」
わたくしはメリッサ、ここマーベリン王国の未来の王妃と目されている者です。
ところが、この国の貴族どころか、各国のお偉方が招待された立太式にて、馬鹿四人と見たこともない少女がとんでもないことをやらかしてくれました。
驚きすぎて声も出ないか? はい、本当にびっくりしました。あなた達が馬鹿すぎて。
※話自体は三人称で進みます。

義妹のせいで、婚約した相手に会う前にすっかり嫌われて婚約が白紙になったのになぜか私のことを探し回っていたようです
珠宮さくら
恋愛
サヴァスティンカ・メテリアは、ルーニア国の伯爵家に生まれた。母を亡くし、父は何を思ったのか再婚した。その再婚相手の連れ子は、義母と一緒で酷かった。いや、義母よりうんと酷かったかも知れない。
そんな義母と義妹によって、せっかく伯爵家に婿入りしてくれることになった子息に会う前にサヴァスティンカは嫌われることになり、婚約も白紙になってしまうのだが、義妹はその子息の兄と婚約することになったようで、義母と一緒になって大喜びしていた
。

私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。
それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。
婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。
その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。
これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。

【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。
凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」
リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。
その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。
当然、注目は私達に向く。
ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた--
「私はシファナと共にありたい。」
「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」
(私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。)
妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。
しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。
そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。
それとは逆に、妹は--
※全11話構成です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。

平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?
和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」
腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。
マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。
婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?

父の大事な家族は、再婚相手と異母妹のみで、私は元より家族ではなかったようです
珠宮さくら
恋愛
フィロマという国で、母の病を治そうとした1人の少女がいた。母のみならず、その病に苦しむ者は、年々増えていたが、治せる薬はなく、進行を遅らせる薬しかなかった。
その病を色んな本を読んで調べあげた彼女の名前は、ヴァリャ・チャンダ。だが、それで病に効く特効薬が出来上がることになったが、母を救うことは叶わなかった。
そんな彼女が、楽しみにしていたのは隣国のラジェスへの留学だったのだが、そのために必死に貯めていた資金も父に取り上げられ、義母と異母妹の散財のために金を稼げとまで言われてしまう。
そこにヴァリャにとって救世主のように現れた令嬢がいたことで、彼女の人生は一変していくのだが、彼女らしさが消えることはなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる