田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら

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婚約解消

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ナイザー様が来るのを、今か今かと待ちわびていた。

そして、ようやく、ルエールが部屋にやってきて、私を呼び出した。

「ナイザー様がお見えです」
「わかったわ。すぐに行く」
「……お嬢様」
「どうしたの?」
「……いえ。なんでもありません」
「そう?」

なぜか、ルエールの表情が、優れない様子だったけれど。
まぁ、気にしなくたっていいわね。
だって今から、ナイザー様に会えるのだから。

余計なことは、何も考えたくなかった。

「あぁ……。ディアナ」
「お久しぶりです。ナイザー様」
「あっ……」
「どうかしましたか?」

隣に腰かけようとしたら、正面のソファーを指差された。

……もしかして、久しぶりに顔を合わせるから、照れているのかもしれない。

「体調はどうだい?」
「えっ、えぇ……。もうだいぶ、よくなりました」
「そうか……。……学園の件は、残念だったね。僕も君のお父様に、何度か話をしたんだけど、どうしても決意が固くて……」
「……いいえ。当然です。魔法の才能が無いのは、最初からわかっていました。むしろ、ホッとしたくらいです」

お父様に告げられた時は、ショックで気を失うんじゃないかと思っていたのに。
しばらくすると、もう魔法を頑張らなくてもいいんだという、安堵感が、どんどん強くなっていった。

「ナイザー様の妻として、ふさわしい女性になるために、これからは……。女性らしいことを、どんどん学んでいこうと思っています」

私は、ナイザー様に微笑みかけた。
いつもなら、優しく微笑み返してくれる。

だけど……。
なぜか、ナイザー様の表情は、曇ったままだった。

「ナイザー様? どうかされましたか?」
「ルエールから、何か聞いたかい?」
「いえ……。何も」
「うん……」

なんだろう、この空気……。
なにか、今から、とんでもなく悪いことが起きるんじゃないかって思ってしまう。
そんなはずはない。

婚約者であるナイザー様が、お見舞いに来てくれたのだ。
悪いことなんて、起こるはずが――。

「ディアナ。君はすごく美しい。そして、ひた向きに努力する姿は、とても素晴らしかった」
「ありがとうございます……」
「だけど……。君は、してはいけないことをした」
「……え?」

嘘……?

一体、何を言い出すの?

やめて……。

「ディアナ。僕と君は」
「やめてください!!!!」

私は、みっともなく机を叩いて、大きな音を出してしまった。
いきなり体に力を入れたせいか、腹痛が襲い掛かってくる。

腹を抑え、蹲る私。
立ち上がり、そんな私を見降ろしながら……。

「ディアナ。君との婚約は、解消させてもらうよ」

静かな声で、そう言った。
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