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王位を狙う者
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「う、嘘だろ……?」
執事の知らせを受けて、サイモンはすぐに工場を訪れた。
しかしすでに――工場は崩壊していた。
信じられない光景は目の前に広がっており、全く持って受け入れることはできない。
「今日、工場は休みのはずだ。どうしてこんなことに……」
工場が動かなければ、当然物を作ることはできない。
王家が富を築いた、もっとも主要な収入源は、この工場で生産した製品を輸出することなのだ。
「このままでは、公爵家に……」
「ふふっ。我々がどうかしたのですか?」
「なっ!?」
がっくりと肩を落としているサイモンに――。
公爵家の令嬢、パルメス・エイザンが声をかけた。
「あらまぁ大変。工場が完全に潰れてしまって……」
「……お前たちがやったのか?」
「いいえ。全くそのようなことはございません」
公爵家の当主は女であり、国王の妹である。
王家が工場で利益を得ているのに対し、公爵家は主に漁業で莫大な利益を得ていた。
工場が潰れてしまっては――王位剥奪の危機である。
「このように工場をいっぺんに潰す方法など、公爵家が持ち合わせているはずがないでしょう? サイモン様は、あのクレアとの婚約を破棄されたそうじゃないですか。きっと天罰が下ったのですよ」
サイモンは、ハッとした。
まさか……これが『呪い』なのか?
いいや、そんなはずはない。
いくら魔女と言ったって、そこまでの力があるはずない。
サイモンはそう考えているが、実際は違う。
ウィンセント家は、代々受け継がれてきた魔女の家系――。
その呪いの強さは、並大抵のものではないのだ。
「……良いか! これを機に王位を奪おうなどと思わないことだな!」
「まさか。そんなことをして、何のメリットがあると言うのですか?」
「貴様……」
公爵家は、国王に対して反抗的な態度を取り続けている。
サイモンが疑うのも無理もない。
しかし、今はまだ攻め時ではないと、公爵家も心得ていた。
「……もっともっと。呪いでズタボロになって、蟻に踏みつぶされるくらい王家が弱った時に――。私のお母様が、王女となることでしょう」
「なにぃ……?」
「ふふっ。もしもの話ですよ。それが嫌ならば、すぐにでも魔女の館へ行って、呪いを解くように頭を下げてみるのはいかがですか?」
サイモンは「くそっ!」っと叫びながら、地面を蹴り上げた。
そのみっともない様子を見て、パルメスは大声で笑う。
「工場が潰れたとて、それだけで収入を得ているわけではないでしょう? すぐに別の行動をするべきだと私は思いますわ」
「……言われなくても!」
サイモンは走って、王宮に戻った。
執事の知らせを受けて、サイモンはすぐに工場を訪れた。
しかしすでに――工場は崩壊していた。
信じられない光景は目の前に広がっており、全く持って受け入れることはできない。
「今日、工場は休みのはずだ。どうしてこんなことに……」
工場が動かなければ、当然物を作ることはできない。
王家が富を築いた、もっとも主要な収入源は、この工場で生産した製品を輸出することなのだ。
「このままでは、公爵家に……」
「ふふっ。我々がどうかしたのですか?」
「なっ!?」
がっくりと肩を落としているサイモンに――。
公爵家の令嬢、パルメス・エイザンが声をかけた。
「あらまぁ大変。工場が完全に潰れてしまって……」
「……お前たちがやったのか?」
「いいえ。全くそのようなことはございません」
公爵家の当主は女であり、国王の妹である。
王家が工場で利益を得ているのに対し、公爵家は主に漁業で莫大な利益を得ていた。
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「このように工場をいっぺんに潰す方法など、公爵家が持ち合わせているはずがないでしょう? サイモン様は、あのクレアとの婚約を破棄されたそうじゃないですか。きっと天罰が下ったのですよ」
サイモンは、ハッとした。
まさか……これが『呪い』なのか?
いいや、そんなはずはない。
いくら魔女と言ったって、そこまでの力があるはずない。
サイモンはそう考えているが、実際は違う。
ウィンセント家は、代々受け継がれてきた魔女の家系――。
その呪いの強さは、並大抵のものではないのだ。
「……良いか! これを機に王位を奪おうなどと思わないことだな!」
「まさか。そんなことをして、何のメリットがあると言うのですか?」
「貴様……」
公爵家は、国王に対して反抗的な態度を取り続けている。
サイモンが疑うのも無理もない。
しかし、今はまだ攻め時ではないと、公爵家も心得ていた。
「……もっともっと。呪いでズタボロになって、蟻に踏みつぶされるくらい王家が弱った時に――。私のお母様が、王女となることでしょう」
「なにぃ……?」
「ふふっ。もしもの話ですよ。それが嫌ならば、すぐにでも魔女の館へ行って、呪いを解くように頭を下げてみるのはいかがですか?」
サイモンは「くそっ!」っと叫びながら、地面を蹴り上げた。
そのみっともない様子を見て、パルメスは大声で笑う。
「工場が潰れたとて、それだけで収入を得ているわけではないでしょう? すぐに別の行動をするべきだと私は思いますわ」
「……言われなくても!」
サイモンは走って、王宮に戻った。
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