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節約指導。
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村人の節約指導を終えた私は、自分の節約スキルに、かなりの自信を持つことができた。
まずは水の使い方。歯を磨く時、水を出しっぱなしにしている村人が多かったので即注意。
他には、まだ使える食器をすぐ捨ててしまうという習慣を発見。どうやら十年ほど前に、たまたま村を訪れた聖女が、古いモノには邪気が宿るなんていう大嘘を吹き込んだみたいで、なんでも新しくしたがる傾向にあったのだ。
邪気が気になるなら、私の白魔法で払ってあげる。そう言って、全ての家の邪気を払ってあげたら、きちんと古いものを使ってくれるようになった。
あとは、朝から風呂に入っている若者がいたけれど、それは必要ない。むしろ髪を痛めることになるかもしれないわよ?と教えてあげると、驚いたような顔をしていた。もちろん、水で体を流すくらいのことはしてもいいけれど、わざわざ湯船に大量の水を入れて、炎魔法まで大げさに使っていたから、さすがに注意してしまった。
そう、この村の人たちは、無駄遣いが多い!だけど、例えば朝から炎魔法を使ったり、お化粧のために白魔法を使ったり、そういう習慣を失くしていけば、もっと他の有意義なことに魔力を使えると思うの!
……っていう指導をしていたら、あれよあれよという間に人が集まって、今日一日は、指導だけで終わってしまった。
「クレアン、そっちはどうだったかしら」
「はい。適性のある村人が……。五人ほど」
「五人!?すごいじゃない!」
五人もいれば……。大国に並ぶ速度で、木を磨くことができるようになるかも!
「村人の節約は指導できたわ。あと、明日の作物の回収にも、力を貸してくれるらしいの。ふふ……。楽しみね」
「そうですかね……」
「クレアン。あなたまだ目が死んでるじゃない。嫌ならついてこなければよかったのに」
「……いえ。それだけ人を動かし、行動を起こせる人であるならば、もっと他のことに尽力していただきたかったなと。そう思っただけでございます」
「他のことって?」
「……」
「クレアン?」
なんだかクレアンの様子がおかしかった。日が落ちたら眠るのがルールだけど……。私は光の魔法で少しだけ部屋を照らした。
「……お嬢様?魔力がもったいないのではなかったのですか?」
「ダメよ。クレアンがなんだか、辛そうな顔していたもの」
「この暗さで、顔は見えなかったはずです」
「でも、こうして明るくしたら、やっぱり悲しい顔をしている。どうしたの?」
「……お嬢様は小さい時、私にこう言いました。自分が国を治める人になって、私をそのそばに置いてくださると」
「……」
……言ったかも。
結構小さい時の話だから、曖昧だけど。
「私はこのまま、村人として人生を終えるのでしょうか」
「……それは違うわ。クレアン」
「え?」
「この村で、まずは資産を貯めるの。そして、今度は村を街へ、街を国へ変えていく……。その時あなたが、私の隣にいてくれたら、どんなに嬉しいことかと思うわ」
「お嬢様……。それは真ですか?」
「当たり前じゃない。私を信じられないの?」
「……信じます」
私はクレアンを、優しく抱きしめた。
まずは水の使い方。歯を磨く時、水を出しっぱなしにしている村人が多かったので即注意。
他には、まだ使える食器をすぐ捨ててしまうという習慣を発見。どうやら十年ほど前に、たまたま村を訪れた聖女が、古いモノには邪気が宿るなんていう大嘘を吹き込んだみたいで、なんでも新しくしたがる傾向にあったのだ。
邪気が気になるなら、私の白魔法で払ってあげる。そう言って、全ての家の邪気を払ってあげたら、きちんと古いものを使ってくれるようになった。
あとは、朝から風呂に入っている若者がいたけれど、それは必要ない。むしろ髪を痛めることになるかもしれないわよ?と教えてあげると、驚いたような顔をしていた。もちろん、水で体を流すくらいのことはしてもいいけれど、わざわざ湯船に大量の水を入れて、炎魔法まで大げさに使っていたから、さすがに注意してしまった。
そう、この村の人たちは、無駄遣いが多い!だけど、例えば朝から炎魔法を使ったり、お化粧のために白魔法を使ったり、そういう習慣を失くしていけば、もっと他の有意義なことに魔力を使えると思うの!
……っていう指導をしていたら、あれよあれよという間に人が集まって、今日一日は、指導だけで終わってしまった。
「クレアン、そっちはどうだったかしら」
「はい。適性のある村人が……。五人ほど」
「五人!?すごいじゃない!」
五人もいれば……。大国に並ぶ速度で、木を磨くことができるようになるかも!
「村人の節約は指導できたわ。あと、明日の作物の回収にも、力を貸してくれるらしいの。ふふ……。楽しみね」
「そうですかね……」
「クレアン。あなたまだ目が死んでるじゃない。嫌ならついてこなければよかったのに」
「……いえ。それだけ人を動かし、行動を起こせる人であるならば、もっと他のことに尽力していただきたかったなと。そう思っただけでございます」
「他のことって?」
「……」
「クレアン?」
なんだかクレアンの様子がおかしかった。日が落ちたら眠るのがルールだけど……。私は光の魔法で少しだけ部屋を照らした。
「……お嬢様?魔力がもったいないのではなかったのですか?」
「ダメよ。クレアンがなんだか、辛そうな顔していたもの」
「この暗さで、顔は見えなかったはずです」
「でも、こうして明るくしたら、やっぱり悲しい顔をしている。どうしたの?」
「……お嬢様は小さい時、私にこう言いました。自分が国を治める人になって、私をそのそばに置いてくださると」
「……」
……言ったかも。
結構小さい時の話だから、曖昧だけど。
「私はこのまま、村人として人生を終えるのでしょうか」
「……それは違うわ。クレアン」
「え?」
「この村で、まずは資産を貯めるの。そして、今度は村を街へ、街を国へ変えていく……。その時あなたが、私の隣にいてくれたら、どんなに嬉しいことかと思うわ」
「お嬢様……。それは真ですか?」
「当たり前じゃない。私を信じられないの?」
「……信じます」
私はクレアンを、優しく抱きしめた。
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