節約令嬢は、ケチすぎて国外追放されました！ムカつくので、国を越える資産を貯めて、見返してやろうと思います！

村人になりました。

「ここが今日から、私たちの住む村よ！」

大荷物を抱えたクレアンが、死んだような目をしながら、村を見渡した。
次に言うセリフを当てよう。「何もない村ですね」

「何もない村ですね」
「ほら当たった！」
「はい？」
「いえ。こっちの話よ」

まずは村長さんに挨拶だ。

「初めまして。私はこの、アカモミ村の村長を務めております。バーナと申します」
「バーナね。私はアリア―ラよ！こっちはメイドのクレアン！」
「よろしくお願いします。アリア―ラ様。クレアン様」
「ちょっとバーナ？堅苦しいのは無しよ。私はもう令嬢でも何でもない。あなたたちと同じ、この村の村人なの！」
「そ、そう申されましてもじゃな……」

バーナは困ったように髭を撫でている。うん……。いいわよねこの仕草。王宮にいる太った貴族が、同じように髭を撫でても、こんな渋みは出ないもの。

「そうでないと、みんなも委縮してしまうわ？村長であるあなたが、私たちと仲良く喋っている姿を見せないと！」
「そ、そうかのう……」
「そうなのよ！」
「……わかった。できるだけ努力してみよう」

村長に挨拶を終えたので、次は村人一人一人の家を回って挨拶。子供たちにはクッキーをあげることで、ちょっとした信頼関係を築き上げていった。

一通り回った後は、貸してもらった家に入り、ちょっと休憩。

「しかしお嬢様。どうしてこの村を選ばれたのですか？」
「……ふふん」
「ふふん。ではなく。教えてください」
「この村はね……。ものすごいポテンシャルを持っているのよ」
「ですから、そのポテンシャルとは？」
「……明日を楽しみにしていなさい。今日はもう寝るわよ」
「も、もうですか？まだ日が沈んですぐだというのに」
「明かりのための火がもったいないじゃない」
「私が魔法で……」
「絶対ダメ！明日、たくさん使ってもらうんだから！」

今日私は、クレアンに一度も魔法を使わせなかった。あの大荷物だって、普段なら魔力で浮かせて移動させるんだけど、人力で運ばせたのだ。

それにはもちろん理由がある。でも……。明日に楽しみが残っていたほうが、きっとワクワクするから、私はそれ以上、何も言わなかった。