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異変を感じるレオノン
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レオノンは侍女を連れ、国の空地へやってきた。
ここなら思う存分魔法を試すことができる。
賢者となってから、明らかに魔力の高まりを感じていたレオノンは、今の自分なら、どんな魔法でも使える自信があった。
しかし、ここ数日は、さすがに魔力を消耗しすぎたのか、いつも通りの力が出せない時も目立つ。
(昨日はぐっすり寝たし……。きっとすごい魔法が使える!)
自分の才能に期待しつつ、レオノンは侍女に笑顔を向けた。
「ねぇあなた! どんな魔法が見たい?」
「えっ……。私が決めるのですか?」
「特別だよ? 今日の私、どんな魔法でも唱えられる自信があるから!」
「そうですね……。雷を操る魔法は、難易度が高く、賢者でしか使いこなせないと聞きます。見てみたいですね」
「わかった! いくよ~?」
レオノンは、意識を集中した。
……しかし、注意力散漫な彼女は、視界に入った虫が気になり、魔法を唱えることをやめてしまった。
「あの虫気持ち悪い! どうにかしてよ!」
「はい……」
侍女が、レオノンにバレないようにため息をついた後、虫を退けた。
(賢者ともあろう方が、あんなに小さな虫で、集中を乱してしまうのだろうか)
侍女は疑問を感じていた。しかし、教会の認定は間違いがない。ミゲルも、フレイアも……。認定の通り、特別職として活躍している。
「今度こそ……。いくよ!」
レオノンが、空に向かって、手を掲げる。
そこに、少しづつ、煙のようなものが集まりつつあった。
おそらくそれが大きくなり、雲のような役割を果たし、雷を降らすのだろう。
そんな侍女の予想を裏切り……。煙はなかなかまとまらず、大きくなることもなかった。
そして、諦めたように、レオノンは手を振りかざした。
小さな、火花のような電気が、一瞬空中に走っただけ。
「……ごめんね? 雷はまだ使えないみたい」
「いえ。私が悪かったです。まだ賢者になられて間もないレオノン様にする要求ではありませんでしたね」
侍女の必死のフォローだったが、レオノンはそれを、バカにされたように感じた。
「……見てて? 次は得意な、火炎魔法を見せてあげる!」
レオノンは、今度こそという気持ちを持ち、全力で火炎魔法を唱えた。
……しかし、僅かに、ろうそく程度の火が出ただけ。
「なんで……。こないだまで、出来たのに」
賢者と認定されたその日、教会の近くの平地で火炎魔法を試した時は、大火事になりかねないほどの威力だった火炎魔法。それがなぜ……。レオノンは困惑していた。
「きっと、魔力を使いすぎたのでしょう。まだレオノン様はお若いのですから、無理をなさらないでください」
不満だったが、さっき全力を出したせいで、もう立っているのもやっとだった。
結局レオノンは、大した魔法を見せられず、侍女に背負われ、王宮へと戻ることに。
こうして、ゼファーノ家の子供三人は、ベネットがいなくなってから、たったの一週間で、もうほとんどの力を失っていたのだが、全員、たまたまだろうとか、その内治るだろう。なんて楽観していた。
――モンスターの大群が、押し寄せて来ていることも知らずに。
ここなら思う存分魔法を試すことができる。
賢者となってから、明らかに魔力の高まりを感じていたレオノンは、今の自分なら、どんな魔法でも使える自信があった。
しかし、ここ数日は、さすがに魔力を消耗しすぎたのか、いつも通りの力が出せない時も目立つ。
(昨日はぐっすり寝たし……。きっとすごい魔法が使える!)
自分の才能に期待しつつ、レオノンは侍女に笑顔を向けた。
「ねぇあなた! どんな魔法が見たい?」
「えっ……。私が決めるのですか?」
「特別だよ? 今日の私、どんな魔法でも唱えられる自信があるから!」
「そうですね……。雷を操る魔法は、難易度が高く、賢者でしか使いこなせないと聞きます。見てみたいですね」
「わかった! いくよ~?」
レオノンは、意識を集中した。
……しかし、注意力散漫な彼女は、視界に入った虫が気になり、魔法を唱えることをやめてしまった。
「あの虫気持ち悪い! どうにかしてよ!」
「はい……」
侍女が、レオノンにバレないようにため息をついた後、虫を退けた。
(賢者ともあろう方が、あんなに小さな虫で、集中を乱してしまうのだろうか)
侍女は疑問を感じていた。しかし、教会の認定は間違いがない。ミゲルも、フレイアも……。認定の通り、特別職として活躍している。
「今度こそ……。いくよ!」
レオノンが、空に向かって、手を掲げる。
そこに、少しづつ、煙のようなものが集まりつつあった。
おそらくそれが大きくなり、雲のような役割を果たし、雷を降らすのだろう。
そんな侍女の予想を裏切り……。煙はなかなかまとまらず、大きくなることもなかった。
そして、諦めたように、レオノンは手を振りかざした。
小さな、火花のような電気が、一瞬空中に走っただけ。
「……ごめんね? 雷はまだ使えないみたい」
「いえ。私が悪かったです。まだ賢者になられて間もないレオノン様にする要求ではありませんでしたね」
侍女の必死のフォローだったが、レオノンはそれを、バカにされたように感じた。
「……見てて? 次は得意な、火炎魔法を見せてあげる!」
レオノンは、今度こそという気持ちを持ち、全力で火炎魔法を唱えた。
……しかし、僅かに、ろうそく程度の火が出ただけ。
「なんで……。こないだまで、出来たのに」
賢者と認定されたその日、教会の近くの平地で火炎魔法を試した時は、大火事になりかねないほどの威力だった火炎魔法。それがなぜ……。レオノンは困惑していた。
「きっと、魔力を使いすぎたのでしょう。まだレオノン様はお若いのですから、無理をなさらないでください」
不満だったが、さっき全力を出したせいで、もう立っているのもやっとだった。
結局レオノンは、大した魔法を見せられず、侍女に背負われ、王宮へと戻ることに。
こうして、ゼファーノ家の子供三人は、ベネットがいなくなってから、たったの一週間で、もうほとんどの力を失っていたのだが、全員、たまたまだろうとか、その内治るだろう。なんて楽観していた。
――モンスターの大群が、押し寄せて来ていることも知らずに。
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