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異変を感じるフレイア

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フレイアは医務室を出た後、明らかな違和感を覚えていた。

普段、祈りを捧げることで、癒しを与えられた人間は、もっと柔らかな笑顔を浮かべる。
ミゲルはどう見たって、苦しそうな表情のままだった。

よほど状態が悪いのだろうか。心配になったが、今日は週に一回の祈りの日。集中しなければいけない。

国の外に結界を張り、モンスターの侵入を防ぐ。
これにより、国は自国の産業により力を入れることができ、少しずつではあるが、発展の兆しが見えていた。

(誰も血を流さないのは、いいことだわ)

フレイアは聖女として、民の命を守ることができている自覚があった。

元々聖女になる前は、剣も魔法もまるでダメで、もし自分が姫でなかったら、とっくに奴隷として売りに出されていただろう。そう思うくらい、自覚できるほどの無能であった。

そんな無能であるはずの自分が、いきなり聖女として認定されたときには、本当に驚いたのだ。

ベネットという、兄のミゲルの婚約者。彼女の指導はお粗末で、到底理解の及ぶ内容ではなかったが、それから逃げた途端に聖女になることができたので、人生どう転ぶかわからない。それなら自分を信じて進もう。フレイアはいつもそう思っている。

やがてその心はねじ曲がり、自分の信じたものが全て正しいとすら思い込むようになってしまった。

聖女としての振る舞いを、ベネット意外にも、何度か注意されたことがある。それでもフレイアは自分の考えを曲げなかった。

「フレイア様。準備はよろしいでしょうか」
「えぇ……。いくわよ」

フレイアは祈りを捧げ始めた。結界を修復するイメージを浮かべる。

……しかし、なかなか映像が浮かんでこない。
そればかりか、祈れば祈るほど、結界が濁り、薄くなっていくような感覚があった。

フレイアは祈ることを諦め、侍女からタオルを受け取った。

「お疲れ様でございました」
「……えぇ」

汗を拭うフレイアは、真っすぐ立っていられなかった。

「……姫様。足もとがふらついておられます。大丈夫ですか?」
「問題無いわ。たまたまよ」

祈りを唱え始めたあたりから、疲労を感じていた。
いつもなら、何不自由なく終わるはずの――聖女であるならば、朝飯前の作業。

自分も兄と同じで、体調が悪いのだろうか。

「ちょっと部屋で休むことにするわ。レオノンの世話を頼むわよ」
「はい。かしこまりました」

レオノンはもう九歳だというのに、やたらと遊ぶことを要求してくる。

ミゲルがベネットをしばらく残していた理由が、分かったような気がしていた。

「お姉様! 遊びましょう!」

……言ってるそばからだ。フレイアはため息をついた。
そして、侍女に目で合図をする。

「レオノン様。フレイア様は少々忙しくてですね。よろしければ私が遊びの相手になりますよ」
「う~ん。本当はお姉さまに、魔法を披露したかったけど……。あなたでもいいわ! 行きましょう!」

侍女が、レオノンに引っ張られて行った。

我が妹ながら、出来れば関わりたくない。そんな風にフレイアは考えている。
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