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ライロットとヘイサル その後

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 アージリオン教の襲撃、国王ヘイサルの誕生、幸運の女神との結婚……。

 様々な出来事が、エージャリオンの王都、プロメリアでは、短い期間の間に起こっていった。

 そして……。

「久しぶり、クリム」
「ライロットさぁ~ん!」

 ライロットとヘイサルは、久しぶりにサンバスタを訪れていた。

「寂しかったですよ~。手紙だけじゃ、想いが伝わらないですもん!」
「ごめんね……。色々忙しくて」
「ふふっ……」

 クリムが、ニヤニヤしながら、ヘイサルに目を向けた。

「ど、どうかしたかい?」
「ヘイサル様……。いや、ヘイサル国王! 今日はお祭りですよ!」

 クリムがそう言うと……。賑やかな音楽が、いきなり流れ始めた。

「この日のために、音楽隊を呼んでおいたんです! ……なんてったって、ライロットさんの、誕生日お祝いパーティですから!」

 ライロットは、困ったように頭を掻いた。

 ライロットの誕生日は、とっくに過ぎていたが、どうしてもヘイサルが、ここでパーティをしたいと言い出したのだ。

「ライロットさんが、幸運の女神として目覚めてくれたおかげで、あれからもずーっと、レアな魚、果実、さらには鉱石まで! 途切れることなく採取できているんです!」
「あ、あはは……」
「ライロットさんが、一晩だけ泊まった部屋……。今、観光スポットとして、有名になってますよ!」

 嬉しそうに言うクリムだったが、二人は苦笑いだった。

「あっ、そうだ。久々に、今日はあの部屋に泊まって行ったらどうですか?」
「いや、さすがに……。ヘイサルもいるし」
「……一緒のお部屋がいいと?」
「……」
「……」
「初々しいですね……。さすが新婚さん! サンバスタは、新婚さんも結構来るんですよ? 二人の関係が、ずっと続きますように~って、お祈りするための場所もあるんです! 海が一望できて――」
「あ、あの、クリム。この音楽は、一体いつまで……」
「一日中です!」
「さすがにそれは……」

 クリムが合図すると、音楽はより一層大きくなった。
 
「ヘイサル様! この島に来たら、やっぱりロマンチックなデートスポットを回らないと!」
「いや、僕たちは、ゆっくりお茶でも……」
「な~に言ってるんですか! ほら、こっちこっち!」
「わっ、ちょっと!」

 クリムが、ライロットの腕を引っ張った。
 ライロットは、ヘイサルと手を繋いでいるので……。三人が、一緒に動くことになる。

 そんなことには構いもせず、まるで、音楽に乗せられるかのように、クリムは元気良く、二人を引っ張って行った。

 二人は顔を見合わせ……。笑った。
 
 島には……。笑顔が溢れている。
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