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醜い姫
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母のことも解決し、国に攻めるための兵力の強化に尽力する日々が始まった。
武器生産スキルを持つメンバーには、鉱山の中で作業をしてもらう。
サモナーは、いざ戦争を仕掛けると決まった時のため、最上級の魔族を呼び出せるように、練習をしてもらった。
……しかし、実際は、そこまでの兵力は必要ない。
なぜなら、私が王国の兵器に祈りを込めている以上、それをやめてしまえば、一気に壊れ始めるからだ。
アーデンはまだ、母の死体があると思っている。
見張りの兵も、わざわざ棺桶を開けてまで、死体を確認するはずも無いから、しばらくはバレないだろう。
ロベリアが襲い掛かってきた。という噂も聞かないので、眠ったままの彼らを気絶させたことも、気づかれていないらしい。
……さらに言えば、私の加護があるからと、最近兵たちは、鍛錬をサボっている。
「あ~あ。早くバレット様に会いたいわぁ~」
王宮から帰ろうとしたところ、ミシェーラに出くわしてしまった。
「あら。出来立て聖女様。何のご用事?」
嫌味ったらしい言い方だな……。
だけど、怒ってはいけない。私は笑みを浮かべ、余裕たっぷりに答えた。
「兵器に祈りを込めて参りました」
「へぇ。感心ね。せいぜい頑張ってちょうだい」
「はい。失礼します」
「あぁ。ちょっと待ちなさいよ」
思いっきり腕を掴まれ、止められた。痛い。
「……なんですか?」
思わず睨んでしまいそうになったが、慌てて穏やかな表情を作り上げる。
「実は今日、バレット様がいらっしゃるのよ。あなたの祈りって、人間にも効果があるんでしょう? 私をもっと美しくしなさい。肌を綺麗に。髪に艶を」
……よほど自分に自信がないのだろうか。
言ってはいけないが、正直ミシェーラは、美人とは言い難い容姿をしている。
これで性格も酷いのだから、バレット様は気の毒だ。
私が魔女であるならば、きっとここで、ミシェーラの顔をぐちゃぐちゃにしていたかもしれない。
だけど、聖女だから……。綺麗にすることしかできないのだ。
私はミシェーラに祈りを込めた。
「うわぁ……。すごいわ! 髪から良い匂いが……」
「もういいですか?」
「えぇ。用済みよ。さっさと失せなさい」
「……」
……バカな女だ。
兵器と同じで、元々ボロボロのものに祈りを込めれば、込め続けなければいけない。
私が祈りを辞めれば、彼女の容姿は、あっというまに逆戻りだ。
しばらく馴れさせてから、祈ることをやめてやろう。
……そのくらいの、小さな反抗であれば、先祖様も見逃してくれるだろうか。
武器生産スキルを持つメンバーには、鉱山の中で作業をしてもらう。
サモナーは、いざ戦争を仕掛けると決まった時のため、最上級の魔族を呼び出せるように、練習をしてもらった。
……しかし、実際は、そこまでの兵力は必要ない。
なぜなら、私が王国の兵器に祈りを込めている以上、それをやめてしまえば、一気に壊れ始めるからだ。
アーデンはまだ、母の死体があると思っている。
見張りの兵も、わざわざ棺桶を開けてまで、死体を確認するはずも無いから、しばらくはバレないだろう。
ロベリアが襲い掛かってきた。という噂も聞かないので、眠ったままの彼らを気絶させたことも、気づかれていないらしい。
……さらに言えば、私の加護があるからと、最近兵たちは、鍛錬をサボっている。
「あ~あ。早くバレット様に会いたいわぁ~」
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「あら。出来立て聖女様。何のご用事?」
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だけど、怒ってはいけない。私は笑みを浮かべ、余裕たっぷりに答えた。
「兵器に祈りを込めて参りました」
「へぇ。感心ね。せいぜい頑張ってちょうだい」
「はい。失礼します」
「あぁ。ちょっと待ちなさいよ」
思いっきり腕を掴まれ、止められた。痛い。
「……なんですか?」
思わず睨んでしまいそうになったが、慌てて穏やかな表情を作り上げる。
「実は今日、バレット様がいらっしゃるのよ。あなたの祈りって、人間にも効果があるんでしょう? 私をもっと美しくしなさい。肌を綺麗に。髪に艶を」
……よほど自分に自信がないのだろうか。
言ってはいけないが、正直ミシェーラは、美人とは言い難い容姿をしている。
これで性格も酷いのだから、バレット様は気の毒だ。
私が魔女であるならば、きっとここで、ミシェーラの顔をぐちゃぐちゃにしていたかもしれない。
だけど、聖女だから……。綺麗にすることしかできないのだ。
私はミシェーラに祈りを込めた。
「うわぁ……。すごいわ! 髪から良い匂いが……」
「もういいですか?」
「えぇ。用済みよ。さっさと失せなさい」
「……」
……バカな女だ。
兵器と同じで、元々ボロボロのものに祈りを込めれば、込め続けなければいけない。
私が祈りを辞めれば、彼女の容姿は、あっというまに逆戻りだ。
しばらく馴れさせてから、祈ることをやめてやろう。
……そのくらいの、小さな反抗であれば、先祖様も見逃してくれるだろうか。
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