上 下
11 / 19

醜い姫

しおりを挟む
母のことも解決し、国に攻めるための兵力の強化に尽力する日々が始まった。

武器生産スキルを持つメンバーには、鉱山の中で作業をしてもらう。
サモナーは、いざ戦争を仕掛けると決まった時のため、最上級の魔族を呼び出せるように、練習をしてもらった。

……しかし、実際は、そこまでの兵力は必要ない。

なぜなら、私が王国の兵器に祈りを込めている以上、それをやめてしまえば、一気に壊れ始めるからだ。

アーデンはまだ、母の死体があると思っている。
見張りの兵も、わざわざ棺桶を開けてまで、死体を確認するはずも無いから、しばらくはバレないだろう。
ロベリアが襲い掛かってきた。という噂も聞かないので、眠ったままの彼らを気絶させたことも、気づかれていないらしい。

……さらに言えば、私の加護があるからと、最近兵たちは、鍛錬をサボっている。

「あ~あ。早くバレット様に会いたいわぁ~」

王宮から帰ろうとしたところ、ミシェーラに出くわしてしまった。

「あら。出来立て聖女様。何のご用事?」

嫌味ったらしい言い方だな……。
だけど、怒ってはいけない。私は笑みを浮かべ、余裕たっぷりに答えた。

「兵器に祈りを込めて参りました」
「へぇ。感心ね。せいぜい頑張ってちょうだい」
「はい。失礼します」
「あぁ。ちょっと待ちなさいよ」

思いっきり腕を掴まれ、止められた。痛い。

「……なんですか?」

思わず睨んでしまいそうになったが、慌てて穏やかな表情を作り上げる。

「実は今日、バレット様がいらっしゃるのよ。あなたの祈りって、人間にも効果があるんでしょう? 私をもっと美しくしなさい。肌を綺麗に。髪に艶を」

……よほど自分に自信がないのだろうか。
言ってはいけないが、正直ミシェーラは、美人とは言い難い容姿をしている。
これで性格も酷いのだから、バレット様は気の毒だ。

私が魔女であるならば、きっとここで、ミシェーラの顔をぐちゃぐちゃにしていたかもしれない。
だけど、聖女だから……。綺麗にすることしかできないのだ。

私はミシェーラに祈りを込めた。

「うわぁ……。すごいわ! 髪から良い匂いが……」
「もういいですか?」
「えぇ。用済みよ。さっさと失せなさい」
「……」

……バカな女だ。

兵器と同じで、元々ボロボロのものに祈りを込めれば、込め続けなければいけない。
私が祈りを辞めれば、彼女の容姿は、あっというまに逆戻りだ。

しばらく馴れさせてから、祈ることをやめてやろう。
……そのくらいの、小さな反抗であれば、先祖様も見逃してくれるだろうか。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので初恋の人と添い遂げます!!~有難う! もう国を守らないけど頑張ってね!!~

琴葉悠
恋愛
  これは「国守り」と呼ばれる、特殊な存在がいる世界。  国守りは聖人数百人に匹敵する加護を持ち、結界で国を守り。  その近くに来た侵略しようとする億の敵をたった一人で打ち倒すことができる神からの愛を受けた存在。  これはそんな国守りの女性のブリュンヒルデが、王子から婚約破棄され、最愛の初恋の相手と幸せになる話──  国が一つ滅びるお話。

婚約破棄?お黙りなさいと言ってるの。-悪役令嬢イレーナ・マルティネスのおとぎ話について-

田中冥土
恋愛
イレーナ・マルティネスは代々女性当主の家系に生まれ、婿を迎えることとなっていた。 そのような家柄の関係上、イレーナは女傑・怪女・烈婦などと好き放題言われている。 しかしそんな彼女にも、近頃婚約者が平民出身の女生徒と仲良くしているように見えるという、いじらしくそして重大な悩みを抱えていた。 小説家になろうにも掲載中。

根暗令嬢の華麗なる転身

しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」 ミューズは茶会が嫌いだった。 茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。 公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。 何不自由なく、暮らしていた。 家族からも愛されて育った。 それを壊したのは悪意ある言葉。 「あんな不細工な令嬢見たことない」 それなのに今回の茶会だけは断れなかった。 父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。 婚約者選びのものとして。 国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず… 応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*) ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。 同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。 立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。 一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。 描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。 ゆるりとお楽しみください。 こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。

聖女の私は婚約破棄されました。婚約指輪を返せと怒鳴られたので呪いを込めてお返しします。

十条沙良
恋愛
一方的に婚約破棄されたのに、婚約指輪を返せですって?はい呪いを込めてお返ししますわ。

婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。

松ノ木るな
恋愛
 純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。  伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。  あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。  どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。  たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。

【完結】処刑後転生した悪女は、狼男と山奥でスローライフを満喫するようです。〜皇帝陛下、今更愛に気づいてももう遅い〜

二位関りをん
恋愛
ナターシャは皇太子の妃だったが、数々の悪逆な行為が皇帝と皇太子にバレて火あぶりの刑となった。 処刑後、農民の娘に転生した彼女は山の中をさまよっていると、狼男のリークと出会う。 口数は少ないが親切なリークとのほのぼのスローライフを満喫するナターシャだったが、ナターシャへかつての皇太子で今は皇帝に即位したキムの魔の手が迫り来る… ※表紙はaiartで生成したものを使用しています。

モブ公爵令嬢は婚約破棄を抗えない

家紋武範
恋愛
公爵令嬢であるモブ・ギャラリーは、王太子クロード・フォーンより婚約破棄をされてしまった。 夜会の注目は一斉にモブ嬢へと向かうがモブ嬢には心当たりがない。 王太子の後ろに控えるのは美貌麗しいピンクブロンドの男爵令嬢。 モブ嬢は自分が陥れられたことに気づいた──。

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。

星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。 グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。 それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。 しかし。ある日。 シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。 聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。 ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。 ──……私は、ただの邪魔者だったの? 衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。

処理中です...