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国へ……
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聖女の力を授かってから、数日が経過した。
怪我をした人の手当てはもちろん、田畑に祈りを捧げることで、より豊かに作物を実らせたり、井戸の水を綺麗にしたり……。とにかく充実した日々を送っている。
そんな風にして、日々を過ごしていたある日のこと。
「おおい!こっちにたくさん人が向かって来るぞ!」
村の見張り番の声で、私たちは目覚めた。こんな真夜中に、人……?。
すぐに村の明かりをつけ、待機していると……。
「……酷い」
大けがをした兵たちが、たくさんやって来た。
大勢の中で一番大きな剣を持った兵が、フラフラになりながら近寄ってきたが、その場で倒れてしまった。
「た……す……」
私はすぐに祈りを捧げた。どうかこの人の命が、助かりますように……。
みるみるうちに、傷が癒えていく。私は祈りの範囲を広げた。この多くの兵たちの命も、救われますように……。
ほんの十秒程度だった。兵たちが次々と立ち上がり、不思議そうな顔をしている。
「ありがとう。もうダメかと思ったが……」
「あなたたちは?」
「アレンベートの騎士だ。私は団長のイエンと言う。この平地を移動していたのだが、どうやらオーガの攻撃を受けてしまったらしくて……。皆疲れ果て、馬車の中で寝静まっていたから、ほとんど食い殺されてしまったんだ……」
兵たちが俯いた。そうか、ここにいる人たち以外は、みんな……。
「よろしければ、兵の皆さん。我が村で休んでください」
「ありがたい……。一晩だけ、甘えさせていただこう」
ボーウェルさんが、兵たちを集会場へ案内した。
一人残ったイエンさんが、私の顔を見つめ、尋ねてきた。
「……あなたは一体、何者だ?」
「あっ……。私ですか?」
「あぁ。あの回復魔法は、並大抵のものではない」
「魔法じゃなくて、その……」
「彼女は聖女だ」
「っ!?」
急に後ろから現れたランバーに、イエンさんが驚いてしまった。
「……人の言葉を話せるのか?」
「私は聖獣だからな」
「聖獣に、聖女……。まるで絵本の世界のような……」
……聖女になった時の私と、同じような反応してるなぁ。
「聖女が、なぜこのような村に?」
「実は……」
私は経緯を説明した。
「酷い話だな……。そのような国があるとは、信じられん。すぐにでも抗議を申し出たい」
「抗議、ですか?」
「我が国ではありえん話だ。孤児院から子供を追い出すなど、死刑に値する」
「死刑……」
「明日、一度国に戻ったら、またここへ顔を出す。その時、一緒に抗議に行こう」
……すごいことになってしまった。
国に、戻ることができる?
孤児院のみんなに、また……。
「今日はゆっくりさせてもらうよ。私たちの命を救ってくれて、本当にありがとう」
イエンさんの背中を、茫然と見送った。
ランバーの尻尾が、私の目の前で、フワフワと揺れている。
「起きているか?」
「……うん」
「良かったではないか。これで国に戻ることができる」
「でも……。カーペンハイト家がいる以上、何かしら汚い手を使って、また追い出されるんじゃない?」
「今度はそうはさせん。私が……。奴らをかみ殺してでも、阻止する」
「そんな!殺すのはダメ!」
「……冗談だ。だが、そのくらいのつもりで挑むということだよ」
ランバーが、口を大きく開け、牙を剥きだしにした。
今までの人生で、何か大きな力と戦ったことは、一度も無い。
父や母のように、戦地へ出たことも……。
……ランバーがいれば、やれるだろうか。
「大丈夫。私がついているよ」
私の不安を消し去るかのように、ランバーが、力強く宣言してくれた。
「……うん」
ランバーの瞳を見つめてから、私は頷いた。
怪我をした人の手当てはもちろん、田畑に祈りを捧げることで、より豊かに作物を実らせたり、井戸の水を綺麗にしたり……。とにかく充実した日々を送っている。
そんな風にして、日々を過ごしていたある日のこと。
「おおい!こっちにたくさん人が向かって来るぞ!」
村の見張り番の声で、私たちは目覚めた。こんな真夜中に、人……?。
すぐに村の明かりをつけ、待機していると……。
「……酷い」
大けがをした兵たちが、たくさんやって来た。
大勢の中で一番大きな剣を持った兵が、フラフラになりながら近寄ってきたが、その場で倒れてしまった。
「た……す……」
私はすぐに祈りを捧げた。どうかこの人の命が、助かりますように……。
みるみるうちに、傷が癒えていく。私は祈りの範囲を広げた。この多くの兵たちの命も、救われますように……。
ほんの十秒程度だった。兵たちが次々と立ち上がり、不思議そうな顔をしている。
「ありがとう。もうダメかと思ったが……」
「あなたたちは?」
「アレンベートの騎士だ。私は団長のイエンと言う。この平地を移動していたのだが、どうやらオーガの攻撃を受けてしまったらしくて……。皆疲れ果て、馬車の中で寝静まっていたから、ほとんど食い殺されてしまったんだ……」
兵たちが俯いた。そうか、ここにいる人たち以外は、みんな……。
「よろしければ、兵の皆さん。我が村で休んでください」
「ありがたい……。一晩だけ、甘えさせていただこう」
ボーウェルさんが、兵たちを集会場へ案内した。
一人残ったイエンさんが、私の顔を見つめ、尋ねてきた。
「……あなたは一体、何者だ?」
「あっ……。私ですか?」
「あぁ。あの回復魔法は、並大抵のものではない」
「魔法じゃなくて、その……」
「彼女は聖女だ」
「っ!?」
急に後ろから現れたランバーに、イエンさんが驚いてしまった。
「……人の言葉を話せるのか?」
「私は聖獣だからな」
「聖獣に、聖女……。まるで絵本の世界のような……」
……聖女になった時の私と、同じような反応してるなぁ。
「聖女が、なぜこのような村に?」
「実は……」
私は経緯を説明した。
「酷い話だな……。そのような国があるとは、信じられん。すぐにでも抗議を申し出たい」
「抗議、ですか?」
「我が国ではありえん話だ。孤児院から子供を追い出すなど、死刑に値する」
「死刑……」
「明日、一度国に戻ったら、またここへ顔を出す。その時、一緒に抗議に行こう」
……すごいことになってしまった。
国に、戻ることができる?
孤児院のみんなに、また……。
「今日はゆっくりさせてもらうよ。私たちの命を救ってくれて、本当にありがとう」
イエンさんの背中を、茫然と見送った。
ランバーの尻尾が、私の目の前で、フワフワと揺れている。
「起きているか?」
「……うん」
「良かったではないか。これで国に戻ることができる」
「でも……。カーペンハイト家がいる以上、何かしら汚い手を使って、また追い出されるんじゃない?」
「今度はそうはさせん。私が……。奴らをかみ殺してでも、阻止する」
「そんな!殺すのはダメ!」
「……冗談だ。だが、そのくらいのつもりで挑むということだよ」
ランバーが、口を大きく開け、牙を剥きだしにした。
今までの人生で、何か大きな力と戦ったことは、一度も無い。
父や母のように、戦地へ出たことも……。
……ランバーがいれば、やれるだろうか。
「大丈夫。私がついているよ」
私の不安を消し去るかのように、ランバーが、力強く宣言してくれた。
「……うん」
ランバーの瞳を見つめてから、私は頷いた。
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