悪役令嬢に難癖をつけられ、飼い犬と共に国外追放されましたが、私は聖女、飼い犬は聖獣になりました。

冬吹せいら

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聖女の力

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「そ、そのようなことが……」

ボーウェルさんと、サマさんに、さっきあったことを説明した。二人とも、信じられないといった様子だったが、聖獣となったランバーがいる以上、受け入れる他なかった。

「とすると、短い付き合いではあったが……。シーナは、大国に?」
「いえ。しばらくは、ここでお世話になりたいと思っています。自分に何ができるのか、何をするべきなのか……。知っておきたいので」
「そうか……。君がそう言ってくれるのであれば、俺たちはいつまでも受け入れ続けるよ」
「いやぁ~もふもふだぞこいつ!今日は一緒に寝ような~!」
「……」

ランバーが、うんざりした表情をしている。思わず笑ってしまった。

「しかし、聖女となると、何をするんだろうな……。絵本で読んだ話では、龍の怒りを鎮めていたが」
「龍なんていないもんな~」
「そうですね……」
「この村は……。幸い、貧しい人もいないし……。力を試す場所が無いのが、申し訳」
「ボーウェル!!!!!」

いきなりドアが開き、村人が入って来た。険しい表情で、息を切らしている。

「どうした。何があった」
「アンダース家の娘のロールが、階段から落ちて、意識が無いんだ!」
「な、なんだって!?」

ボーウェルさんと一緒に、私はアンダース家に向かった。

「酷い……。頭をぶつけたのか」
「そうなんです……。私が目を離したばっかりに」

母親が涙を流しながら、ロールを抱きかかえている。頭から噴き出した血の量が凄まじい。これはもう……。

「シーナ……」

ボーウェルさんが、私に視線を送った。

……そうか!聖女の力があれば!

「……失礼します」

私は、ロールの頭に、手をかざした。

そして、祈りを捧げる。

どうかこの子の傷が、癒えますように……。

『素晴らしい』

えっ……?

神の声が、聞こえた気がした。

「……あれぇ?」

そして、ロールがゆっくりと、体を起こした。

「みんな、どうしたの?」
「ロール……。あぁ!ロール!」
「ええぇ?」

ロールは、何が起きているのか、わからないと言った様子だった。母親に抱きしめられ、キョトンとしている。

「……すごいな。本物だ」

ボーウェルが、優しく微笑んだ。

……私、本当に聖女に?

「みんなを集会場に集めてくれ!パーティだ!」
「はい!」

私はどうしたらいいのかわからなくて、ただロールに視線を送っていた。

ロールがそれに気が付いて、笑ってくれた。

この力があれば、たくさんの人を……。子供たちを、救えるかもしれない。

聖女になることを選んだのは、間違いじゃなかったみたいだ。
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