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十年ぶりの再会
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リバーグの言った通り、すぐに民が家までやってきた。
なんとか、メイドと執事たちが、足止めをしている間に、私とリスラの二人で、裏口から逃げ出すことに成功したが……。
かと言って、どこにも行くことなんてできない。
急いで出てきたので、手持ちも乏しく……。
このまま歩いて、他の街まで逃げるのは、現実的ではないだろう。
「リスラ……。どうすればいい? 私、どうしたら、生き延びることができるのかしら」
「……罪を償う時が、来たのではないでしょうか」
「あなたまで……。そんなことを言うの!?」
私は、リスラを跳ね飛ばした。
そして、一人で走り出す。
何も考えたくない。とにかく逃げ出したい。
そんな思いで、ただひたすら走った。
「あっ!」
ほとんど走ったことなんて無かったせいで、足がもつれて、転んでしまった。
情けない……。どうして私が、こんな目に?
「大丈夫?」
誰かが、手を差し伸べてきた。
「ひっ……」
その手は、人間的な白さが無く、むしろ、青に近い色をしていた。
ゆっくりと、顔を挙げる……。
「……ニーザ」
髪はボサボサで、背中が曲がっている。
大きな杖を持ち、私を見降ろしていた。
本当に……。魔女みたいだ。
「久しぶりね。ユレース」
「……お願い。許して」
「許す? 何を?」
「全部……。街のことも、私のことも……」
「許すも何もないでしょう? だって、あなたはマースを殺してないって言うんだもの」
私が殺した……。
いたずらのつもりで入れた毒薬の、量を間違えたのだ。
あの時、私はまだ、十四歳だった。
何も知らない、ただのお子様だったのだ。
「お願い……。家族がいるの。私には」
「王都に、両親と息子がいるのよね。夫の方は、さっき殺してしまったけれど」
「……うぅう」
「泣くの? やめてよ」
ニーザがそう言った瞬間、涙が引っ込んだ。
「驚いた? これが魔法よ。あなたが……。あなたが、森に送り込んでくれたおかげで、じっくり時間をかけて、使いこなせるようになったの。感謝してるわ。ありがとう」
「怖い……。もうやめて……」
「ふふふ。何をやめるの?」
「……全部、元に戻してよ」
「面白い。ねぇユレース。あなた、どうしてまだ、自分が生きてるのか、わかる?」
「わからない……」
「じゃあ、教えてあげるわ」
「えっ――」
いきなり、ニーザが、私の頭を掴んだ。
「い、痛いっ! 離してっ!」
「しばらくさようならね」
「いやあああ!!」
ぎりぎりと、頭が削られるような痛みを感じる。
そして……。目の前が真っ白になった。
なんとか、メイドと執事たちが、足止めをしている間に、私とリスラの二人で、裏口から逃げ出すことに成功したが……。
かと言って、どこにも行くことなんてできない。
急いで出てきたので、手持ちも乏しく……。
このまま歩いて、他の街まで逃げるのは、現実的ではないだろう。
「リスラ……。どうすればいい? 私、どうしたら、生き延びることができるのかしら」
「……罪を償う時が、来たのではないでしょうか」
「あなたまで……。そんなことを言うの!?」
私は、リスラを跳ね飛ばした。
そして、一人で走り出す。
何も考えたくない。とにかく逃げ出したい。
そんな思いで、ただひたすら走った。
「あっ!」
ほとんど走ったことなんて無かったせいで、足がもつれて、転んでしまった。
情けない……。どうして私が、こんな目に?
「大丈夫?」
誰かが、手を差し伸べてきた。
「ひっ……」
その手は、人間的な白さが無く、むしろ、青に近い色をしていた。
ゆっくりと、顔を挙げる……。
「……ニーザ」
髪はボサボサで、背中が曲がっている。
大きな杖を持ち、私を見降ろしていた。
本当に……。魔女みたいだ。
「久しぶりね。ユレース」
「……お願い。許して」
「許す? 何を?」
「全部……。街のことも、私のことも……」
「許すも何もないでしょう? だって、あなたはマースを殺してないって言うんだもの」
私が殺した……。
いたずらのつもりで入れた毒薬の、量を間違えたのだ。
あの時、私はまだ、十四歳だった。
何も知らない、ただのお子様だったのだ。
「お願い……。家族がいるの。私には」
「王都に、両親と息子がいるのよね。夫の方は、さっき殺してしまったけれど」
「……うぅう」
「泣くの? やめてよ」
ニーザがそう言った瞬間、涙が引っ込んだ。
「驚いた? これが魔法よ。あなたが……。あなたが、森に送り込んでくれたおかげで、じっくり時間をかけて、使いこなせるようになったの。感謝してるわ。ありがとう」
「怖い……。もうやめて……」
「ふふふ。何をやめるの?」
「……全部、元に戻してよ」
「面白い。ねぇユレース。あなた、どうしてまだ、自分が生きてるのか、わかる?」
「わからない……」
「じゃあ、教えてあげるわ」
「えっ――」
いきなり、ニーザが、私の頭を掴んだ。
「い、痛いっ! 離してっ!」
「しばらくさようならね」
「いやあああ!!」
ぎりぎりと、頭が削られるような痛みを感じる。
そして……。目の前が真っ白になった。
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