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アイバーン家崩壊
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「ち、父上。何をされておるのですか?」
とっくに使用人が逃げ去り、静かになった王宮。
カイサルは自分の部屋で、手紙を書いていた。
「南がダメなら東、さらには西だ。まだまだ協力を期待できる国は山ほどある!」
「さすが父上……!」
「ギルダス! お前も手伝え! 少し離れた小国にも協力を要請するぞ!」
「はい!」
この危機的状況で、二人はわざわざ王宮に戻り、必死で手紙を書いているのだ。
先代がこんな光景を目にしたら、どんな言葉をかけるだろうか。
しかしここには、馬鹿二人しかいない。
ドアが開かれた。
「カイサル・アイバーン。ここで何をしている」
現れたのは、騎士団長。
さきほど大魔導士に敬意を示した男だ。
カイサルは筆を置き、その場にあった重たい置物を放り投げた。
「この裏切りものがぁ! もう謝っても遅い! いずれお前とその親族をまとめて焼き払ってやる!」
「それは、誰が行うのですか?」
「東の国だ! 東の国には大きな武器の生産工場がある! 奴隷を雇って、そいつらに――」
騎士団長が、水晶を取り出した。
そこには……。
東の国の王と、リンダが交渉をしている映像が映し出されている。
「嘘だ……」
カイサルは、目の前が真っ暗になるような感覚に襲われる。
そんなカイサルの代わりに、今度はギルダスが吠えた。
「やい! それでも西の国があるんだぞ! 西は食料を輸入してくれる! お前たち国民には一切配らないように指示するんだ! 全員飢え死にしろ!」
その発想自体陳腐で間抜けだったが。
騎士団長は笑うこともなく、水晶を撫でる。
すると今度は……。
西の国の王とリンダが――。
「うわあああ!!!」
ギルダスは頭を抱えて、床を転がり始めた。
北に国は無い。
つまり、海と他の国で、完全に囲まれた状態になっているのだ。
さすがにその危機的状況を理解できない二人ではない。
「あの時、伯爵令嬢様に素直に謝ってくださっていたら、家くらいは用意していただけたかもしれませんね」
「ううぅう……。謝る……。謝るからぁ!」
「馬鹿なことを言わないでください。すでにベネロップ侯爵家の当主様へと、王位は継がれました」
「……は?」
とっくに使用人が逃げ去り、静かになった王宮。
カイサルは自分の部屋で、手紙を書いていた。
「南がダメなら東、さらには西だ。まだまだ協力を期待できる国は山ほどある!」
「さすが父上……!」
「ギルダス! お前も手伝え! 少し離れた小国にも協力を要請するぞ!」
「はい!」
この危機的状況で、二人はわざわざ王宮に戻り、必死で手紙を書いているのだ。
先代がこんな光景を目にしたら、どんな言葉をかけるだろうか。
しかしここには、馬鹿二人しかいない。
ドアが開かれた。
「カイサル・アイバーン。ここで何をしている」
現れたのは、騎士団長。
さきほど大魔導士に敬意を示した男だ。
カイサルは筆を置き、その場にあった重たい置物を放り投げた。
「この裏切りものがぁ! もう謝っても遅い! いずれお前とその親族をまとめて焼き払ってやる!」
「それは、誰が行うのですか?」
「東の国だ! 東の国には大きな武器の生産工場がある! 奴隷を雇って、そいつらに――」
騎士団長が、水晶を取り出した。
そこには……。
東の国の王と、リンダが交渉をしている映像が映し出されている。
「嘘だ……」
カイサルは、目の前が真っ暗になるような感覚に襲われる。
そんなカイサルの代わりに、今度はギルダスが吠えた。
「やい! それでも西の国があるんだぞ! 西は食料を輸入してくれる! お前たち国民には一切配らないように指示するんだ! 全員飢え死にしろ!」
その発想自体陳腐で間抜けだったが。
騎士団長は笑うこともなく、水晶を撫でる。
すると今度は……。
西の国の王とリンダが――。
「うわあああ!!!」
ギルダスは頭を抱えて、床を転がり始めた。
北に国は無い。
つまり、海と他の国で、完全に囲まれた状態になっているのだ。
さすがにその危機的状況を理解できない二人ではない。
「あの時、伯爵令嬢様に素直に謝ってくださっていたら、家くらいは用意していただけたかもしれませんね」
「ううぅう……。謝る……。謝るからぁ!」
「馬鹿なことを言わないでください。すでにベネロップ侯爵家の当主様へと、王位は継がれました」
「……は?」
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