1 / 13
動き出す公爵家
しおりを挟む
「なるほどね。それは酷い話だわ」
「うぅう……」
公爵家令嬢、リンダ・ベネロップに抱きしめられ、涙を流しているのは、伯爵家令嬢シェリー・ディアスである。
昨日、シェリーは王子に婚約破棄をされたのだ。
その原因は……、浮気だった。
「全てあなたのせいにするつもりなのね。絶対に許せない」
シェリーの話では、婚約破棄の原因を伯爵家に押し付け、反撃の芽を摘むために、伯爵家を潰すつもりなのだという。
そんな身勝手な話を、公爵家の令嬢は許すはずもなかった。
「大丈夫よシェリー。……実はね。あの馬鹿な王子とその家族を、今の立場から引きずり降ろす計画を立てていたの」
「え……?」
ゆっくりと顔を上げるシェリー。
リンダは、どことなく恐ろしい笑みを浮かべていた。
「私の父、ジェイド・ベネロップは、王族ということをご存じでしょう?」
「はい……。国王様の弟が、ジェイド様ですよね?」
「その通り。今は王を示すアイバーンの名を奪われているけれど……。私はお父様こそ、王の名にふさわしいと思っているわ」
リンダはシェリーの頭を優しく撫でた後、ゆっくりとシェリーの体を離した。
「あなたはしばらくこの屋敷で過ごしなさい。すでにご家族の元にも、うちの執事たちが向かっているわ。何があっても、伯爵家に手出しはさせないから」
「リンダ様……」
「ふふっ。だからもう泣かないで。――お父様のところへ行ってくるわね」
◇
「なるほど。時は来たか……」
公爵家当主、ジェイド・ベネロップは、静かに笑みを浮かべた。
「お前の築き上げてきたもの。そして、公爵家の力を示すには、ちょうどいい頃合いだろう」
「私もそう思います。……では、任せていただいても?」
「あぁ。諸連絡は任せなさい。これから王宮に?」
「はい。事実確認は大事ですから……」
「ははっ、恐ろしい娘だ」
「お父様に似たのでしょう」
リンダはジェイドに頭を下げた後、部屋を出た。
「うぅう……」
公爵家令嬢、リンダ・ベネロップに抱きしめられ、涙を流しているのは、伯爵家令嬢シェリー・ディアスである。
昨日、シェリーは王子に婚約破棄をされたのだ。
その原因は……、浮気だった。
「全てあなたのせいにするつもりなのね。絶対に許せない」
シェリーの話では、婚約破棄の原因を伯爵家に押し付け、反撃の芽を摘むために、伯爵家を潰すつもりなのだという。
そんな身勝手な話を、公爵家の令嬢は許すはずもなかった。
「大丈夫よシェリー。……実はね。あの馬鹿な王子とその家族を、今の立場から引きずり降ろす計画を立てていたの」
「え……?」
ゆっくりと顔を上げるシェリー。
リンダは、どことなく恐ろしい笑みを浮かべていた。
「私の父、ジェイド・ベネロップは、王族ということをご存じでしょう?」
「はい……。国王様の弟が、ジェイド様ですよね?」
「その通り。今は王を示すアイバーンの名を奪われているけれど……。私はお父様こそ、王の名にふさわしいと思っているわ」
リンダはシェリーの頭を優しく撫でた後、ゆっくりとシェリーの体を離した。
「あなたはしばらくこの屋敷で過ごしなさい。すでにご家族の元にも、うちの執事たちが向かっているわ。何があっても、伯爵家に手出しはさせないから」
「リンダ様……」
「ふふっ。だからもう泣かないで。――お父様のところへ行ってくるわね」
◇
「なるほど。時は来たか……」
公爵家当主、ジェイド・ベネロップは、静かに笑みを浮かべた。
「お前の築き上げてきたもの。そして、公爵家の力を示すには、ちょうどいい頃合いだろう」
「私もそう思います。……では、任せていただいても?」
「あぁ。諸連絡は任せなさい。これから王宮に?」
「はい。事実確認は大事ですから……」
「ははっ、恐ろしい娘だ」
「お父様に似たのでしょう」
リンダはジェイドに頭を下げた後、部屋を出た。
4
お気に入りに追加
1,044
あなたにおすすめの小説

婚約破棄を求められました。私は嬉しいですが、貴方はそれでいいのですね?
ゆるり
恋愛
アリシエラは聖女であり、婚約者と結婚して王太子妃になる筈だった。しかし、ある少女の登場により、未来が狂いだす。婚約破棄を求める彼にアリシエラは答えた。「はい、喜んで」と。
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました
青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。
それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。

純白の牢獄
ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

婚約破棄にめげず第2王子を立派な紳士にします!
satomi
恋愛
婚約破棄を言い渡されたリンドウ=スミス公爵令嬢…。
その場では、殿下が無能なので話をほとんど聞いてなかった。なかなかの強者。というのも、彼女の兄たちは揃ってシスコン。優秀な兄たちに溺愛されている。
リンドウ令嬢はまともに育ったんですけど、無能が国王になることは阻止したいスミス家は第2王子のアンドリュー(第1王子と同じ名前)をスミス家で預かり、紳士に育てることにしました。
完膚なきまでのざまぁ! を貴方に……わざとじゃございませんことよ?
せりもも
恋愛
学園の卒業パーティーで、モランシー公爵令嬢コルデリアは、大国ロタリンギアの第一王子ジュリアンに、婚約を破棄されてしまう。父の領邦に戻った彼女は、修道院へ入ることになるが……。先祖伝来の魔法を授けられるが、今一歩のところで残念な悪役令嬢コルデリアと、真実の愛を追い求める王子ジュリアンの、行き違いラブ。短編です。
※表紙は、イラストACのムトウデザイン様(イラスト)、十野七様(背景)より頂きました
冤罪を受けたため、隣国へ亡命します
しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」
呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。
「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」
突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。
友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。
冤罪を晴らすため、奮闘していく。
同名主人公にて様々な話を書いています。
立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。
サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。
変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。
ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます!
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる