7 / 11
浮気現場
しおりを挟む
なんと、昨日出会ったばかりのカモナから、今朝、手紙が届いた。
どうして私の家がわかったのかは、定かではないけれど……。そんなことはどうでもいい。
私の心は、人生で初めてと言ってもいいくらい、熱を帯びていた。
これを……。恋愛と呼ぶのかもしれない。
カモナからの手紙には、今日も会おうと書いてあった。
もちろん、断る理由なんて無い。
待ち合わせの時間が、待ち遠しかった。
☆ ☆ ☆
「来てくれたんですね」
「あぁ、カモナ……」
私は思わず、カモナに抱き着いてしまった。
「カモナ……。その目つきよ。とても素敵」
「目つき……。ですか」
「私、あなたみたいな男に、睨まれたいの……。見下されたいの……」
「……変態ですね」
不機嫌そうに、低い声で放たれたそのセリフは、私の気持ちを盛り上げるのに、十分すぎた。
カモナにたくさん、虐めてもらって……。
……家に帰ったら、メイドを虐める!
完璧だ。最高の一日になる。
「カモナ。お口も見せてほしいわ? どうして布で隠しているの?」
「そういう決まりなのです」
「決まり……?」
「はい。国の決まりです」
「……この国には、そんな決まりは無いわ? 見せてちょうだいよ」
「なりません」
「そんなぁ……」
カモナを、ちゃんと見たい。
私を罵る口を、その動きを……。目でしっかりと、確認したいのだ。
「お願い……。どうしてもダメなの?」
「……」
「カモナぁ」
「……いいでしょう」
カモナが……。私を抱き寄せた。
「目を、閉じてください。キスをしてあげます」
「えっ、キ、キス!?」
「はい。口を見せるわけにはいきませんが、その代わりに……。どうでしょう?」
「もちろん。そっちの方が、良いに決まってるわ?」
私は、静かに目を閉じた。
ゆっくりと、カモナの顔が、近づいてくるのがわかる。
そして……。
唇に、とても柔らかいものが触れた。
男性にしては、弾力が強い気もしたけれど、甘い感覚が、そういう細かい思考を、全部洗い流していく。
……してしまった。
夫がいるのに、別の男性と。
目を開けると、もうカモナは、口元を布で隠していた。
「いかがでしたか?」
「とても……。良かったわ」
カモナの目を、真っすぐに見つめる。
もう一度、せがもうと思った、その時だった。
「……キシリア?」
聞き覚えのある声。
一気に、頭が冷えていくのを感じる。
「……ジェ、ジェンス様」
ジェンス様が、こちらを見つめている。
まるで、目の前で起きた出来事を、脳裏に焼き付けるかのように。
「待ちなさい!」
ジェンス様の声を聞いて、カモナが逃げ去ったことに気が付いた。
「くそっ……」
逃げ足は素早く、とても追いつけそうもない。
ジェンス様は、その代わりに、私の方へと、近づいてきた。
「説明してくれ。キシリア。僕たちは、愛し合っていたのではないのかい?」
「……これは、違います」
「何が違うんだい?」
「うっ……。見間違いです!」
なんて苦しい言い訳なのだろう。
……浮気は、何よりの大罪だ。
だけど、ジェンス様なら、どうせ許してくれる。
適当に泣いて、縋り付けば、きっと……。
「……家で、ゆっくり話をしましょう?」
「君のような女を、家に入れろと言うのかい?」
「まぁ……。そのようなことをおっしゃるの? 妻に対して」
「……」
どうやら、相当お怒りの様子。
……あなたがナヨナヨしているから、いけないんだわ。
そう言ってやりたかったけれど、ここはぐっとこらえることにした。
とりあえず、真剣に謝っておこう……。
どうして私の家がわかったのかは、定かではないけれど……。そんなことはどうでもいい。
私の心は、人生で初めてと言ってもいいくらい、熱を帯びていた。
これを……。恋愛と呼ぶのかもしれない。
カモナからの手紙には、今日も会おうと書いてあった。
もちろん、断る理由なんて無い。
待ち合わせの時間が、待ち遠しかった。
☆ ☆ ☆
「来てくれたんですね」
「あぁ、カモナ……」
私は思わず、カモナに抱き着いてしまった。
「カモナ……。その目つきよ。とても素敵」
「目つき……。ですか」
「私、あなたみたいな男に、睨まれたいの……。見下されたいの……」
「……変態ですね」
不機嫌そうに、低い声で放たれたそのセリフは、私の気持ちを盛り上げるのに、十分すぎた。
カモナにたくさん、虐めてもらって……。
……家に帰ったら、メイドを虐める!
完璧だ。最高の一日になる。
「カモナ。お口も見せてほしいわ? どうして布で隠しているの?」
「そういう決まりなのです」
「決まり……?」
「はい。国の決まりです」
「……この国には、そんな決まりは無いわ? 見せてちょうだいよ」
「なりません」
「そんなぁ……」
カモナを、ちゃんと見たい。
私を罵る口を、その動きを……。目でしっかりと、確認したいのだ。
「お願い……。どうしてもダメなの?」
「……」
「カモナぁ」
「……いいでしょう」
カモナが……。私を抱き寄せた。
「目を、閉じてください。キスをしてあげます」
「えっ、キ、キス!?」
「はい。口を見せるわけにはいきませんが、その代わりに……。どうでしょう?」
「もちろん。そっちの方が、良いに決まってるわ?」
私は、静かに目を閉じた。
ゆっくりと、カモナの顔が、近づいてくるのがわかる。
そして……。
唇に、とても柔らかいものが触れた。
男性にしては、弾力が強い気もしたけれど、甘い感覚が、そういう細かい思考を、全部洗い流していく。
……してしまった。
夫がいるのに、別の男性と。
目を開けると、もうカモナは、口元を布で隠していた。
「いかがでしたか?」
「とても……。良かったわ」
カモナの目を、真っすぐに見つめる。
もう一度、せがもうと思った、その時だった。
「……キシリア?」
聞き覚えのある声。
一気に、頭が冷えていくのを感じる。
「……ジェ、ジェンス様」
ジェンス様が、こちらを見つめている。
まるで、目の前で起きた出来事を、脳裏に焼き付けるかのように。
「待ちなさい!」
ジェンス様の声を聞いて、カモナが逃げ去ったことに気が付いた。
「くそっ……」
逃げ足は素早く、とても追いつけそうもない。
ジェンス様は、その代わりに、私の方へと、近づいてきた。
「説明してくれ。キシリア。僕たちは、愛し合っていたのではないのかい?」
「……これは、違います」
「何が違うんだい?」
「うっ……。見間違いです!」
なんて苦しい言い訳なのだろう。
……浮気は、何よりの大罪だ。
だけど、ジェンス様なら、どうせ許してくれる。
適当に泣いて、縋り付けば、きっと……。
「……家で、ゆっくり話をしましょう?」
「君のような女を、家に入れろと言うのかい?」
「まぁ……。そのようなことをおっしゃるの? 妻に対して」
「……」
どうやら、相当お怒りの様子。
……あなたがナヨナヨしているから、いけないんだわ。
そう言ってやりたかったけれど、ここはぐっとこらえることにした。
とりあえず、真剣に謝っておこう……。
0
お気に入りに追加
102
あなたにおすすめの小説
護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜
ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。
がんばれ。
…テンプレ聖女モノです。
王太子に求婚された公爵令嬢は、嫉妬した義姉の手先に襲われ顔を焼かれる
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
『目には目を歯には歯を』
プランケット公爵家の令嬢ユルシュルは王太子から求婚された。公爵だった父を亡くし、王妹だった母がゴーエル男爵を配偶者に迎えて女公爵になった事で、プランケット公爵家の家中はとても混乱していた。家中を纏め公爵家を守るためには、自分の恋心を抑え込んで王太子の求婚を受けるしかなかった。だが求婚された王宮での舞踏会から公爵邸に戻ろうとしたユルシュル、徒党を組んで襲うモノ達が現れた。
逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ
朝霞 花純@電子書籍化決定
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。
理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。
逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。
エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!
蒼衣翼
恋愛
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。
しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。
だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。
国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。
一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。
※カクヨムさまにも投稿しています
なんでもいいけど、実家の連中なんとかしてくれません?-虐げられたお姫様、宗主国の皇帝陛下に拾われたついでに復讐する-
下菊みこと
恋愛
このヒロイン、実は…かなり苦労した可愛い可哀想な幼子である。ざまぁもあるよ。
エルネスティーヌはお姫様。しかし恵まれない人生を送ってきた。そんなエルネスティーヌは宗主国の皇帝陛下に拾われた。エルネスティーヌの幸せな人生がここから始まる。復讐の味は、エルネスティーヌにとっては蜜のようであった。
小説家になろう様でも投稿しています。
逆行転生した侯爵令嬢は、自分を裏切る予定の弱々婚約者を思う存分イジメます
黄札
恋愛
侯爵令嬢のルーチャが目覚めると、死ぬひと月前に戻っていた。
ひと月前、婚約者に近づこうとするぶりっ子を撃退するも……中傷だ!と断罪され、婚約破棄されてしまう。婚約者の公爵令息をぶりっ子に奪われてしまうのだ。くわえて、不貞疑惑まででっち上げられ、暗殺される運命。
目覚めたルーチャは暗殺を回避しようと自分から婚約を解消しようとする。弱々婚約者に無理難題を押しつけるのだが……
つよつよ令嬢ルーチャが冷静沈着、鋼の精神を持つ侍女マルタと運命を変えるために頑張ります。よわよわ婚約者も成長するかも?
短いお話を三話に分割してお届けします。
この小説は「小説家になろう」でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる