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浮気現場

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なんと、昨日出会ったばかりのカモナから、今朝、手紙が届いた。

どうして私の家がわかったのかは、定かではないけれど……。そんなことはどうでもいい。

私の心は、人生で初めてと言ってもいいくらい、熱を帯びていた。

これを……。恋愛と呼ぶのかもしれない。

カモナからの手紙には、今日も会おうと書いてあった。

もちろん、断る理由なんて無い。

待ち合わせの時間が、待ち遠しかった。

☆ ☆ ☆

「来てくれたんですね」
「あぁ、カモナ……」

私は思わず、カモナに抱き着いてしまった。

「カモナ……。その目つきよ。とても素敵」
「目つき……。ですか」
「私、あなたみたいな男に、睨まれたいの……。見下されたいの……」
「……変態ですね」

不機嫌そうに、低い声で放たれたそのセリフは、私の気持ちを盛り上げるのに、十分すぎた。

カモナにたくさん、虐めてもらって……。

……家に帰ったら、メイドを虐める! 

完璧だ。最高の一日になる。

「カモナ。お口も見せてほしいわ? どうして布で隠しているの?」
「そういう決まりなのです」
「決まり……?」
「はい。国の決まりです」
「……この国には、そんな決まりは無いわ? 見せてちょうだいよ」
「なりません」
「そんなぁ……」

カモナを、ちゃんと見たい。

私を罵る口を、その動きを……。目でしっかりと、確認したいのだ。

「お願い……。どうしてもダメなの?」
「……」
「カモナぁ」
「……いいでしょう」

カモナが……。私を抱き寄せた。

「目を、閉じてください。キスをしてあげます」
「えっ、キ、キス!?」
「はい。口を見せるわけにはいきませんが、その代わりに……。どうでしょう?」
「もちろん。そっちの方が、良いに決まってるわ?」

私は、静かに目を閉じた。

ゆっくりと、カモナの顔が、近づいてくるのがわかる。

そして……。

唇に、とても柔らかいものが触れた。

男性にしては、弾力が強い気もしたけれど、甘い感覚が、そういう細かい思考を、全部洗い流していく。

……してしまった。

夫がいるのに、別の男性と。

目を開けると、もうカモナは、口元を布で隠していた。

「いかがでしたか?」
「とても……。良かったわ」

カモナの目を、真っすぐに見つめる。

もう一度、せがもうと思った、その時だった。

「……キシリア?」

聞き覚えのある声。

一気に、頭が冷えていくのを感じる。

「……ジェ、ジェンス様」

ジェンス様が、こちらを見つめている。

まるで、目の前で起きた出来事を、脳裏に焼き付けるかのように。

「待ちなさい!」

ジェンス様の声を聞いて、カモナが逃げ去ったことに気が付いた。

「くそっ……」

逃げ足は素早く、とても追いつけそうもない。

ジェンス様は、その代わりに、私の方へと、近づいてきた。

「説明してくれ。キシリア。僕たちは、愛し合っていたのではないのかい?」
「……これは、違います」
「何が違うんだい?」
「うっ……。見間違いです!」

なんて苦しい言い訳なのだろう。

……浮気は、何よりの大罪だ。

だけど、ジェンス様なら、どうせ許してくれる。

適当に泣いて、縋り付けば、きっと……。

「……家で、ゆっくり話をしましょう?」
「君のような女を、家に入れろと言うのかい?」
「まぁ……。そのようなことをおっしゃるの? 妻に対して」
「……」

どうやら、相当お怒りの様子。

……あなたがナヨナヨしているから、いけないんだわ。

そう言ってやりたかったけれど、ここはぐっとこらえることにした。

とりあえず、真剣に謝っておこう……。
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