12 / 12
幸せな人々
しおりを挟む
騒動から一年後……。
キーターンの王宮で、キャロとハビアルの結婚を祝うパーティが行われていた。
「キャロ~!!」
挨拶周りを終え、少し休憩していたキャロの元に、ウシャーラが駆け寄ってきた。
「ちょっとウシャーラ……。ごめんなさいキャロ様。お休みのところ」
カムシアが謝罪するが、キャロは首を横に振り、ウシャーラの髪を撫でてやった。
「ウシャーラ。訓練は順調?」
「うん! パパも帰ってきたから、毎日一緒にやってるよ!」
「まぁ。それは頼もしいわね」
そこへ、ハビアルもやってきた。
「おやウシャーラ。僕の妻を口説くつもりかい?」
「口説く?」
「ははっ。ウシャーラには、まだ早かったか」
「もうハビアル……。からかってはダメよ?」
「ごめんごめん。ウシャーラはかっこいから」
一年経ち、ようやく砕けた言葉を使うようになったキャロ。
こうした冗談にも、しっかり反応してくれる。
カムシアは、二人の時間を邪魔するわけにはいかないと、ウシャーラを連れて、その場を立ち去った。
先ほどまでウシャーラが座っていた、キャロの隣の席に、ハビアルが腰かける。
「あっという間の一年だったね……」
「えぇ。本当に……。去年の今頃は、まさか自分が、隣国の王子様と結婚しているだなんて、全く想像していなかったわ」
「僕も……。あの時、自分を助けてくれた少女のことなんて、すっかり忘れていた。……だけど、こうしてまた出会うことができたんだ」
ハビアルが、キャロの手を握った。
「キャロ。君は今、ちゃんと幸せかい?」
「もちろんよ。きっとこの世界で、一番幸せだわ」
「いや、それは違うね。僕の方がずっと幸せだから」
「あなたの幸せが、私の幸せなのだから、私の方が幸せということになるわよ」
「ん?」
「あれ?」
「あっはっはっ!」
「「!?」」
突然聞こえた笑い声に、二人は驚き、手を離してしまった。
見れば、かつて婚約をした時に、記事を書いた記者である。
「いやぁすいません。面白い会話だったので、つい盗み聞きを」
「悪趣味です……」
「いいじゃないか。是非、記事にしてくれるかい?」
「ちょっと!?」
「もちろんでございます。……キャロ様は一年前、こうおっしゃいました。与えられる幸せを、感じ取るだけではなく、もっと、誰かを同じような気持ちにできるように、考えて生きていかねばならない……」
「確かに、申しましたが……」
「えぇ。ですから、記事にするのですよ。二人の幸せな会話を知れば、国民はより一層、幸せをおすそ分けしていただいたような気分になるでしょうから」
そうなのか……? キャロは疑問だったが、ハビアルは強く頷いている。
「……でしたら。はい、構いませんが」
「ありがとうございます」
満足そうな顔をして、記者は去って行った。
「本当に、それで国民は幸せになるのかしら」
「きっと……ね」
再び、手を握り合う二人。
徐々に、顔が近づいていく。
「……良いかな」
「……えぇ」
そして……。
唇を重ねた。
少しして、大きな拍手が送られる。
その場にいる全員が、幸せな気持ちに包まれていた。
キーターンの王宮で、キャロとハビアルの結婚を祝うパーティが行われていた。
「キャロ~!!」
挨拶周りを終え、少し休憩していたキャロの元に、ウシャーラが駆け寄ってきた。
「ちょっとウシャーラ……。ごめんなさいキャロ様。お休みのところ」
カムシアが謝罪するが、キャロは首を横に振り、ウシャーラの髪を撫でてやった。
「ウシャーラ。訓練は順調?」
「うん! パパも帰ってきたから、毎日一緒にやってるよ!」
「まぁ。それは頼もしいわね」
そこへ、ハビアルもやってきた。
「おやウシャーラ。僕の妻を口説くつもりかい?」
「口説く?」
「ははっ。ウシャーラには、まだ早かったか」
「もうハビアル……。からかってはダメよ?」
「ごめんごめん。ウシャーラはかっこいから」
一年経ち、ようやく砕けた言葉を使うようになったキャロ。
こうした冗談にも、しっかり反応してくれる。
カムシアは、二人の時間を邪魔するわけにはいかないと、ウシャーラを連れて、その場を立ち去った。
先ほどまでウシャーラが座っていた、キャロの隣の席に、ハビアルが腰かける。
「あっという間の一年だったね……」
「えぇ。本当に……。去年の今頃は、まさか自分が、隣国の王子様と結婚しているだなんて、全く想像していなかったわ」
「僕も……。あの時、自分を助けてくれた少女のことなんて、すっかり忘れていた。……だけど、こうしてまた出会うことができたんだ」
ハビアルが、キャロの手を握った。
「キャロ。君は今、ちゃんと幸せかい?」
「もちろんよ。きっとこの世界で、一番幸せだわ」
「いや、それは違うね。僕の方がずっと幸せだから」
「あなたの幸せが、私の幸せなのだから、私の方が幸せということになるわよ」
「ん?」
「あれ?」
「あっはっはっ!」
「「!?」」
突然聞こえた笑い声に、二人は驚き、手を離してしまった。
見れば、かつて婚約をした時に、記事を書いた記者である。
「いやぁすいません。面白い会話だったので、つい盗み聞きを」
「悪趣味です……」
「いいじゃないか。是非、記事にしてくれるかい?」
「ちょっと!?」
「もちろんでございます。……キャロ様は一年前、こうおっしゃいました。与えられる幸せを、感じ取るだけではなく、もっと、誰かを同じような気持ちにできるように、考えて生きていかねばならない……」
「確かに、申しましたが……」
「えぇ。ですから、記事にするのですよ。二人の幸せな会話を知れば、国民はより一層、幸せをおすそ分けしていただいたような気分になるでしょうから」
そうなのか……? キャロは疑問だったが、ハビアルは強く頷いている。
「……でしたら。はい、構いませんが」
「ありがとうございます」
満足そうな顔をして、記者は去って行った。
「本当に、それで国民は幸せになるのかしら」
「きっと……ね」
再び、手を握り合う二人。
徐々に、顔が近づいていく。
「……良いかな」
「……えぇ」
そして……。
唇を重ねた。
少しして、大きな拍手が送られる。
その場にいる全員が、幸せな気持ちに包まれていた。
73
お気に入りに追加
1,924
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(18件)
あなたにおすすめの小説

せっかく家の借金を返したのに、妹に婚約者を奪われて追放されました。でも、気にしなくていいみたいです。私には頼れる公爵様がいらっしゃいますから
甘海そら
恋愛
ヤルス伯爵家の長女、セリアには商才があった。
であれば、ヤルス家の借金を見事に返済し、いよいよ婚礼を間近にする。
だが、
「セリア。君には悪いと思っているが、私は運命の人を見つけたのだよ」
婚約者であるはずのクワイフからそう告げられる。
そのクワイフの隣には、妹であるヨカが目を細めて笑っていた。
気がつけば、セリアは全てを失っていた。
今までの功績は何故か妹のものになり、婚約者もまた妹のものとなった。
さらには、あらぬ悪名を着せられ、屋敷から追放される憂き目にも会う。
失意のどん底に陥ることになる。
ただ、そんな時だった。
セリアの目の前に、かつての親友が現れた。
大国シュリナの雄。
ユーガルド公爵家が当主、ケネス・トルゴー。
彼が仏頂面で手を差し伸べてくれば、彼女の運命は大きく変化していく。

地味令嬢を馬鹿にした婚約者が、私の正体を知って土下座してきました
くも
恋愛
王都の社交界で、ひとつの事件が起こった。
貴族令嬢たちが集う華やかな夜会の最中、私――セシリア・エヴァンストンは、婚約者であるエドワード・グラハム侯爵に、皆の前で婚約破棄を告げられたのだ。
「セシリア、お前との婚約は破棄する。お前のような地味でつまらない女と結婚するのはごめんだ」
会場がざわめく。貴族たちは興味深そうにこちらを見ていた。私が普段から控えめな性格だったせいか、同情する者は少ない。むしろ、面白がっている者ばかりだった。

姉の引き立て役として生きて来た私でしたが、本当は逆だったのですね
麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
伯爵家の長女のメルディナは美しいが考えが浅く、彼女をあがめる取り巻きの男に対しても残忍なワガママなところがあった。
妹のクレアはそんなメルディナのフォローをしていたが、周囲からは煙たがられて嫌われがちであった。
美しい姉と引き立て役の妹として過ごしてきた幼少期だったが、大人になったらその立場が逆転して――。
3話完結


婚約を解消してくれないと、毒を飲んで死ぬ? どうぞご自由に
柚木ゆず
恋愛
※7月25日、本編完結いたしました。後日、補完編と番外編の投稿を予定しております。
伯爵令嬢ソフィアの幼馴染である、ソフィアの婚約者イーサンと伯爵令嬢アヴリーヌ。二人はソフィアに内緒で恋仲となっており、最愛の人と結婚できるように今の関係を解消したいと考えていました。
ですがこの婚約は少々特殊な意味を持つものとなっており、解消するにはソフィアの協力が必要不可欠。ソフィアが関係の解消を快諾し、幼馴染三人で両家の当主に訴えなければ実現できないものでした。
そしてそんなソフィアは『家の都合』を優先するため、素直に力を貸してくれはしないと考えていました。
そこで二人は毒を用意し、一緒になれないなら飲んで死ぬとソフィアに宣言。大切な幼馴染が死ぬのは嫌だから、必ず言うことを聞く――。と二人はほくそ笑んでいましたが、そんなイーサンとアヴリーヌに返ってきたのは予想外の言葉でした。
「そう。どうぞご自由に」

婚約者を奪われた私は、他国で新しい生活を送ります
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルクルは、エドガー王子から婚約破棄を言い渡されてしまう。
聖女を好きにったようで、婚約破棄の理由を全て私のせいにしてきた。
聖女と王子が考えた嘘の言い分を家族は信じ、私に勘当を言い渡す。
平民になった私だけど、問題なく他国で新しい生活を送ることができていた。

殿下をくださいな、お姉さま~欲しがり過ぎた妹に、姉が最後に贈ったのは死の呪いだった~
和泉鷹央
恋愛
忌み子と呼ばれ、幼い頃から実家のなかに閉じ込められたいた少女――コンラッド伯爵の長女オリビア。
彼女は生まれながらにして、ある呪いを受け継いだ魔女だった。
本当ならば死ぬまで屋敷から出ることを許されないオリビアだったが、欲深い国王はその呪いを利用して更に国を豊かにしようと考え、第四王子との婚約を命じる。
この頃からだ。
姉のオリビアに婚約者が出来た頃から、妹のサンドラの様子がおかしくなった。
あれが欲しい、これが欲しいとわがままを言い出したのだ。
それまではとても物わかりのよい子だったのに。
半年後――。
オリビアと婚約者、王太子ジョシュアの結婚式が間近に迫ったある日。
サンドラは呆れたことに、王太子が欲しいと言い出した。
オリビアの我慢はとうとう限界に達してしまい……
最後はハッピーエンドです。
別の投稿サイトでも掲載しています。

破滅した令嬢は時間が戻ったので、破滅しないよう動きます
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私リーゼは、破滅寸前だった。
伯爵令嬢のベネサの思い通り動いてしまい、婚約者のダーロス王子に婚約破棄を言い渡される。
その後――私は目を覚ますと1年前に戻っていて、今までの行動を後悔する。
ダーロス王子は今の時点でベネサのことを愛し、私を切り捨てようと考えていたようだ。
もうベネサの思い通りにはならないと、私は決意する。
破滅しないよう動くために、本来の未来とは違う生活を送ろうとしていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
ご感想ありがとうございます!
ご感想ありがとうございます!
はい!