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国外追放
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王宮に向かったカーセルとマーシュ。
そこには……。ライアンもいた。
「揃ったな」
国王のダムリスが、大きくため息をついた。
「君たちは……。随分と大きな騒ぎを起こしたようだ」
「申し訳ございません!」
比較的元気なライアンが、大声で謝罪する。
残りの二人は、ほぼ目の焦点が合っていない状態だった。
徹夜状態のカーセルと、腐った果物で腹を下してしまったマーシュである。
「もはや、謝罪で解決できる領域は、とうに超えておる。態度で示してもらう他なかろう」
「態度、とは……」
「……この国から、出て行ってくれ」
ライアンだけが、愕然としている。
「そ、そんな……。あまりに重すぎます! 確かに私は、彼女との婚約をなかったことにした! しかし、婚約破棄など、よくある話です! それだけで、国を追い出されなければならないのですか!?」
「もちろん、婚約破棄は罪だが、それほどのものではない。……問題は、キャロの婚約者だ。王族とあれば、話は変わってくる。キーターンは友好国なのでな。君のような人間に、何の制裁も与えないようであれば、関係の悪化は避けられないだろう」
「……お願いします! 許してください! もう一度チャンスを!」
「……無理だ」
ライアンは、隣にいたカーセルの肩を叩く。
「カーセル様! なんとか言ってください!」
「……仕方あるまい。他に、責任を取る方法なんて、無いのだから」
「なっ!?」
次に、そのもう一つ隣の、悪臭を放っているマーシュの肩も叩く。
「マーシュ様!」
「お腹が痛いですわ……」
ダメだ……。二人とも、使い物にならない!
共闘を諦めたライアンは、たった一人で、ダムリスを説得することに決めた。
「では、国外追放したと、表向きにはおっしゃっていただいて、その間にこの国での信頼を――」
「無理だと言っている」
「話を聞いてください!」
「……キャロも、同じ気持ちだったであろう」
「え……?」
「話を聞いてほしい。お主の身勝手で傲慢な婚約破棄に対し、そう思っていたのではないか?」
ライアンは、何も言い返せなかった。
……実際のところ、キャロは、すっぱりと諦め立ち去ったのだが。
それをそのまま伝えるほど、ライアンも馬鹿にはなりきれなかった。
膝から崩れ落ち……。頭を抱える。
「……カーセル。マーシュ。お主らも、それでよいか?」
力なく、二人は首を縦に振った。
一人の子爵令嬢の婚約破棄から始まった騒動は……。
二つの貴族の息の根を止める。そんな結果で、幕を閉じた。
そこには……。ライアンもいた。
「揃ったな」
国王のダムリスが、大きくため息をついた。
「君たちは……。随分と大きな騒ぎを起こしたようだ」
「申し訳ございません!」
比較的元気なライアンが、大声で謝罪する。
残りの二人は、ほぼ目の焦点が合っていない状態だった。
徹夜状態のカーセルと、腐った果物で腹を下してしまったマーシュである。
「もはや、謝罪で解決できる領域は、とうに超えておる。態度で示してもらう他なかろう」
「態度、とは……」
「……この国から、出て行ってくれ」
ライアンだけが、愕然としている。
「そ、そんな……。あまりに重すぎます! 確かに私は、彼女との婚約をなかったことにした! しかし、婚約破棄など、よくある話です! それだけで、国を追い出されなければならないのですか!?」
「もちろん、婚約破棄は罪だが、それほどのものではない。……問題は、キャロの婚約者だ。王族とあれば、話は変わってくる。キーターンは友好国なのでな。君のような人間に、何の制裁も与えないようであれば、関係の悪化は避けられないだろう」
「……お願いします! 許してください! もう一度チャンスを!」
「……無理だ」
ライアンは、隣にいたカーセルの肩を叩く。
「カーセル様! なんとか言ってください!」
「……仕方あるまい。他に、責任を取る方法なんて、無いのだから」
「なっ!?」
次に、そのもう一つ隣の、悪臭を放っているマーシュの肩も叩く。
「マーシュ様!」
「お腹が痛いですわ……」
ダメだ……。二人とも、使い物にならない!
共闘を諦めたライアンは、たった一人で、ダムリスを説得することに決めた。
「では、国外追放したと、表向きにはおっしゃっていただいて、その間にこの国での信頼を――」
「無理だと言っている」
「話を聞いてください!」
「……キャロも、同じ気持ちだったであろう」
「え……?」
「話を聞いてほしい。お主の身勝手で傲慢な婚約破棄に対し、そう思っていたのではないか?」
ライアンは、何も言い返せなかった。
……実際のところ、キャロは、すっぱりと諦め立ち去ったのだが。
それをそのまま伝えるほど、ライアンも馬鹿にはなりきれなかった。
膝から崩れ落ち……。頭を抱える。
「……カーセル。マーシュ。お主らも、それでよいか?」
力なく、二人は首を縦に振った。
一人の子爵令嬢の婚約破棄から始まった騒動は……。
二つの貴族の息の根を止める。そんな結果で、幕を閉じた。
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