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知れ渡る婚約
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「この度は、貴重な時間を割いていただき、誠にありがとうございます」
「いえいえ。……幸せは、分け合うべきものですから」
ハビアルの言葉に、キャロの顔が赤くなった。
同時に、記者が微笑みながら、メモを取る。
あれよあれよという間に、二人の婚約の話は進み、気が付けば、国民に知れ渡っていた。
改めて、きちんとした情報を出すべく、新聞記者が二人にインタビューをすることとなった。
「まず、二人はどうして出会ったのでしょうか」
キャロが、ここに至るまでの経緯を、話し始めた。
婚約者に婚約破棄され、傷物令嬢扱いされた挙句、家を追い出されたこと。
……そして、この街に来て、ハビアルと運命の再会を果たしたこと。
記者は興味深そうに、何度も頷いていた。
「素晴らしいお話です。キャロ様の優しさと愛が、導いた恋愛だと。私はそう思いますが……。ハビアル様は、どのようにお考えでしょう」
「僕もそう思います。彼女は本当に、気遣いのできる人なんです。……しかし、それが欠点となりうる時もあります」
「と、言いますと?」
「近いうちに家族となる僕に対しては、砕けた言葉を是非使ってくれと、申しているのですが、なかなか受け入れてくれません」
「あ、当たり前です。一国の王子様に、無礼な言葉遣いなど……」
キャロが、頬を赤くした。
ハビアルだけでなく、相手が侍女であろうと、執事であろうと、キャロは丁寧な言葉を使うのだった。
この街を訪れてから、簡単な言葉を使ったのは、子供であるウシャーラに対してのみである。
厳しくしつけられた。という理由もあるが、それ以上に、キャロは心の清い人間だった。
「もし二人の子供が生まれたら、子供にも固い言葉を使うのではないかと、今から心配です」
「ははっ! ……っと、失礼。思わず笑ってしまいました」
拗ねたように、横を向くキャロ。
その横顔を見て、ハビアルは微笑んだ。
「少し話は変わりますが……。キャロ様。この国の様子はいかがでしょう」
「あっ。えっと……。そうですね。国王様の人格が、そのまま現れたような……。人が人に対して、必ず尽くそうという、素晴らしい心遣いを、誰からでも感じ取ることができる、素晴らしい国だと思います」
「つまり、キャロのような優しい人間には、ぴったりの国だったということです」
ハビアルが得意そうに言うと、またしてもキャロの顔が赤くなった。
「では、最後に……。今後、どのような日々を、二人で過ごしていきたいですか? まずは、ハビアル様から」
「そうですね……。実は、具体的なことは考えていないのですが。キーターンには、まだまだ素晴らしい街があり、自然があります。それらを紹介し、彼女に、もっとこの国の魅力をしってもらいたいです」
「ありがとうございます。では、キャロ様はいかがでしょう」
「えっと……。今の私は、ただ流れに身を任せているだけ、というか……。与えられる幸せを、感じ取るだけではなく、もっと、誰かを同じような気持ちにできるように、考えて生きていかねばならないなと。そういうことを思っています」
記者は思う。
この記事を読んだ多くの国民が、笑顔になるだろうと。
……そして同時に。
隣国へも、この新聞は渡るのだが。
彼女を追い出したブリジット家は、一体何を思うだろう。
そんなことを考えながら、インタビューを終えた。
「いえいえ。……幸せは、分け合うべきものですから」
ハビアルの言葉に、キャロの顔が赤くなった。
同時に、記者が微笑みながら、メモを取る。
あれよあれよという間に、二人の婚約の話は進み、気が付けば、国民に知れ渡っていた。
改めて、きちんとした情報を出すべく、新聞記者が二人にインタビューをすることとなった。
「まず、二人はどうして出会ったのでしょうか」
キャロが、ここに至るまでの経緯を、話し始めた。
婚約者に婚約破棄され、傷物令嬢扱いされた挙句、家を追い出されたこと。
……そして、この街に来て、ハビアルと運命の再会を果たしたこと。
記者は興味深そうに、何度も頷いていた。
「素晴らしいお話です。キャロ様の優しさと愛が、導いた恋愛だと。私はそう思いますが……。ハビアル様は、どのようにお考えでしょう」
「僕もそう思います。彼女は本当に、気遣いのできる人なんです。……しかし、それが欠点となりうる時もあります」
「と、言いますと?」
「近いうちに家族となる僕に対しては、砕けた言葉を是非使ってくれと、申しているのですが、なかなか受け入れてくれません」
「あ、当たり前です。一国の王子様に、無礼な言葉遣いなど……」
キャロが、頬を赤くした。
ハビアルだけでなく、相手が侍女であろうと、執事であろうと、キャロは丁寧な言葉を使うのだった。
この街を訪れてから、簡単な言葉を使ったのは、子供であるウシャーラに対してのみである。
厳しくしつけられた。という理由もあるが、それ以上に、キャロは心の清い人間だった。
「もし二人の子供が生まれたら、子供にも固い言葉を使うのではないかと、今から心配です」
「ははっ! ……っと、失礼。思わず笑ってしまいました」
拗ねたように、横を向くキャロ。
その横顔を見て、ハビアルは微笑んだ。
「少し話は変わりますが……。キャロ様。この国の様子はいかがでしょう」
「あっ。えっと……。そうですね。国王様の人格が、そのまま現れたような……。人が人に対して、必ず尽くそうという、素晴らしい心遣いを、誰からでも感じ取ることができる、素晴らしい国だと思います」
「つまり、キャロのような優しい人間には、ぴったりの国だったということです」
ハビアルが得意そうに言うと、またしてもキャロの顔が赤くなった。
「では、最後に……。今後、どのような日々を、二人で過ごしていきたいですか? まずは、ハビアル様から」
「そうですね……。実は、具体的なことは考えていないのですが。キーターンには、まだまだ素晴らしい街があり、自然があります。それらを紹介し、彼女に、もっとこの国の魅力をしってもらいたいです」
「ありがとうございます。では、キャロ様はいかがでしょう」
「えっと……。今の私は、ただ流れに身を任せているだけ、というか……。与えられる幸せを、感じ取るだけではなく、もっと、誰かを同じような気持ちにできるように、考えて生きていかねばならないなと。そういうことを思っています」
記者は思う。
この記事を読んだ多くの国民が、笑顔になるだろうと。
……そして同時に。
隣国へも、この新聞は渡るのだが。
彼女を追い出したブリジット家は、一体何を思うだろう。
そんなことを考えながら、インタビューを終えた。
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