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優しい家族
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「ごちそうさまでした」
ウシャーラの母、カムシアの作る料理は、ウシャーラの言う通り、ものすごく美味しかった。
客人ながら、かなりの量食べてしまって、少し恥ずかしかったが、久々に食べる手の込んだ食事だったので、仕方ないと思うことにした。
「パパは今、遠くの国に遠征に行ってるんだよ!」
食後、ウシャーラが、父の話をし始めた。
「僕もいつか騎士になって、人を守るんだ!」
「頼もしいね」
キャロに頭を撫でられ、ウシャーラは頬を綻ばせた。
「ところでキャロさんは、一体どこからいらっしゃったのですか? 随分気品があるというか……。まるで、お嬢様みたいだなぁって」
さて、どう答えるべきか。
濁すこともできたが、これから先のことを考えれば、正直に話して、仕事ができそうな場所を教えてもらった方が良いのかもしれない。
迷ったが、キャロは、全てを話すことにした。
「えぇっ!? 子爵家のご令嬢!?」
「そ、そんなに驚かなくても……」
「驚きますよ! しまったわ。あんなお粗末な料理を、食べさせてしまって……。もっと高級な肉だとか、使うべきでしたよね。申し訳ございませんでした……」
「いえ……。あの、今日食べた料理の方が、よっぽどごちそうでしたから、ご安心ください」
妹のマーシュは、贅沢に様々な料理を振る舞われていたが、キャロの場合、なぜか贅沢をしてはいけないという教育を受けさせられ、質素な食事しか、与えられなかった。
……シチューなんてものを食べたのは、去年のクリスマス以来だ。
「ねぇママ。令嬢って何?」
「すごく偉い方って意味よ!」
「へぇ! キャロって、すごい人だったんだ!」
「呼び捨てしちゃダメよ! すいませんキャロ様……」
「いえ。その……。もう、家を追い出されているわけですから。貴族でもなんでもないですよ」
「ママ。そうやって言ってるよ?」
「しかし……。……あの、明日、王宮に行きましょう。事情を説明すれば、間違いなく、支援を受けられるはずです」
カムシアが、キャロの手を握った。
「カ、カムシアさん?」
「……私も実は、両親がちょっと変わった人で。あの、同じ目線で語るのは、失礼かと思うのですが、家を追い出されて、それで今の夫に拾われて……。少しだけ、近いものを感じたんです」
気が付けば、カムシアの目が潤んでいる。
「理不尽を許す必要も、受け入れる必要もありません。我が国の国王、リカメロ様は、非常に慈悲深いお方ですから、きっとキャロ様を受け入れるでしょう」
「……ありがとうございます」
キャロとカムシアは、強く抱きしめ合った。
――そして。
翌日、王宮へと向かったキャロは、運命の再会を果たすこととなる。
それは、キャロの逆転人生、及び……。キャロを追い出した、ブリジット家の没落の始まりでもあった。
ウシャーラの母、カムシアの作る料理は、ウシャーラの言う通り、ものすごく美味しかった。
客人ながら、かなりの量食べてしまって、少し恥ずかしかったが、久々に食べる手の込んだ食事だったので、仕方ないと思うことにした。
「パパは今、遠くの国に遠征に行ってるんだよ!」
食後、ウシャーラが、父の話をし始めた。
「僕もいつか騎士になって、人を守るんだ!」
「頼もしいね」
キャロに頭を撫でられ、ウシャーラは頬を綻ばせた。
「ところでキャロさんは、一体どこからいらっしゃったのですか? 随分気品があるというか……。まるで、お嬢様みたいだなぁって」
さて、どう答えるべきか。
濁すこともできたが、これから先のことを考えれば、正直に話して、仕事ができそうな場所を教えてもらった方が良いのかもしれない。
迷ったが、キャロは、全てを話すことにした。
「えぇっ!? 子爵家のご令嬢!?」
「そ、そんなに驚かなくても……」
「驚きますよ! しまったわ。あんなお粗末な料理を、食べさせてしまって……。もっと高級な肉だとか、使うべきでしたよね。申し訳ございませんでした……」
「いえ……。あの、今日食べた料理の方が、よっぽどごちそうでしたから、ご安心ください」
妹のマーシュは、贅沢に様々な料理を振る舞われていたが、キャロの場合、なぜか贅沢をしてはいけないという教育を受けさせられ、質素な食事しか、与えられなかった。
……シチューなんてものを食べたのは、去年のクリスマス以来だ。
「ねぇママ。令嬢って何?」
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「へぇ! キャロって、すごい人だったんだ!」
「呼び捨てしちゃダメよ! すいませんキャロ様……」
「いえ。その……。もう、家を追い出されているわけですから。貴族でもなんでもないですよ」
「ママ。そうやって言ってるよ?」
「しかし……。……あの、明日、王宮に行きましょう。事情を説明すれば、間違いなく、支援を受けられるはずです」
カムシアが、キャロの手を握った。
「カ、カムシアさん?」
「……私も実は、両親がちょっと変わった人で。あの、同じ目線で語るのは、失礼かと思うのですが、家を追い出されて、それで今の夫に拾われて……。少しだけ、近いものを感じたんです」
気が付けば、カムシアの目が潤んでいる。
「理不尽を許す必要も、受け入れる必要もありません。我が国の国王、リカメロ様は、非常に慈悲深いお方ですから、きっとキャロ様を受け入れるでしょう」
「……ありがとうございます」
キャロとカムシアは、強く抱きしめ合った。
――そして。
翌日、王宮へと向かったキャロは、運命の再会を果たすこととなる。
それは、キャロの逆転人生、及び……。キャロを追い出した、ブリジット家の没落の始まりでもあった。
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