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王都浄化編
第11話 戦略的撤退
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「おやおや……。今度は随分と多いみたいだね」
「当たり前だ! お前たちだって二人組じゃないか! ナンバーフォーを二人で倒すなんてズルいぞ!」
「そうだそうだ!」
……なんだかやかましい連中です。
しかし、四人同時となると、何をしてくるかわかりません。警戒を――。
突然、地響きが鳴り始めました。
ナンバーフォーの爆発魔法とは違います。
まるで……。何かが地面からせりあがってくるような振動。
そして……。
大きな丸い物体が、四人の足元から現れました。
四人はその上に乗り、私たちを見降ろします。
「どうだ! これが我々の作った人球だ!」
「人球……?」
「読んで字の如く。人の球よ……。ここにいた奴隷たちの魂を集めて作ったの」
「そんな……」
「なるほど。メノン。彼らの言っていることは本当らしいよ」
ふざけた連中だと思っていましたが……。なかなか極悪非道なことをします。
「だけど、まだ死んだわけじゃないみたいだ。四人を浄化してしまえば、元の人間の姿に戻れそうだよ」
「おい! 何をごちゃごちゃ言ってんだ!」
「……ナイン。うるさい」
「痛っ! おいセブン! 何も叩くことねぇだろ!?」
「やめなさいよあなたたち……。無駄に騒ぐと、私たちが雑魚だと思われてしまうわ。ねぇシックス。さっさと始めましょう?」
「そうだな……」
四人が、肩を組んだ。
そして、何やら呪文のようなものを呟き始める。
すると、徐々に四人の体が大きくなり……。
さらに、変形を始めた。
まず、ナンバーナインが、人の足のような形に変形し、二つに分かれた。
次に、ナンバーエイトが腕、ナンバセブンが首……。
最後、ナンバーシックスは剣に変形したのだ。
そこから、それぞれが人球と合体し……。
巨人のようなモンスターが完成した。
「驚いたな……。彼らの魔法は、四人で一つの存在になることなんだ」
聞いたことがありません。かなり特殊な魔法です。
しかし、驚いている場合ではないでしょう。
「ガルウ、どうすれば……」
「そうだねぇ……。人の魂を傷つけるわけにもいかないし」
そうなると、手出しができません。
巨人が、剣を振り回し、こちらに向かってきました。
強烈な一撃が、地面に向かって放たれます。
大きな穴が空きました。これをまともにくらえば……。間違いなく死んでしまうでしょう。
「がっはっは! 大人しく降参するんだな!」
四人の声が混ざり合っています。非常に不気味です。
「ガルウ。手足を攻撃するのはどうでしょうか。そこであれば、人の魂は関係ないはずです」
「いや、マズいね。おそらく感覚を共有しているはず。彼らは魔導士だから、それなりのダメージには耐えらえるだろうけど、ここで働かされていた人は……。子供もいるだろうし、そうはいかない」
「では、どうすれば……」
ガルウと話している間にも、次々と攻撃が飛んできます。
避けることはできますが……。私たちの体力は無限ではありません。
それと比べ巨人は、徐々に体の動かしかたになれてきたのか、どんどん速度を速めていきます。
「僕に二つ、この状況を打開する作戦があるよ」
「教えてください」
「一つ目。自爆」
「は?」
ガルウは真剣な表情をしています。
どうやら冗談を言ったわけではないようです。
「神獣は聖女を守る存在だ。一度だけ……。命を燃やすことで、全てを解決する力を放つことができる。今の場合ならその力を使えば、四人は絶命して、人々は解放されるよ」
「そんなっ……。いけません。自ら命を絶つなど」
「そう言うと思ったよ。だから二つ目。こっちがオススメだね」
剣を躱し、高い位置に登ったところで、ガルウは言いました。
「……逃げるんだよ」
「逃げる……? まだ少女も残されているのに?」
「よく考えてくれメノン。彼らの目的は……。君を生け捕りにすることだろう? 少女を殺したって、何のメリットも無いさ。むしろ囮として使うくらいの知能はあるわけだから、そのまま残しておく可能性の方が高い」
確かに、ガルウの言う通りです……。
今ならまだ、全力を出せば、この場から逃げることができます。
……それしか、ないでしょう。
「……わかりました。一旦逃げましょう」
「よし、じゃあ乗って」
ガルウが獣の姿に戻りました。
「おおおおいい!!!! 逃げるのかよぉお!!!!」
不気味な声を上げながら、巨人が猛スピードで追ってきましたが、ガルウの方が早いです。
なんとか逃げ出し……。鉱山を後にしました。
◇
そのまま街を出て、ここまでは追ってこないだろうというところまで逃げました。
獣の状態のガルウにもたれかかって、私は呼吸を整えます。
しかし、ガルウはどうやら平気なようです……。
鼻で、私の頭を撫でてくれます。
「メノン。何もこれは、ただの逃げじゃない」
「……そうでしょうか」
「僕がまた、作戦を考えたに決まってるだろ?」
獣の姿の円らな瞳は、見ているだけで吸い込まれてしまいそうです。
人間の姿のガルウもかっこいいですが……。
獣の姿は、より包容力のようなものを感じます。
私はガルウの温かい体に甘えながら、その毛並みを肌で感じます。
そして、尋ねました。
「どんな作戦ですか?」
「ズバリ……。共食い作戦だよ」
「当たり前だ! お前たちだって二人組じゃないか! ナンバーフォーを二人で倒すなんてズルいぞ!」
「そうだそうだ!」
……なんだかやかましい連中です。
しかし、四人同時となると、何をしてくるかわかりません。警戒を――。
突然、地響きが鳴り始めました。
ナンバーフォーの爆発魔法とは違います。
まるで……。何かが地面からせりあがってくるような振動。
そして……。
大きな丸い物体が、四人の足元から現れました。
四人はその上に乗り、私たちを見降ろします。
「どうだ! これが我々の作った人球だ!」
「人球……?」
「読んで字の如く。人の球よ……。ここにいた奴隷たちの魂を集めて作ったの」
「そんな……」
「なるほど。メノン。彼らの言っていることは本当らしいよ」
ふざけた連中だと思っていましたが……。なかなか極悪非道なことをします。
「だけど、まだ死んだわけじゃないみたいだ。四人を浄化してしまえば、元の人間の姿に戻れそうだよ」
「おい! 何をごちゃごちゃ言ってんだ!」
「……ナイン。うるさい」
「痛っ! おいセブン! 何も叩くことねぇだろ!?」
「やめなさいよあなたたち……。無駄に騒ぐと、私たちが雑魚だと思われてしまうわ。ねぇシックス。さっさと始めましょう?」
「そうだな……」
四人が、肩を組んだ。
そして、何やら呪文のようなものを呟き始める。
すると、徐々に四人の体が大きくなり……。
さらに、変形を始めた。
まず、ナンバーナインが、人の足のような形に変形し、二つに分かれた。
次に、ナンバーエイトが腕、ナンバセブンが首……。
最後、ナンバーシックスは剣に変形したのだ。
そこから、それぞれが人球と合体し……。
巨人のようなモンスターが完成した。
「驚いたな……。彼らの魔法は、四人で一つの存在になることなんだ」
聞いたことがありません。かなり特殊な魔法です。
しかし、驚いている場合ではないでしょう。
「ガルウ、どうすれば……」
「そうだねぇ……。人の魂を傷つけるわけにもいかないし」
そうなると、手出しができません。
巨人が、剣を振り回し、こちらに向かってきました。
強烈な一撃が、地面に向かって放たれます。
大きな穴が空きました。これをまともにくらえば……。間違いなく死んでしまうでしょう。
「がっはっは! 大人しく降参するんだな!」
四人の声が混ざり合っています。非常に不気味です。
「ガルウ。手足を攻撃するのはどうでしょうか。そこであれば、人の魂は関係ないはずです」
「いや、マズいね。おそらく感覚を共有しているはず。彼らは魔導士だから、それなりのダメージには耐えらえるだろうけど、ここで働かされていた人は……。子供もいるだろうし、そうはいかない」
「では、どうすれば……」
ガルウと話している間にも、次々と攻撃が飛んできます。
避けることはできますが……。私たちの体力は無限ではありません。
それと比べ巨人は、徐々に体の動かしかたになれてきたのか、どんどん速度を速めていきます。
「僕に二つ、この状況を打開する作戦があるよ」
「教えてください」
「一つ目。自爆」
「は?」
ガルウは真剣な表情をしています。
どうやら冗談を言ったわけではないようです。
「神獣は聖女を守る存在だ。一度だけ……。命を燃やすことで、全てを解決する力を放つことができる。今の場合ならその力を使えば、四人は絶命して、人々は解放されるよ」
「そんなっ……。いけません。自ら命を絶つなど」
「そう言うと思ったよ。だから二つ目。こっちがオススメだね」
剣を躱し、高い位置に登ったところで、ガルウは言いました。
「……逃げるんだよ」
「逃げる……? まだ少女も残されているのに?」
「よく考えてくれメノン。彼らの目的は……。君を生け捕りにすることだろう? 少女を殺したって、何のメリットも無いさ。むしろ囮として使うくらいの知能はあるわけだから、そのまま残しておく可能性の方が高い」
確かに、ガルウの言う通りです……。
今ならまだ、全力を出せば、この場から逃げることができます。
……それしか、ないでしょう。
「……わかりました。一旦逃げましょう」
「よし、じゃあ乗って」
ガルウが獣の姿に戻りました。
「おおおおいい!!!! 逃げるのかよぉお!!!!」
不気味な声を上げながら、巨人が猛スピードで追ってきましたが、ガルウの方が早いです。
なんとか逃げ出し……。鉱山を後にしました。
◇
そのまま街を出て、ここまでは追ってこないだろうというところまで逃げました。
獣の状態のガルウにもたれかかって、私は呼吸を整えます。
しかし、ガルウはどうやら平気なようです……。
鼻で、私の頭を撫でてくれます。
「メノン。何もこれは、ただの逃げじゃない」
「……そうでしょうか」
「僕がまた、作戦を考えたに決まってるだろ?」
獣の姿の円らな瞳は、見ているだけで吸い込まれてしまいそうです。
人間の姿のガルウもかっこいいですが……。
獣の姿は、より包容力のようなものを感じます。
私はガルウの温かい体に甘えながら、その毛並みを肌で感じます。
そして、尋ねました。
「どんな作戦ですか?」
「ズバリ……。共食い作戦だよ」
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