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なかったことに
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今日は、アイロに会いに行く。
人前で、あれだけ恥を晒して……。相当落ち込んでいるはずだ。
私への愛は残っているのか、それも確かめないといけない。
もし、改心して、カミーナのことを諦めるつもりがあるのなら、私にだって、フォローをする考えがある。
そういう意味でも、今日アイロと会うことは、かなり意味のある話だった。
「やぁ。よく来てくれたね」
……いつも通り。
三日ほど、公に姿を見せなかったから、どうかなと思ったけれど、特に痩せている様子も無い。
むしろ、何やらスッキリした表情をしているようにすら見える。
「座ってくれ。紅茶はどうする?」
「いらないわ。長い話をするつもりは無いの」
「そうかい……」
「……単刀直入に聞くわね。あなたが好きなのは、誰?」
「……なぜ、そんなことを聞くんだい?」
落ち着き払った様子で、アイロは言う。
なんだ、この余裕は……。一体、何を企んでいるのだろう。
「先日、劇で、カミーナに対しての愛を叫んでいたから」
「あれは、劇を見て、気分が盛り上がってしまったのさ」
「では、本心ではないと?」
「……そうだろうね」
そうだろうね?
なぜ、言い切れないのだろう。
「はっきりして。私たちは、婚約しているのよ?」
「ジュベリア。僕たちは、愛し合っているだろうか」
「少なくとも、あなたがおかしな行動をし始める前までは、一般的なカップルだったと思うわ」
「……僕は、君から愛を感じなかったよ」
「……は?」
なんてことだ。
ここまできて、開き直るつもりなの?
「だから、おかしくなったのかもしれない。カミーナへの愛を、叫んだのかもしれない。そして、これからも……。おかしなことを、するだろう」
……呆れた。
もうここでお別れにしよう。
「あのね、アイロ。あなたがカミーナと手紙を送り合っていたことを、私は知っていたの」
「えっ……」
アイロの顔が、一気に青ざめた。
「途中から、私が代わりに手紙を書いていたの。噛み合わなくなったのは、そのせいよ」
「……悪趣味だ」
「どっちが悪趣味なの? ……婚約者の妹と、浮気するだなんて」
「好きになってしまったら、しょうがないんだ」
「もう、私への愛は、残っていないのね」
「……そうだ」
アイロが、ゆっくりと立ち上がった。
「浮気は許されることではないが……。そんな僕を騙して、人前で恥をかかせたことも、十分罪になるんじゃないかい?」
信じられないセリフだった。
どこが真面目で誠実だ。
最低の男じゃないか。
「だったら、私を訴えてみればいいじゃない。どっちの味方が多いかなんて、言うまでもないわ」
「くそっ……。もう、出て行ってくれ!」
「あぁ出て行くわよ! このクソ男!」
「ク、クソ男……!?」
ドアを思いっきり閉めて、部屋を出てやった。
まさか、こんな最低な男だったなんて……。
近いうちに、さっさと婚約を無かったことにさせてもらおう。
人前で、あれだけ恥を晒して……。相当落ち込んでいるはずだ。
私への愛は残っているのか、それも確かめないといけない。
もし、改心して、カミーナのことを諦めるつもりがあるのなら、私にだって、フォローをする考えがある。
そういう意味でも、今日アイロと会うことは、かなり意味のある話だった。
「やぁ。よく来てくれたね」
……いつも通り。
三日ほど、公に姿を見せなかったから、どうかなと思ったけれど、特に痩せている様子も無い。
むしろ、何やらスッキリした表情をしているようにすら見える。
「座ってくれ。紅茶はどうする?」
「いらないわ。長い話をするつもりは無いの」
「そうかい……」
「……単刀直入に聞くわね。あなたが好きなのは、誰?」
「……なぜ、そんなことを聞くんだい?」
落ち着き払った様子で、アイロは言う。
なんだ、この余裕は……。一体、何を企んでいるのだろう。
「先日、劇で、カミーナに対しての愛を叫んでいたから」
「あれは、劇を見て、気分が盛り上がってしまったのさ」
「では、本心ではないと?」
「……そうだろうね」
そうだろうね?
なぜ、言い切れないのだろう。
「はっきりして。私たちは、婚約しているのよ?」
「ジュベリア。僕たちは、愛し合っているだろうか」
「少なくとも、あなたがおかしな行動をし始める前までは、一般的なカップルだったと思うわ」
「……僕は、君から愛を感じなかったよ」
「……は?」
なんてことだ。
ここまできて、開き直るつもりなの?
「だから、おかしくなったのかもしれない。カミーナへの愛を、叫んだのかもしれない。そして、これからも……。おかしなことを、するだろう」
……呆れた。
もうここでお別れにしよう。
「あのね、アイロ。あなたがカミーナと手紙を送り合っていたことを、私は知っていたの」
「えっ……」
アイロの顔が、一気に青ざめた。
「途中から、私が代わりに手紙を書いていたの。噛み合わなくなったのは、そのせいよ」
「……悪趣味だ」
「どっちが悪趣味なの? ……婚約者の妹と、浮気するだなんて」
「好きになってしまったら、しょうがないんだ」
「もう、私への愛は、残っていないのね」
「……そうだ」
アイロが、ゆっくりと立ち上がった。
「浮気は許されることではないが……。そんな僕を騙して、人前で恥をかかせたことも、十分罪になるんじゃないかい?」
信じられないセリフだった。
どこが真面目で誠実だ。
最低の男じゃないか。
「だったら、私を訴えてみればいいじゃない。どっちの味方が多いかなんて、言うまでもないわ」
「くそっ……。もう、出て行ってくれ!」
「あぁ出て行くわよ! このクソ男!」
「ク、クソ男……!?」
ドアを思いっきり閉めて、部屋を出てやった。
まさか、こんな最低な男だったなんて……。
近いうちに、さっさと婚約を無かったことにさせてもらおう。
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