婚約者が、私の妹と愛の文通をしていることを知ったので、懲らしめてやろうと思います。

冬吹せいら

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最低な婚約者

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【アイロ視点】

「何を考えておるのだ! 騎士が自ら負けを認めるなどとは!!!」
「どうしてもお腹が痛かったのです。お許しください。父上」

訓練会が終わってすぐ、父上に呼び出された。

怒るのも当然だ。あんなこと、騎士としてありえない。

それでも僕は……。カミーナとの愛を、確かめ合いたかった。

……これを機に、ジュベリアの方から、婚約を破棄してくれたらいいのにと思う。
そしたら、カミーナと正式に交際を始めることができるのに。

今のままでは、カミーナと二人で出かけることができない。

悶々とした日々を、送るだけ……。

「聞いておるのか!!!!」
「へ? なんでした?」
「全く……。もうよい。来年には結婚も控えておるのだ。振る舞いについては、よく考えるように。いいな?」
「わかりました」

ササッと頭を下げて、部屋に戻る。

カミーナから来た手紙を、改めて読み直した。

『アイロ様は、いつもかっこよくて、美しいお方なのですけれど……。私、たまには、アイロ様が負けてしまうところも見てみたいですわ。女性は、男性のそういう弱い部分に、ときめいてしまいますの。どうか、今度の訓練会、無様に負ける姿を、私に見せてくださらないかしら』

カミーナ……、愛おしい。

ジュベリアと違い、カミーナは、僕をワクワクさせてくれる。
もちろん、ジュベリアも美しい女性だが、普通の令嬢すぎるというか……。刺激が足りないのだ。

カミーナとの秘密の恋愛は、僕の人生を、明るく彩ってくれる。

特に、最近のカミーナは最高だ。

こうして、手紙を送り合うこともそうだし……。
わざと人前で負けるところが見たいだなんて、すごくマニアックで、いいじゃないか!

とにかく、カミーナのことを思うだけで、胸がドキドキする。

「カミーナ……、会いたいな」

なんとかして、二人きりで、会うことはできないだろうか。

僕はその思いを、手紙に乗せてみた。

とある作戦を思いついたのだ。

二人を、劇に招待して、途中で、僕とカミーナが時間をずらして抜ける。

そうすれば……。ジュベリアが劇を見ている間は、二人で過ごすことができる!

我ながら、完璧な作戦だ。

二人きりになることができたら、一緒に街に出て、人に見られるのも気にしないで、堂々と手を繋いで歩いて……。
噂になったら、それまでだと思う。

はっきり言って、もうジュベリアへの気持ちなんて、微塵も残ってない。
早く、カミーナと結ばれたいんだ。

この手紙がカミーナに渡るのが、楽しみだなぁ……。
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