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二十一時

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二十一時を告げる鐘が鳴りました。
そろそろ……、あの子が、お茶会から帰ってくるころです。

私はガリアを連れて、入り口で待っています。

しばらくして、馬車がやってきました。

メイドが、私たちにお辞儀をした後……。
馬車の中から……。我が娘、ルウナを降ろしました。

「ただいま戻りま――。って、お父様!?」
「ルウナ……」
「お久しぶりです! お父様!」

ルウナが、ガリアに抱き着きました。
だいたい、二人が顔を合わせるのは、一か月ぶりくらいでしょうか。

「会いたかったです! お父様、お仕事が忙しくて、なかなか帰って来てくれなかったから……」
「お仕事……」

ガリアが、私の方を見ました。
……そりゃあ、他の女のところへ行ったり、娼婦の館に行ったりしてるだなんてこと、言えるわけないでしょうに。

「家族のために働いてくれるお父様が、ルウナは大好きですよ!」
「……」

ボロボロと、ガリアが泣き始めました。
この時間の制裁は……。

もはや、言うまでもないですね。
今の彼なら、自分で実行できるでしょう。

「お、お父様? どこか痛いのですか?」
「違うんだ……。ルウナ」
「どうされたのですか?」

純粋な目で、首を傾げて、ガリアに尋ねるルウナ。
その顔を見て、とうとうガリアの涙は、止まらなくなりました。

「ごめんっ……。ごめんよ! ルウナ!」
「え、えぇ?」

困惑した様子で、ルウナが私を見ます。
しかし、私は目を逸らしました。

「お父様、泣かないでください。何があったのですか?」
「僕は……。僕は、アリシュラと、ルウナを裏切ったんだ」
「お母様と、私を……?」
「毎日、娼婦の館に行って、お酒を飲んで……。仕事は、昼にしかしていなかった。その時も、町娘にちょっかいを……」
「……」
「ルウナ。本当にごめん。僕は……。父親失格だ」

ルウナは、何が何だか、わかっていない様子です。
まだ、六歳だから……。理解できないこともあるでしょう。

「ルウナ。ガリアは……。あなたに、嘘をついていたのですよ」
「嘘……?」
「そう。酷い嘘。だけど、ようやく前に進み始めたのです」
「……お父様。嘘ついてたの?」
「ごめんよ……。本当にごめん」
「……」

泣きじゃくるガリアに抱きしめられて、ルウナやはり、戸惑っています。
それでも……、優しくガリアの背中を、撫でてあげてくれました。

「泣かないで……。お父様。大丈夫。ルウナは、お父様の味方です」
「うううぅう……」
「お母様も、そうでしょう?」
「……そうですね」

そう、ありたいとは思う。
だから、もう少しだけ、制裁は続けよう。
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