8 / 12
謝罪
しおりを挟む
訓練場の中でも一番大きな、第四訓練場。
まるでコロッセオのような作りになっており……。席は、学園の生徒で埋まっている。
「ルールを説明しよう。物理的な攻撃は禁止。魔力を使った攻撃であるなら、何をしても良い。相手に、参ったと言わせた方の勝ちだ。以上」
学長の説明を聞いた後、マオラが首を回した。
「……降参するなら今の内よ?」
そして、私に対し、挑発的な視線をぶつけてくる。
私も負けじと、マオラを睨みつけた。
もう、あの時の私ではない。
きっと勝てる……。そんな期待は、時間が経つごとに、大きくなっていた。
「それはこっちのセリフだよ。私は負けて、退学になっても構わないけど……。マオラは困るでしょ?」
「負けないわよ。誰が言ってんの」
「……参った。だけじゃ、許さないから。ごめんなさい。許してください。今まであなたが私に言わせた、屈辱的な言葉――。全部言わせてやる」
「良い度胸ね……。もういいわ。始めましょう?」
マオラが、手のひらを私に向けた。
「エリオーブレイズ!!!」
そして、詠唱をすることもなく、火の塊をこちらに放ってきた!
私は即座に、その火が消える映像を思い浮かべた。すると、
「な、なんですって……?」
一瞬にして、火が煙に変わった。
マオラはさすがに、少し驚いた様子だったが、それならばと、今度は両手のひらを私に向ける。
「凍てつく刃よ! 我が怒りを切っ先に宿し……切り裂け! ガルフレッドブリザード!!!」
大きな氷の刃が、マオラの頭上に現れ……。私に向かって、振り落とされた。
私はその刃が、溶ける絵を思い浮かべる。
「……嘘でしょ?」
氷が解け、水になり、私たちに降りかかった。
その水をはじくイメージ。濡れたのはマオラだけだ。
「嘘よ。こんなの……。今のは本気だった」
「次は、こっちからいくよ」
「ひっ……」
……さて、どうしてやろうか。
やり返したいことは、たくさんある。
だけど、どうせなら、一番最近やられたことから、順番にしていった方がいいだろうか。
マオラに……。腹を蹴られ、唾をかけられた。それがきっかけとなって、私は退学を決意したのだ。
閃いた私は……。マオラの腹部に、痛みを与えるイメージをした。うまくいくかはわからないけど。
「っ!?」
すぐに、マオラがお腹を押さえ、苦しみ出した。どうやら成功したみたいだ。
「がっ……。あ、あなた、なにを」
私はさらに痛みを足した。
「うああああ!!!!! 痛い!!! 死ぬぅ!」
さすがにやりすぎてしまったようだ。
イメージすることをやめ、私はマオラを見降ろした。
まだ痛みが引かないようで、必死に油汗をかきながら、それでも私を睨みつけている。
「お前えぇえええ……。絶対許さないからぁ……」
「他にも色々してくれたよね? 髪の毛引っ張ったり」
「ひぎぃ!!」
髪を思いっきり引っ張るイメージをしたら、強すぎたみたいで、かなりの本数が抜けてしまった。
「痛あぁい!!!」
「あとは……。なんだろう」
「ま、参りました! もう無理ぃ!」
「ごめんなさいは?」
「なんですってぇ……? 言うわけないでしょ!」
……そう言えば、ペンチで歯を抜かれたこともあったなぁ。
すぐに保健室で治癒魔法をかけてもらって、元に戻してもらったけど、あれは痛かった。
とりあえず、前歯を一本、抜いてみた。
「ぎゃああああ!!!!!」
断末魔の叫び声が、訓練場に響く。
何人かの生徒の悲鳴が聞こえた。
「痛い! 痛いよぉ……! ママぁ……」
「ママに助けを求める前に、目の前の私に、謝ったらどうなの?」
「うぅうう……」
「次は奥歯、全部抜こうか?」
「ごめんなしゃい! 私が悪かったです!」
「許してください。ケイト様」
「許してください!!! ケイト様!」
「よ~し。よく言えましたっ」
私はマオラに、思いっきり唾を吐いてやった。
「そこまで! ただいまの勝負……。ケイト・ブロッサムの勝ち!」
まばらな拍手。
そして、ざわめき。
……ちょっと、やりすぎてしまったかもしれない。
まるでコロッセオのような作りになっており……。席は、学園の生徒で埋まっている。
「ルールを説明しよう。物理的な攻撃は禁止。魔力を使った攻撃であるなら、何をしても良い。相手に、参ったと言わせた方の勝ちだ。以上」
学長の説明を聞いた後、マオラが首を回した。
「……降参するなら今の内よ?」
そして、私に対し、挑発的な視線をぶつけてくる。
私も負けじと、マオラを睨みつけた。
もう、あの時の私ではない。
きっと勝てる……。そんな期待は、時間が経つごとに、大きくなっていた。
「それはこっちのセリフだよ。私は負けて、退学になっても構わないけど……。マオラは困るでしょ?」
「負けないわよ。誰が言ってんの」
「……参った。だけじゃ、許さないから。ごめんなさい。許してください。今まであなたが私に言わせた、屈辱的な言葉――。全部言わせてやる」
「良い度胸ね……。もういいわ。始めましょう?」
マオラが、手のひらを私に向けた。
「エリオーブレイズ!!!」
そして、詠唱をすることもなく、火の塊をこちらに放ってきた!
私は即座に、その火が消える映像を思い浮かべた。すると、
「な、なんですって……?」
一瞬にして、火が煙に変わった。
マオラはさすがに、少し驚いた様子だったが、それならばと、今度は両手のひらを私に向ける。
「凍てつく刃よ! 我が怒りを切っ先に宿し……切り裂け! ガルフレッドブリザード!!!」
大きな氷の刃が、マオラの頭上に現れ……。私に向かって、振り落とされた。
私はその刃が、溶ける絵を思い浮かべる。
「……嘘でしょ?」
氷が解け、水になり、私たちに降りかかった。
その水をはじくイメージ。濡れたのはマオラだけだ。
「嘘よ。こんなの……。今のは本気だった」
「次は、こっちからいくよ」
「ひっ……」
……さて、どうしてやろうか。
やり返したいことは、たくさんある。
だけど、どうせなら、一番最近やられたことから、順番にしていった方がいいだろうか。
マオラに……。腹を蹴られ、唾をかけられた。それがきっかけとなって、私は退学を決意したのだ。
閃いた私は……。マオラの腹部に、痛みを与えるイメージをした。うまくいくかはわからないけど。
「っ!?」
すぐに、マオラがお腹を押さえ、苦しみ出した。どうやら成功したみたいだ。
「がっ……。あ、あなた、なにを」
私はさらに痛みを足した。
「うああああ!!!!! 痛い!!! 死ぬぅ!」
さすがにやりすぎてしまったようだ。
イメージすることをやめ、私はマオラを見降ろした。
まだ痛みが引かないようで、必死に油汗をかきながら、それでも私を睨みつけている。
「お前えぇえええ……。絶対許さないからぁ……」
「他にも色々してくれたよね? 髪の毛引っ張ったり」
「ひぎぃ!!」
髪を思いっきり引っ張るイメージをしたら、強すぎたみたいで、かなりの本数が抜けてしまった。
「痛あぁい!!!」
「あとは……。なんだろう」
「ま、参りました! もう無理ぃ!」
「ごめんなさいは?」
「なんですってぇ……? 言うわけないでしょ!」
……そう言えば、ペンチで歯を抜かれたこともあったなぁ。
すぐに保健室で治癒魔法をかけてもらって、元に戻してもらったけど、あれは痛かった。
とりあえず、前歯を一本、抜いてみた。
「ぎゃああああ!!!!!」
断末魔の叫び声が、訓練場に響く。
何人かの生徒の悲鳴が聞こえた。
「痛い! 痛いよぉ……! ママぁ……」
「ママに助けを求める前に、目の前の私に、謝ったらどうなの?」
「うぅうう……」
「次は奥歯、全部抜こうか?」
「ごめんなしゃい! 私が悪かったです!」
「許してください。ケイト様」
「許してください!!! ケイト様!」
「よ~し。よく言えましたっ」
私はマオラに、思いっきり唾を吐いてやった。
「そこまで! ただいまの勝負……。ケイト・ブロッサムの勝ち!」
まばらな拍手。
そして、ざわめき。
……ちょっと、やりすぎてしまったかもしれない。
18
お気に入りに追加
2,326
あなたにおすすめの小説

「平民が聖女になれただけでも感謝しろ」とやりがい搾取されたのでやめることにします。
木山楽斗
恋愛
平民であるフェルーナは、類稀なる魔法使いとしての才を持っており、聖女に就任することになった。
しかしそんな彼女に待っていたのは、冷遇の日々だった。平民が聖女になることを許せない者達によって、彼女は虐げられていたのだ。
さらにフェルーナには、本来聖女が受け取るはずの報酬がほとんど与えられていなかった。
聖女としての忙しさと責任に見合わないような給与には、流石のフェルーナも抗議せざるを得なかった。
しかし抗議に対しては、「平民が聖女になれただけでも感謝しろ」といった心無い言葉が返ってくるだけだった。
それを受けて、フェルーナは聖女をやめることにした。元々歓迎されていなかった彼女を止める者はおらず、それは受け入れられたのだった。
だがその後、王国は大きく傾くことになった。
フェルーナが優秀な聖女であったため、その代わりが務まる者はいなかったのだ。
さらにはフェルーナへの仕打ちも流出して、結果として多くの国民から反感を招く状況になっていた。
これを重く見た王族達は、フェルーナに再び聖女に就任するように頼み込んだ。
しかしフェルーナは、それを受け入れなかった。これまでひどい仕打ちをしてきた者達を助ける気には、ならなかったのである。

国護りの力を持っていましたが、王子は私を嫌っているみたいです
四季
恋愛
南から逃げてきたアネイシアは、『国護りの力』と呼ばれている特殊な力が宿っていると告げられ、丁重にもてなされることとなる。そして、国王が決めた相手である王子ザルベーと婚約したのだが、国王が亡くなってしまって……。

義妹が聖女を引き継ぎましたが無理だと思います
成行任世
恋愛
稀少な聖属性を持つ義妹が聖女の役も婚約者も引き継ぐ(奪う)というので聖女の祈りを義妹に託したら王都が壊滅の危機だそうですが、私はもう聖女ではないので知りません。

【完結】小国の王太子に捨てられたけど、大国の王太子に溺愛されています。え?私って聖女なの?
如月ぐるぐる
恋愛
王太子との婚約を一方的に破棄され、王太子は伯爵令嬢マーテリーと婚約してしまう。
留学から帰ってきたマーテリーはすっかりあか抜けており、王太子はマーテリーに夢中。
政略結婚と割り切っていたが納得いかず、必死に説得するも、ありもしない罪をかぶせられ国外追放になる。
家族にも見捨てられ、頼れる人が居ない。
「こんな国、もう知らない!」
そんなある日、とある街で子供が怪我をしたため、術を使って治療を施す。
アトリアは弱いながらも治癒の力がある。
子供の怪我の治癒をした時、ある男性に目撃されて旅に付いて来てしまう。
それ以降も街で見かけた体調の悪い人を治癒の力で回復したが、気が付くとさっきの男性がずっとそばに付いて来る。
「ぜひ我が国へ来てほしい」
男性から誘いを受け、行く当てもないため付いて行く。が、着いた先は祖国ヴァルプールとは比較にならない大国メジェンヌ……の王城。
「……ん!?」

やんちゃな公爵令嬢の駆け引き~不倫現場を目撃して~
岡暁舟
恋愛
名門公爵家の出身トスカーナと婚約することになった令嬢のエリザベート・キンダリーは、ある日トスカーナの不倫現場を目撃してしまう。怒り狂ったキンダリーはトスカーナに復讐をする?
偽聖女の汚名を着せられ婚約破棄された元聖女ですが、『結界魔法』がことのほか便利なので魔獣の森でもふもふスローライフ始めます!
南田 此仁
恋愛
「システィーナ、今この場をもっておまえとの婚約を破棄する!」
パーティー会場で高らかに上がった声は、数瞬前まで婚約者だった王太子のもの。
王太子は続けて言う。
システィーナの妹こそが本物の聖女であり、システィーナは聖女を騙った罪人であると。
突然婚約者と聖女の肩書きを失ったシスティーナは、国外追放を言い渡されて故郷をも失うこととなった。
馬車も従者もなく、ただ一人自分を信じてついてきてくれた護衛騎士のダーナンとともに馬に乗って城を出る。
目指すは西の隣国。
八日間の旅を経て、国境の門を出た。しかし国外に出てもなお、見届け人たちは後をついてくる。
魔獣の森を迂回しようと進路を変えた瞬間。ついに彼らは剣を手に、こちらへと向かってきた。
「まずいな、このままじゃ追いつかれる……!」
多勢に無勢。
窮地のシスティーナは叫ぶ。
「魔獣の森に入って! 私の考えが正しければ、たぶん大丈夫だから!」
■この三連休で完結します。14000文字程度の短編です。

聖女を騙って処刑されたと言われている私ですが、実は隣国で幸せに暮らしています。
木山楽斗
恋愛
聖女エルトナは、彼女を疎む王女の策略によって捕まっていた。
牢屋の前でやって来た王女は、エルトナのことを嘲笑った。王女にとって、平民の聖女はとても気に食わない者だったのだ。
しかしエルトナは、そこで牢屋から抜け出した。類稀なる魔法の才能を有していた彼女にとって、拘束など意味がないものだったのだ。
エルトナのことを怖がった王女は、気絶してしまった。
その隙にエルトナは、国を抜け出して、隣国に移ったのである。
王国は失態を隠すために、エルトナは処刑されたと喧伝していた。
だが、実際は違った。エルトナは隣国において、悠々自適に暮らしているのである。

【完結済】どうして無能な私を愛してくれるの?~双子の妹に全て劣り、婚約者を奪われた男爵令嬢は、侯爵子息様に溺愛される~
ゆうき
恋愛
優秀な双子の妹の足元にも及ばない男爵令嬢のアメリアは、屋敷ではいない者として扱われ、話しかけてくる数少ない人間である妹には馬鹿にされ、母には早く出て行けと怒鳴られ、学園ではいじめられて生活していた。
長年に渡って酷い仕打ちを受けていたアメリアには、侯爵子息の婚約者がいたが、妹に奪われて婚約破棄をされてしまい、一人ぼっちになってしまっていた。
心が冷え切ったアメリアは、今の生活を受け入れてしまっていた。
そんな彼女には魔法薬師になりたいという目標があり、虐げられながらも勉強を頑張る毎日を送っていた。
そんな彼女のクラスに、一人の侯爵子息が転校してきた。
レオと名乗った男子生徒は、何故かアメリアを気にかけて、アメリアに積極的に話しかけてくるようになった。
毎日のように話しかけられるようになるアメリア。その溺愛っぷりにアメリアは戸惑い、少々困っていたが、段々と自分で気づかないうちに、彼の優しさに惹かれていく。
レオと一緒にいるようになり、次第に打ち解けて心を許すアメリアは、レオと親密な関係になっていくが、アメリアを馬鹿にしている妹と、その友人がそれを許すはずもなく――
これは男爵令嬢であるアメリアが、とある秘密を抱える侯爵子息と幸せになるまでの物語。
※こちらの作品はなろう様にも投稿しております!3/8に女性ホットランキング二位になりました。読んでくださった方々、ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる