無能と罵られた私だけど、どうやら聖女だったらしい。

冬吹せいら

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マオラの嘘

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学長室に入るのは、二回目だった。

一回目は……。退学届けを提出した時だ。

「入りなさい」

アルビナ先生がドアをノックすると、中から野太い声が聞こえた。
中に入ると、モンドール学長が、腕を組み、立っていた。
髭を蓄えた、白髪の……。まさに、賢者と呼ぶにふさわしい容姿をしている。

「あの、さっきアルビナ先生が、退学届けが受理されてないって」
「その話は後だ。とりあえず、これからすべきことと――。そして、これまでの件についての、謝罪をさせてくれ」
「……謝罪?」
「君が退学届けを提出しに来たとき、理由を教えてくれなかったことを、不審に思ったんだ。それで、独自に色々調べさせてもらったら……。どうやら君は、マオラから、虐めを受けていたそうだね。どうしてそれを言わなかったんだ」
「……だって、この学園は、フリージオ家から、多額の寄付を受け取っているから」
「そんな話、誰が言っていたんだい?」
「……え?」

私は思い出してみた。

「……マオラ本人です」

そうだ。
直接的な額を聞いたわけでもないし、教師人からそういう発言があったわけでもない。

「そんな事実は無い。確かにフリージオ家は名門だが……。虐めは別問題だ」
「でも、私はここに戻るつもりはありません。ちょっと忘れ物を取りに戻っただけです」
「……話だけでも聞いてくれ」
「……はい」
「君はどうやら、聖女に目覚めたそうだね」
「どうしてわかったんですか?」
「門に設置されている装置のデータは、ここまで送られてくるんだ。君は何らかの方法によって、聖女となった。その影響で、魔力が膨大に拡大している……。そうとしか考えられない数字だ。確か君は、光属性だろう? 稀にこういうことがあるんだよ」
「でも、私は相変わらず、低級魔法しか使えません。魔力が高まってるとは思えないです」

モンドール学長は、首を横に振った。

「祈りにも、魔力が必用なんだよ。その源が解放され、君は膨大な魔力を得たということさ」

そんなことが……。

「君にはぜひ、学園に戻ってもらいたい。きっと将来、王都を守る立派な聖女になれるだろう」
「ですが、魔法を使うわけでもないのに……」
「生徒としてではなく、講師としてだ。光属性を操る生徒は、ごくわずかだが存在する。特別クラスを新設し、そこで君を」
「ま、待ってください! 話が大きすぎます!」
「だから、君の両親を呼んだんだ」

……頭の中が、ぐちゃぐちゃだ。
人生の速度が、急に早まったみたいに感じる。

そんな時、急にドアが開かれ、マオラが現れた。
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