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忘れ物
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作物が大量に収穫できたので、村でパーティーを行うことになった。
壇上に立たされて、私は顔が真っ赤になる。
自分には縁の無い景色だと思ってた。みんなの笑顔が見える。
「それじゃあ! ケイトおかえりパーティと、ケイトなんかよくわかんない力に目覚めましたパーティ! 始めていこうと思います! みんな! 麦酒は持ったか!?」
バトラーの呼びかけに、村のみんなが大きな声で応えた。
「よ~し! じゃあケイト! 乾杯の挨拶だ!」
「え、わ、私!?」
「そりゃそうだろ! 誰のパ―ティだ?」
バトラーがウィンクしながら、微笑んだ。昔と変わらないその笑顔。バトラーとは、この村にいたころ、よく遊んでいたのだ。
今ではすっかり成長したというか……。
「おーいケイト! いつまでバトラーに見惚れてんだよ!」
「そうよケイト! 早くお酒飲ませなさ~い!」
「は、はい!」
からかわれてしまった……。バトラーも照れくさそうに頭を掻いてる。司会なんだから、こういう時に助けてよ!
「じゃ、じゃあみんな、その……。今日は、集まってくれて、ありがとう。私、あの、なんもできないけど、ちょっとでもみんなの支えになれたらなって思う。だから……。あ、えっとえっと……。か、かんぱ~い!」
なんじゃそりゃ! なんて声があちらこちらから上がったけど、みんなもう麦酒を飲みたくて仕方ないらしく、パーティは無事始まってくれた。
「……ふぅ」
「お疲れケイト。顔が真っ赤だったぜ?」
「もう。乾杯もバトラーがそのままやってくれれば良かったのに」
「いやいやぁ。主役はケイト様ですから?」
「ちょっと、からかってるの?」
「からかってま~す! へへっ。逃げろ~」
「待ちなさい!」
バトラーを追いかけたり、かつての友人とお話したり……。村人全員と会話して……。楽しいパーティだ。
しばらくして、酔っぱらってしまった人たちがそこら中で寝始めてしまったので、それを家まで送り届ける作業が始まった。
……私の一家は、みんなお酒が飲めない。だから、この作業の中核を担うことになってしまった。
「はぁ……。倒れるまで飲むなよなぁ」
「うぃいいじゃねぇかよぉ。娘が帰って来てぇ。うらやましいぜええ」
お父さんがため息をついた。お母さんと二人で、酔っぱらいに肩を貸している。
「ケイト。こっちはみんな帰らせたぞ」
「うん。ありがとうバトラー。こっちもこれで全員」
「……みんなさ、ケイトが帰って来て、嬉しいんだよ。あんまり悪く思わないでやってくれ」
「わかってるよ。私もすごく嬉しい。こんなに祝福されたのは、初めてだから」
「うん……。本当に良かった」
バトラーの目線が、なんだか熱を帯びているような気がした。
「……ケイト、すごく美人になったよな」
「……そう?」
「正直、近くにいるだけで、ドキドキする」
「バトラー……」
……実を言うと、私もそうだ。
バトラーは、男の子らしく、がっちりとした体形で、とてもかっこいい。
学園では、全く持って異性との交遊関係なんかなかった私。
バトラーほどのイケメンと、こうして近い距離で会話できるなんて……。
「あっ。そうだ」
「どうした?」
「えっと……。ううん。なんでもない」
「なんだよ」
「内緒。今日はありがとうね?」
「あっ、おい」
私は急いで家に帰った。
学園の授業で作った、魔法指輪。それをバトラーに渡そうと思い立ったのだ。
結婚は、まだ早いと思うけど、気持ちを伝えるためには、十分効果のある贈り物だと思う。
家に帰り、カバンを漁るが……。
――見つからない。
「まさか、忘れてきた?」
慌ただしく退寮したから、その可能性は十分にある。
もう一度作ればいいんだけど……。あれは私が初めて、魔法で作ったアイテムなのだ。
思い出があるし、だからこそバトラーに渡したいと思った。
……行くの?あんな学園に、また?
すごく嫌だ。それなのに、一度指輪のことを思うと、気持ちが抑えられなくなってしまったのだ。
私は、荷づくりを始めた。
壇上に立たされて、私は顔が真っ赤になる。
自分には縁の無い景色だと思ってた。みんなの笑顔が見える。
「それじゃあ! ケイトおかえりパーティと、ケイトなんかよくわかんない力に目覚めましたパーティ! 始めていこうと思います! みんな! 麦酒は持ったか!?」
バトラーの呼びかけに、村のみんなが大きな声で応えた。
「よ~し! じゃあケイト! 乾杯の挨拶だ!」
「え、わ、私!?」
「そりゃそうだろ! 誰のパ―ティだ?」
バトラーがウィンクしながら、微笑んだ。昔と変わらないその笑顔。バトラーとは、この村にいたころ、よく遊んでいたのだ。
今ではすっかり成長したというか……。
「おーいケイト! いつまでバトラーに見惚れてんだよ!」
「そうよケイト! 早くお酒飲ませなさ~い!」
「は、はい!」
からかわれてしまった……。バトラーも照れくさそうに頭を掻いてる。司会なんだから、こういう時に助けてよ!
「じゃ、じゃあみんな、その……。今日は、集まってくれて、ありがとう。私、あの、なんもできないけど、ちょっとでもみんなの支えになれたらなって思う。だから……。あ、えっとえっと……。か、かんぱ~い!」
なんじゃそりゃ! なんて声があちらこちらから上がったけど、みんなもう麦酒を飲みたくて仕方ないらしく、パーティは無事始まってくれた。
「……ふぅ」
「お疲れケイト。顔が真っ赤だったぜ?」
「もう。乾杯もバトラーがそのままやってくれれば良かったのに」
「いやいやぁ。主役はケイト様ですから?」
「ちょっと、からかってるの?」
「からかってま~す! へへっ。逃げろ~」
「待ちなさい!」
バトラーを追いかけたり、かつての友人とお話したり……。村人全員と会話して……。楽しいパーティだ。
しばらくして、酔っぱらってしまった人たちがそこら中で寝始めてしまったので、それを家まで送り届ける作業が始まった。
……私の一家は、みんなお酒が飲めない。だから、この作業の中核を担うことになってしまった。
「はぁ……。倒れるまで飲むなよなぁ」
「うぃいいじゃねぇかよぉ。娘が帰って来てぇ。うらやましいぜええ」
お父さんがため息をついた。お母さんと二人で、酔っぱらいに肩を貸している。
「ケイト。こっちはみんな帰らせたぞ」
「うん。ありがとうバトラー。こっちもこれで全員」
「……みんなさ、ケイトが帰って来て、嬉しいんだよ。あんまり悪く思わないでやってくれ」
「わかってるよ。私もすごく嬉しい。こんなに祝福されたのは、初めてだから」
「うん……。本当に良かった」
バトラーの目線が、なんだか熱を帯びているような気がした。
「……ケイト、すごく美人になったよな」
「……そう?」
「正直、近くにいるだけで、ドキドキする」
「バトラー……」
……実を言うと、私もそうだ。
バトラーは、男の子らしく、がっちりとした体形で、とてもかっこいい。
学園では、全く持って異性との交遊関係なんかなかった私。
バトラーほどのイケメンと、こうして近い距離で会話できるなんて……。
「あっ。そうだ」
「どうした?」
「えっと……。ううん。なんでもない」
「なんだよ」
「内緒。今日はありがとうね?」
「あっ、おい」
私は急いで家に帰った。
学園の授業で作った、魔法指輪。それをバトラーに渡そうと思い立ったのだ。
結婚は、まだ早いと思うけど、気持ちを伝えるためには、十分効果のある贈り物だと思う。
家に帰り、カバンを漁るが……。
――見つからない。
「まさか、忘れてきた?」
慌ただしく退寮したから、その可能性は十分にある。
もう一度作ればいいんだけど……。あれは私が初めて、魔法で作ったアイテムなのだ。
思い出があるし、だからこそバトラーに渡したいと思った。
……行くの?あんな学園に、また?
すごく嫌だ。それなのに、一度指輪のことを思うと、気持ちが抑えられなくなってしまったのだ。
私は、荷づくりを始めた。
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