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退学
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「ケイト……。後で補修ね」
「……すいません」
アルビナ先生のため息が、教室に響いた。
クスクスと笑う声が聞こえる。恥ずかしい……。私は顔を覆った。
「せんせ~い。ケイトなんかに付きあってたら、授業が遅れちゃうじゃないですか~。もうほっといて、先に進みましょう?」
マオラが大きな声でそう言うと、クラス中から賛同の声が上がった。
このクラスに私の味方はいない。みんなマオラの言いなりだ。
マオラは、名門フリージオ家の一人娘。王族との婚約が決まってるなんて噂もある、赤色の髪が綺麗な美少女だ。
ここ、ホークマス魔法学園の首席にして、歴代最高の生徒と呼ばれている秀才。そんな彼女だけど、性格は最悪だ。人目の付かないところでは、私を虐め、嘲笑う。
授業が終わり、私はすぐに、マオラとその仲間数人に呼び出され、馬小屋に連れていかれた。
「あんたねぇ! トロ臭いのよ!」
「うっ……」
お腹を思いっきり殴られ、激痛が走る。
蹲った私を見て、取り巻きの女子が笑った。
「マオラ! もっとやっちゃいなよ!」
「そうそう! 授業を妨害した悪い生徒には、お仕置しないとね!」
「もう。みんな落ち着きなさい? どうせケイトは、これから何度だってミスをするわ。毎回ボコボコにしてたら、死んじゃうもの。ねぇ?」
髪を思いっきり引っ張られ、無理矢理顔を上げさせられた。
「……なによ。その反抗的な目。殺されたいの?」
「っ……」
頬を叩かれた。反抗的な目なんてしてない。涙が出るのをこらえていただけだ。
「ムカつくわね……。なんでこんな子が、光属性の使い手なのよ。ぺっ」
マオラの吐いた唾が、私の鼻にこべりついた。酷い匂いがする。こんな美少女でも、唾は臭い……。
「マオラならきっと、すぐに使えるようになるって! こんな雑魚でも使えるんだからさ!」
「そうそう! ていうかマジもったいないよね! なんであんたみたいなのが、光属性なのよ!」
魔法にはそれぞれ、属性がある。私は光属性で、これはかなり珍しい。
……だけど私は、未だに低級魔法しか使えなかった。もうすぐ卒業なのに。
「光属性の低級魔法ってさ、ちょっと部屋を明るくするくらいしかできないんでしょ? 本当間抜け!」
「まぁまぁ。その辺にしといてあげなさい? ねぇケイト。私たち友達だもの。こうやって言い合いになることもあるけど、卒業まで、仲良くしましょうね」
最後にもう一度唾を吐いて、マオラたちは去って行った。
彼女たちの姿が見えなくなったことを確認してから……。私は泣き始めた。
悔しい……。いじめを報告したくても、この学園は、フリージオ家から多額の寄付を受けているから、きっともみ消される。
もう、やめてしまおうか。
卒業まであと少しだから、耐えようとも思った。
だけど、このまま卒業したって、王都で仕事が貰えるわけもない。結局村に戻るだけだ。だったら……。今帰ったって、変わらないじゃないか。
……そうしよう。遅すぎたくらいだ。
虐めには屈しない。そんな思いが強すぎて、無駄な時間を過ごしてしまった。
今日にでも、荷物をまとめて、出発しよう。
私はお腹を押さえながら、立ち上がった。
「……すいません」
アルビナ先生のため息が、教室に響いた。
クスクスと笑う声が聞こえる。恥ずかしい……。私は顔を覆った。
「せんせ~い。ケイトなんかに付きあってたら、授業が遅れちゃうじゃないですか~。もうほっといて、先に進みましょう?」
マオラが大きな声でそう言うと、クラス中から賛同の声が上がった。
このクラスに私の味方はいない。みんなマオラの言いなりだ。
マオラは、名門フリージオ家の一人娘。王族との婚約が決まってるなんて噂もある、赤色の髪が綺麗な美少女だ。
ここ、ホークマス魔法学園の首席にして、歴代最高の生徒と呼ばれている秀才。そんな彼女だけど、性格は最悪だ。人目の付かないところでは、私を虐め、嘲笑う。
授業が終わり、私はすぐに、マオラとその仲間数人に呼び出され、馬小屋に連れていかれた。
「あんたねぇ! トロ臭いのよ!」
「うっ……」
お腹を思いっきり殴られ、激痛が走る。
蹲った私を見て、取り巻きの女子が笑った。
「マオラ! もっとやっちゃいなよ!」
「そうそう! 授業を妨害した悪い生徒には、お仕置しないとね!」
「もう。みんな落ち着きなさい? どうせケイトは、これから何度だってミスをするわ。毎回ボコボコにしてたら、死んじゃうもの。ねぇ?」
髪を思いっきり引っ張られ、無理矢理顔を上げさせられた。
「……なによ。その反抗的な目。殺されたいの?」
「っ……」
頬を叩かれた。反抗的な目なんてしてない。涙が出るのをこらえていただけだ。
「ムカつくわね……。なんでこんな子が、光属性の使い手なのよ。ぺっ」
マオラの吐いた唾が、私の鼻にこべりついた。酷い匂いがする。こんな美少女でも、唾は臭い……。
「マオラならきっと、すぐに使えるようになるって! こんな雑魚でも使えるんだからさ!」
「そうそう! ていうかマジもったいないよね! なんであんたみたいなのが、光属性なのよ!」
魔法にはそれぞれ、属性がある。私は光属性で、これはかなり珍しい。
……だけど私は、未だに低級魔法しか使えなかった。もうすぐ卒業なのに。
「光属性の低級魔法ってさ、ちょっと部屋を明るくするくらいしかできないんでしょ? 本当間抜け!」
「まぁまぁ。その辺にしといてあげなさい? ねぇケイト。私たち友達だもの。こうやって言い合いになることもあるけど、卒業まで、仲良くしましょうね」
最後にもう一度唾を吐いて、マオラたちは去って行った。
彼女たちの姿が見えなくなったことを確認してから……。私は泣き始めた。
悔しい……。いじめを報告したくても、この学園は、フリージオ家から多額の寄付を受けているから、きっともみ消される。
もう、やめてしまおうか。
卒業まであと少しだから、耐えようとも思った。
だけど、このまま卒業したって、王都で仕事が貰えるわけもない。結局村に戻るだけだ。だったら……。今帰ったって、変わらないじゃないか。
……そうしよう。遅すぎたくらいだ。
虐めには屈しない。そんな思いが強すぎて、無駄な時間を過ごしてしまった。
今日にでも、荷物をまとめて、出発しよう。
私はお腹を押さえながら、立ち上がった。
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