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あなたはここにいる《中》6

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「エミさまは投獄され、罪を償われることになりました。罪業を身に刻んだまま再編を迎えたら、最下層の境涯に落ちてしまうかもしれません。だから王は一計を案じました。
 ちょうど落女の娘が、子供を身ごもっていたんです。子供ったってただの肉の塊なんで、魂を宿すことは出来ません。その肉を使って第五世界にくだって人として暮らさせ、罪を償わせることにされました。それなら時間を大幅に短縮出来るので」
「そしてその娘の血と肉で作られた体なら、そのままこっちへ戻ってこられるから、魂の器にしたんだな?」
「そういうことです。他世界に転生すること自体、相当の時間がかかりますので、まさにうってつけの方法でした。でも先ほど言いました通り落女の娘はなかなか子供を外に出そうとしませんでしたので、結局ギリギリになっちゃいましたけど」
「本体はまだそっちで生きてるんだな?」
「そうです。しかしエミさまは衣をかえることを拒んでおいでです」
「衣をかえる?」
「今の体を捨て別の体に移るって意味です。記憶は体に宿るものですので、体が変われば記憶も持ち越せません。そちらでの記憶を失ってしまうのに非常に抵抗を感じておられるようです。
 自分の姿を初めて見たせいもあるでしょうね。『こんな人、わたしは知らない』って、本体を一度見たきり見向きもしなくなりました。あっちのほうがいいのに……」
「そりゃ本人の勝手だろう」
「そうなんですけどね。あの方は自分の本当の姿も、第七世界の様相も見たことがありません。もし見て知ってたら覚えはあるでしょうから、すんなり納得して戻ったと思うんですけどねえ」
 モグラ男の声が少し遠く聞こえる。また息が苦しくなってきた。あたりは闇のはずなのに視界が白く飛んで、足が止まりそうになる。
「エミさまは王の召還に応じなかったらしいですね。なので同じ眷族の姉妹が呼びかけることになりました。やはり近しい者の言うことには耳を貸しますので。彼女らが説得して導いて、やっとエミさまはこちらに戻られました。罪業も洗い流されたことだし、本当によかったですよ。
 …………あっ! 来ましたよ、生島さま! よかったですね! てっきり抜け出せないのかと思った。ヒヤヒヤした~」
 モグラ男が妙に騒いでいる。来たって何が? おっかない兵士の集団か?
 顔を上げると、暗い道の向こうから何か色のついた明るいものが、こちらへ走ってくるのが見えた。

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