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7.その手を振りきって《1》

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 鉄哉はわたしを見ようとしない。わたしも彼を見られなかった。でもいつもは感じる視線を感じない。
 怒っているのと傷ついているのと両方だろうか。わたしが弁解しないということが鉄哉の傷を深くしていくのがわかって、恐ろしいぐらいだった。
 わたしはずっとこの人を拒絶してきた。自分ではどうにもならない本能のようなもので逃げてきたのだが、彼の目の前で別の人を受け入れてしまった。
「……さっき何て言われたの?」
「何が」
「あんたに何か言ってたでしょ」
「何て言ったかわからない。でも、ものすごくムカつくことを言われた気がする」
 鉄哉は去っていった。彼がいなくなっても、わたしを絞め上げる苦しさは少しも薄まらなかった。

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