俺は君を見てた

ゆきりん(安室 雪)

文字の大きさ
上 下
3 / 3

3

しおりを挟む
 仕事が終わり、スマホの画面を見るとメールが届いていた。送り主は奏先輩だ。仕事が終わったらお茶しないか?とのお誘いだ。すぐにOKの返事を出す。待ち合わせは1階のカフェだ。



「春香ちゃん、お疲れ様」

「奏先輩すいません、お待たせしてしまって。ずっと会社内にいたんですか?」

 午前中に春香に会ってからかなりの時間が経っている。

「ん?ん~、まあね?それより、テイクアウトにして、場所移動してもいいかな?」

 流石に働く会社の1階のカフェでは、中々普段の様には話辛い。

「はい、大丈夫ですよ?」

 注文してテイクアウトで受け取る。

 そして奏先輩と一緒に移動するのだが、ビルの角を曲がってすぐの入り口から入る。

「え?会社の裏口?」

「いや、こっちも一応正面かな」

 と促され中に入る。中はホテルのエントランスの様になっているが、エレベーターに乗り上に上がる。

 到着したフロアで降り、廊下を進み部屋の入り口でカードを翳し、奏先輩は部屋の中に入る。

「春香ちゃん、どうぞ」

 部屋の中に促してくる。

「うわぁ~、凄く綺麗でお洒落なお部屋ですね。先輩ココに住んでるんですか?」

「丁度空きが出たみたいでね1LDKだけど、住み心地いいよ」

 リビングのソファーに座りながら横をポンポンと叩く。春香にもそこに座っての合図の様だ。下のカフェで買ってきたミルクティーを飲み、先輩はカフェラテを飲む。

「雑誌のモデルしながらバンド活動もやってて、最近はバンドも何とか軌道に乗ってきたかな。と言ってもまだモデルの方が稼げるけどね」

 と苦笑いする。

「そういえば、春香ちゃん彼氏は?上手く行ってるの?」

「は?いませんけど?」

「そうか、高校からじゃ色々かわるからな」

「あの~、私高校の頃も彼いませんでしたけど・・・、誰かと勘違い?」

「えっ?梨花ちゃんから聞いたけど?」

「いつですか?」

「あ~、俺の卒業式の日。告白されて、『俺、好きな子がいるから』て断ったらしつこく誰かって聞かれて、春香ちゃんの名前出したら『こないだ彼氏出来た』って言われてショックだったんだよ。ホントはあの日告白しようと思ってたからね」

「えっ!?梨花からは『先輩に好きな人がいるから振られた』って聞いて・・・、私も失恋確定だって・・・」

 2人で見つめ合う。

 そして、どちらからともなく笑い出す。

「ぷぷっ、梨花に嵌められたって事ですね」

「アイツ~、何処かで会う事があったらピーマン食わせてやる~っ!」

 梨花、ピーマン嫌いだからね。

「良く知ってますね、先輩」

「あ?俺も嫌いで打倒ピーマン連合だからな。裏切りものは退会処分だ」

「何ですか~それ。しかもピーマン嫌いって先輩、そんなにイケメンなのにぃ~!!」

 ひゃ~、可笑しいと笑い転げる。

「顔とピーマンは関係ないっ!」

 確かにっ。

「で、何だ。話を戻すけど」

 真剣な顔で見つめられる。

「もし、春香ちゃん今誰も好きな奴がいないんだったら、俺と付き合ってくれないか?俺はずっと君を見てた。優しく気遣いが出来る君が好きだ。数年なんてすぐに埋まるよ」

 な?

 甘く見つめられながら、ゆっくりと唇が近寄ってくる。触れ合うギリギリの所で春香が眼を瞑ると

「肯定だな」

 と息がかかり、ふわりと唇を合わせる。

 数年は甘いキスですぐに埋まってしまったのだった。



しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

貴方に絡めとられて

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
亜美には最近、気になっている人がいる。会社の警備員だ。警備員なのに笑顔が素敵なのだ。朝会えれば元気になれるし、帰りに会えれば1日頑張ったなぁと思える。そしてもう1人、同じ部署の人だ。とても優しく頼りがいのある人。 そんな2人を見ているだけで幸せなのに?

【短編完結】記憶なしで婚約破棄、常識的にざまあです。だってそれまずいって

鏑木 うりこ
恋愛
お慕いしておりましたのにーーー  残った記憶は強烈な悲しみだけだったけれど、私が目を開けると婚約破棄の真っ最中?! 待って待って何にも分からない!目の前の人の顔も名前も、私の腕をつかみ上げている人のことも!  うわーーうわーーどうしたらいいんだ!  メンタルつよつよ女子がふわ~り、さっくりかる~い感じの婚約破棄でざまぁしてしまった。でもメンタルつよつよなので、ザクザク切り捨てて行きます!

人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?

石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。 ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。 ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。 「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。 扉絵は汐の音さまに描いていただきました。

薬屋の一人娘、理不尽に婚約破棄されるも……

四季
恋愛
薬屋の一人娘エアリー・エメラルドは新興領地持ちの家の息子であるカイエル・トパーヅと婚約した。 しかし今、カイエルの心は、エアリーには向いておらず……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛されない女

詩織
恋愛
私から付き合ってと言って付き合いはじめた2人。それをいいことに彼は好き放題。やっぱり愛されてないんだなと…

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

処理中です...