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 セイラがビックリしている間にも、元気な鶏達は荷馬車からピョンピョン飛び降り、四方八方に歩き去って行く。

「ああっ、折角の鶏がっ!!でも、食料が足りない人には捕まえて食べてもらってもいいし。卵を産んだら食べて欲しいし・・・。どうしたらいいの!?」

「城から溢れ出るよりも、街で溢れ出た方が、民に早く行き渡るよな?荷馬車を移動させよう。それと、動ける騎士に鶏を各地にばら撒く様に伝え、運ばせよう」

「そうね。あ、でも道端にはエサが無いわ。今は元気な鶏でもすぐに動けなくなってしまうわ。どうしたら・・・?デュークの背負っている種は何の種かしら?」

 数粒手に取るが、何かは分からない。

「でも、ウサギ達の声と共に背中に現れたんだ。悪いモノでは無いだろう?一気に王国内に蒔けないか?」

「う~ん、どうしたら?」

『大丈夫っ!!セイラが願いを込めて祈れば、出来るよっ!!祈ってよ、セイラ!!』

 ミケの声に、セイラは種に向かい王国内の地図を頭に浮かべ、種を撒き散らすイメージをし、

「鶏も人も食べられるモノが最短で育ちます様にっ!!」

 と祈った。

 すると、右手の水晶がフワリと光り、リュックからは種が浮き上がり瞬時に消え去った。

「えっ!!」

『今、この瞬間に各地に散らばったから安心して。植物が育つ様に祝福の雨を降らせてよ、セイラ』

 ミケの言葉に従い、祝福の雨が降る様に祈りを捧げた。

 ちなみに、今現在セイラとデュークは城下町に移動して来た所で、外にいる。祈りを捧げたセイラが目を開ければ、地面の至る所から蔓が伸び出し、見ている間に成長し・花を咲かせ・実を付けた。目に見える範囲で実は様々だ。キュウリ・ナス・トマト。空き地には木が大きく育ち、バナナ・りんご・梨・無花果が見える。

「うわぁ!!なんでもありだねっ!!あれ?コレなんだろう、見た事ないよ?」

 セイラが木になったのは、白いフワフワしたモノだ。手に取ると柔らかい。そのまま齧ってみると、

「パンだわっ!!パンが成ってる!!」

 セイラの声にデュークも手に取り食べる。周りにいた民や騎士も恐る恐る齧り付き、目を輝かせた。

「大聖女セイラ様の奇跡だ!!」

 「セイラ様万歳っ!!」

 等々、騎士がセイラ様を褒め称える声を発すると、民にも伝播し人々にもセイラが大聖女で、奇跡を起こした本人だと認識して行く。

 もちろん小麦粉から作ったパンの方が美味しいと思うが、一応はパン風なのだ。

『復興したら消えて無くなる予定の植物だから、本物よりも美味しくは無いんだ。でも、栄養はあるからね』

 ミケの言葉をデュークに伝える。

「なら、この奇跡は永久では無く早く復興しないと消えると言って、急かす事にしよう」

「私も早くお店を開きたいのよ。温泉にもゆっくり浸かりたいし」

 鶏の荷馬車はそのままに、セイラとデュークは城に戻る事にした。
 




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