36 / 50
35
しおりを挟む
王城と目と鼻の先にある神殿へ急足で向かうセイラは、顔見知りの騎士や侍従の人から歓喜の声が上がり、びっくりする。
「セイラ様の聖なる力を皆、実感したのですよ。追放当初は笑っていた者達も、荒れ果てていく国内の様子に、自分達の認識が間違っていたと反省しております。もう、セイラ様の濡衣も晴れております。安心してお戻り下さいませ」
にっこりと笑顔で言ってくれるが。
あ~、この侍女の人にはまだキッチリとお断りした事が伝わってないんだね。でも、今、聖女に戻るつもりは全く無いと言ったら、また泣き叫ぶんだろうな。
うん、アレは避けたい。
とりあえず、答えずに置こう。
神殿についたし。
「おおっ、セイラ!!よく戻って来てくれました!!皆と一緒に祈って下さい!!」
神官長様の声に、祈っていた聖女や見習い聖女達も顔を上げた。セイラの見知った顔ばかりだが、皆一様に疲れた顔をしている。
聖女達は聖なる水晶(巨大)の周りを取り囲む様に輪になっている。聖女達の祈りを受け、薄らと光っているが弱々しい光だ。
私が祈っていた時には、もっと力強く輝いていたのに・・・。
ふと憎しみを帯びた視線を感じ、チラリと視線を動かせば、ミシェルが下唇を噛み締めながら睨んでいる。
はぁ~、私が悪い訳じゃ無いわよ。
ミシェルが望んだ事でしょ?と思わず睨み返してしまう。
でも、今はそんな場合では無かったわ。
聖女の輪に加わり、久しぶりに祈りを捧げる。すると弱々しく光っていた水晶は、真夏日の太陽の様に明る輝きはじめた。しかも、ソレは今までのセイラの力を更に高めた光だ。
えっ!?
何でこんな光り方をするのっ!?
内心驚きながらめ祈りを続けると、頭に声が響く。
『ワシらの力も加わってしまうのじゃ。まあ、気にせず祈るが良い』
ウサギの声だ。
『セイラ、チャッチャと終わらせて一緒に温泉浸かろうよっ』
ふふっ、タヌキもみんなも温泉好きだからね、早く帰りたいわっ!!
いっそう心を込めて祈ると、水晶があり得ない位に光り輝き、細い光をセイラの右手の甲に当てた。
ソレは数秒だったが、暖かく心地の良いものだった。
眩しい光が収まり、セイラの手の甲に当たる光も収まると、聖女は誰も祈っていないのに水晶はほのかに光っている。
「おおっ!!聖なる水晶が自ら光っているのはいつぶりじゃ!?」
神官長様は嬉しそうな声を上げる。
そしてセイラの手を取り、戻って来た事への感謝を告げる。
「セイラは大聖女に決まりだな。うむ。皆、今迄の疲れが溜まっているであろう。今日は早めに休み、明日からも大聖女セイラと共にーーー」
「私は大聖女にはなりませんよ?」
「分かっておる、大聖女にはならーーー、何じゃとっ!?」
神官長様は途中で声がひっくり返ってしまった。
「ですから、私は大聖女にも聖女にもならないと、国王様にも伝えてあります。状況が収まれば帰らせてもらいます」
「な、何じゃとっ!?」
興奮してしまった神官長様はその場で泡を吹いて倒れてしまった。
私のせいじゃないもん・・・。
「セイラ様の聖なる力を皆、実感したのですよ。追放当初は笑っていた者達も、荒れ果てていく国内の様子に、自分達の認識が間違っていたと反省しております。もう、セイラ様の濡衣も晴れております。安心してお戻り下さいませ」
にっこりと笑顔で言ってくれるが。
あ~、この侍女の人にはまだキッチリとお断りした事が伝わってないんだね。でも、今、聖女に戻るつもりは全く無いと言ったら、また泣き叫ぶんだろうな。
うん、アレは避けたい。
とりあえず、答えずに置こう。
神殿についたし。
「おおっ、セイラ!!よく戻って来てくれました!!皆と一緒に祈って下さい!!」
神官長様の声に、祈っていた聖女や見習い聖女達も顔を上げた。セイラの見知った顔ばかりだが、皆一様に疲れた顔をしている。
聖女達は聖なる水晶(巨大)の周りを取り囲む様に輪になっている。聖女達の祈りを受け、薄らと光っているが弱々しい光だ。
私が祈っていた時には、もっと力強く輝いていたのに・・・。
ふと憎しみを帯びた視線を感じ、チラリと視線を動かせば、ミシェルが下唇を噛み締めながら睨んでいる。
はぁ~、私が悪い訳じゃ無いわよ。
ミシェルが望んだ事でしょ?と思わず睨み返してしまう。
でも、今はそんな場合では無かったわ。
聖女の輪に加わり、久しぶりに祈りを捧げる。すると弱々しく光っていた水晶は、真夏日の太陽の様に明る輝きはじめた。しかも、ソレは今までのセイラの力を更に高めた光だ。
えっ!?
何でこんな光り方をするのっ!?
内心驚きながらめ祈りを続けると、頭に声が響く。
『ワシらの力も加わってしまうのじゃ。まあ、気にせず祈るが良い』
ウサギの声だ。
『セイラ、チャッチャと終わらせて一緒に温泉浸かろうよっ』
ふふっ、タヌキもみんなも温泉好きだからね、早く帰りたいわっ!!
いっそう心を込めて祈ると、水晶があり得ない位に光り輝き、細い光をセイラの右手の甲に当てた。
ソレは数秒だったが、暖かく心地の良いものだった。
眩しい光が収まり、セイラの手の甲に当たる光も収まると、聖女は誰も祈っていないのに水晶はほのかに光っている。
「おおっ!!聖なる水晶が自ら光っているのはいつぶりじゃ!?」
神官長様は嬉しそうな声を上げる。
そしてセイラの手を取り、戻って来た事への感謝を告げる。
「セイラは大聖女に決まりだな。うむ。皆、今迄の疲れが溜まっているであろう。今日は早めに休み、明日からも大聖女セイラと共にーーー」
「私は大聖女にはなりませんよ?」
「分かっておる、大聖女にはならーーー、何じゃとっ!?」
神官長様は途中で声がひっくり返ってしまった。
「ですから、私は大聖女にも聖女にもならないと、国王様にも伝えてあります。状況が収まれば帰らせてもらいます」
「な、何じゃとっ!?」
興奮してしまった神官長様はその場で泡を吹いて倒れてしまった。
私のせいじゃないもん・・・。
13
お気に入りに追加
1,438
あなたにおすすめの小説

王子からの縁談の話が来たのですが、双子の妹が私に成りすまして王子に会いに行きました。しかしその結果……
水上
恋愛
侯爵令嬢である私、エマ・ローリンズは、縁談の話を聞いて喜んでいた。
相手はなんと、この国の第三王子であるウィリアム・ガーヴィー様である。
思わぬ縁談だったけれど、本当に嬉しかった。
しかし、その喜びは、すぐに消え失せた。
それは、私の双子の妹であるヘレン・ローリンズのせいだ。
彼女と、彼女を溺愛している両親は、ヘレンこそが、ウィリアム王子にふさわしいと言い出し、とんでもない手段に出るのだった。
それは、妹のヘレンが私に成りすまして、王子に近づくというものだった。
私たちはそっくりの双子だから、確かに見た目で判断するのは難しい。
でも、そんなバカなこと、成功するはずがないがないと思っていた。
しかし、ヘレンは王宮に招かれ、幸せな生活を送り始めた。
一方、私は王子を騙そうとした罪で捕らえられてしまう。
すべて、ヘレンと両親の思惑通りに事が進んでいた。
しかし、そんなヘレンの幸せは、いつまでも続くことはなかった。
彼女は幸せの始まりだと思っていたようだけれど、それは地獄の始まりなのだった……。
※この作品は、旧作を加筆、修正して再掲載したものです。

アクアリネアへようこそ
みるくてぃー
恋愛
突如両親を亡くしたショックで前世の記憶を取り戻した私、リネア・アージェント。
家では叔母からの嫌味に耐え、学園では悪役令嬢の妹して蔑まれ、おまけに齢(よわい)70歳のお爺ちゃんと婚約ですって!?
可愛い妹を残してお嫁になんて行けないわけないでしょ!
やがて流れ着いた先で小さな定食屋をはじめるも、いつしか村全体を巻き込む一大観光事業に駆り出される。
私はただ可愛い妹と暖かな暮らしがしたいだけなのよ!
働く女の子が頑張る物語。お仕事シリーズの第三弾、食と観光の町アクアリネアへようこそ。

婚約破棄された私の結婚相手は殿下限定!?
satomi
恋愛
私は公爵家の末っ子です。お兄様にもお姉さまにも可愛がられて育ちました。我儘っこじゃありません!
ある日、いきなり「真実の愛を見つけた」と婚約破棄されました。
憤慨したのが、お兄様とお姉さまです。
お兄様は今にも突撃しそうだったし、お姉さまは家門を潰そうと画策しているようです。
しかし、2人の議論は私の結婚相手に!お兄様はイケメンなので、イケメンを見て育った私は、かなりのメンクイです。
お姉さまはすごく賢くそのように賢い人でないと私は魅力を感じません。
婚約破棄されても痛くもかゆくもなかったのです。イケメンでもなければ、かしこくもなかったから。
そんなお兄様とお姉さまが導き出した私の結婚相手が殿下。
いきなりビックネーム過ぎませんか?

【完結】「第一王子に婚約破棄されましたが平気です。私を大切にしてくださる男爵様に一途に愛されて幸せに暮らしますので」
まほりろ
恋愛
学園の食堂で第一王子に冤罪をかけられ、婚約破棄と国外追放を命じられた。
食堂にはクラスメイトも生徒会の仲間も先生もいた。
だが面倒なことに関わりたくないのか、皆見てみぬふりをしている。
誰か……誰か一人でもいい、私の味方になってくれたら……。
そんなとき颯爽?と私の前に現れたのは、ボサボサ頭に瓶底眼鏡のひょろひょろの男爵だった。
彼が私を守ってくれるの?
※ヒーローは最初弱くてかっこ悪いですが、回を重ねるごとに強くかっこよくなっていきます。
※ざまぁ有り、死ネタ有り
※他サイトにも投稿予定。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」

婚約破棄されたショックで前世の記憶を取り戻して料理人になったら、王太子殿下に溺愛されました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
シンクレア伯爵家の令嬢ナウシカは両親を失い、伯爵家の相続人となっていた。伯爵家は莫大な資産となる聖銀鉱山を所有していたが、それを狙ってグレイ男爵父娘が罠を仕掛けた。ナウシカの婚約者ソルトーン侯爵家令息エーミールを籠絡して婚約破棄させ、そのショックで死んだように見せかけて領地と鉱山を奪おうとしたのだ。死にかけたナウシカだが奇跡的に助かったうえに、転生前の記憶まで取り戻したのだった。

醜い傷ありと蔑まれてきた私の顔に刻まれていたのは、選ばれし者の証である聖痕でした。今更、態度を改められても許せません。
木山楽斗
恋愛
エルーナの顔には、生まれつき大きな痣がある。
その痣のせいで、彼女は醜い傷ありと蔑まれて生きてきた。父親や姉達から嫌われて、婚約者からは婚約破棄されて、彼女は、痣のせいで色々と辛い人生を送っていたのである。
ある時、彼女の痣に関してとある事実が判明した。
彼女の痣は、聖痕と呼ばれる選ばれし者の証だったのだ。
その事実が判明して、彼女の周囲の人々の態度は変わった。父親や姉達からは媚を売られて、元婚約者からは復縁を迫られて、今までの態度とは正反対の態度を取ってきたのだ。
流石に、エルーナもその態度は頭にきた。
今更、態度を改めても許せない。それが彼女の素直な気持ちだったのだ。
※5話目の投稿で、間違って別の作品の5話を投稿してしまいました。申し訳ありませんでした。既に修正済みです。

妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるフェルーナは、類稀なる魔法の才覚を持つ聖女である。
しかしある時、彼女は王国によって捕らえられてしまう。
それは、彼女の妹であるホーネリアの策略だった。
彼女は闇の魔法に手を染めており、それを用いてフェルーナから魔力を奪い、彼女を陥れたのである。
結果的に、フェルーナは国外追放されることになった。
そんな彼女に手を差し伸べたのは、隣国の王子であるアグナヴァンだった。
アグナヴァンは、前々からフェルーナの才覚と気高い精神を尊敬していた。
そんな彼に、彼女は婚約者として迎え入れられたのである。
しばらくの間、彼の婚約者として過ごしていたフェルーナの元に、とある一報が届いた。
それは、聖女に就任したホーネリアがその責務を果たせていないため、国に戻って来て欲しいという知らせだった。
しかし、そんな知らせを受ける義理は彼女にはなかった。こうして、彼女は祖国からの要請を切り捨てるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる