国外追放ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)

文字の大きさ
上 下
12 / 50

11

しおりを挟む
 翌朝、ミケはまだ寝ていたので、ウサギとタヌキを部屋に残して朝食を食べに行き、その足でギルドに向かった。

 預けているお金から家の代金を下ろし、ケミュさんの兄・リヒターさんへと振り込み、控えは無くさないようにカバンのポケットにしまった。ケミュさんは今日、午後から出勤と言っていたので出勤時間に合わせて遅めのランチを食べに行く。

 ケミュさんにランチを注文し、家の代金を振り込んだ事を伝えて控えを見せる。

「セイラさん手続き早いですね。これが鍵ですが、すいません。掃除がまだ半端なままなんです」

 申し訳無さそうに鍵を2本手渡してくれる。しかし、ケミュさんだって忙しいのだ。こないだ急遽家の中を見せて欲しいと言った際も、お休みの日に早起きして家の掃除をしていてくれたのだ。

「いえ、こちらこそ急遽なお願いなのに、色々手配してもらってすいません」


 鍵を受け取りながら2人ペコリペコリと頭を下げる。

「今日からはセイラさん名義になりますので、いつでも引っ越してもらって大丈夫ですよ。もし、家の事で不明な点があればいつでも言ってください。譲渡契約書は兄から直接家の方に送らせますね」

「はい、お願いします」

 もう一度ペコリとケミュさんはお辞儀をして席を離れた。そのタイミングで頼んだランチが運ばれ、デュークと遅めのランチに舌鼓を打った。




 2人は部屋に戻り、ミケの様子を見る。

 ミケは相変わらずグッスリと寝ている。

「ねえ、ウサギ。ミケはずっと寝てるけど大丈夫なの?」

「ああ。コイツは起こせば起きる」

 ウサギはミケの腕をギュッとつねった。

「・・・」

 起きないミケの腕を、左右からウサギとタヌキが何度もつねると、ミケがやっと目を開けた。

「・・・、痛いよ兄さん達」

「お主が寝坊助だからだ。セイラが用だ」

「セイラ、よろしく。名前はミケでいいよ」

「よろしくね、ミケ」

 うっすらとピンクに光り、ミケはまた眠りについた。

「ねえ、ミケは寝てばっかりだけど、どこか悪いの?」

 心配になり、ウサギとタヌキに聞く。

「どこも悪く無いよ?」

「こやつは縁を司る力を持っておる。常に力がダダ漏れ状態だから、寝て力の減りをセーブしとるんじゃ」

「何だか凄い力があるのね?ミケのご飯はどうしたらいいのかな?」

「腹が減ったら起きるじゃろ」

 言い終わるとウサギは先にミルクを飲んでいるタヌキの横に行き、ミルクを飲み始めた。

「セイラ、今日はもう夕方に近いし明日から家の掃除をしよう」

 話しの区切りを待っていたデュークに言われ窓の外を見ると、確かに太陽はオレンジの光を放ち始めていた。

「そうね。明日からにしましょう。やっとお店の準備ね、楽しみね」

 デュークは笑顔で頷いた。




 
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

王子からの縁談の話が来たのですが、双子の妹が私に成りすまして王子に会いに行きました。しかしその結果……

水上
恋愛
侯爵令嬢である私、エマ・ローリンズは、縁談の話を聞いて喜んでいた。 相手はなんと、この国の第三王子であるウィリアム・ガーヴィー様である。 思わぬ縁談だったけれど、本当に嬉しかった。 しかし、その喜びは、すぐに消え失せた。 それは、私の双子の妹であるヘレン・ローリンズのせいだ。 彼女と、彼女を溺愛している両親は、ヘレンこそが、ウィリアム王子にふさわしいと言い出し、とんでもない手段に出るのだった。 それは、妹のヘレンが私に成りすまして、王子に近づくというものだった。 私たちはそっくりの双子だから、確かに見た目で判断するのは難しい。 でも、そんなバカなこと、成功するはずがないがないと思っていた。 しかし、ヘレンは王宮に招かれ、幸せな生活を送り始めた。 一方、私は王子を騙そうとした罪で捕らえられてしまう。 すべて、ヘレンと両親の思惑通りに事が進んでいた。 しかし、そんなヘレンの幸せは、いつまでも続くことはなかった。 彼女は幸せの始まりだと思っていたようだけれど、それは地獄の始まりなのだった……。 ※この作品は、旧作を加筆、修正して再掲載したものです。

アクアリネアへようこそ

みるくてぃー
恋愛
突如両親を亡くしたショックで前世の記憶を取り戻した私、リネア・アージェント。 家では叔母からの嫌味に耐え、学園では悪役令嬢の妹して蔑まれ、おまけに齢(よわい)70歳のお爺ちゃんと婚約ですって!? 可愛い妹を残してお嫁になんて行けないわけないでしょ! やがて流れ着いた先で小さな定食屋をはじめるも、いつしか村全体を巻き込む一大観光事業に駆り出される。 私はただ可愛い妹と暖かな暮らしがしたいだけなのよ! 働く女の子が頑張る物語。お仕事シリーズの第三弾、食と観光の町アクアリネアへようこそ。

婚約破棄された私の結婚相手は殿下限定!?

satomi
恋愛
私は公爵家の末っ子です。お兄様にもお姉さまにも可愛がられて育ちました。我儘っこじゃありません! ある日、いきなり「真実の愛を見つけた」と婚約破棄されました。 憤慨したのが、お兄様とお姉さまです。 お兄様は今にも突撃しそうだったし、お姉さまは家門を潰そうと画策しているようです。 しかし、2人の議論は私の結婚相手に!お兄様はイケメンなので、イケメンを見て育った私は、かなりのメンクイです。 お姉さまはすごく賢くそのように賢い人でないと私は魅力を感じません。 婚約破棄されても痛くもかゆくもなかったのです。イケメンでもなければ、かしこくもなかったから。 そんなお兄様とお姉さまが導き出した私の結婚相手が殿下。 いきなりビックネーム過ぎませんか?

【完結】「第一王子に婚約破棄されましたが平気です。私を大切にしてくださる男爵様に一途に愛されて幸せに暮らしますので」

まほりろ
恋愛
学園の食堂で第一王子に冤罪をかけられ、婚約破棄と国外追放を命じられた。 食堂にはクラスメイトも生徒会の仲間も先生もいた。 だが面倒なことに関わりたくないのか、皆見てみぬふりをしている。 誰か……誰か一人でもいい、私の味方になってくれたら……。 そんなとき颯爽?と私の前に現れたのは、ボサボサ頭に瓶底眼鏡のひょろひょろの男爵だった。 彼が私を守ってくれるの? ※ヒーローは最初弱くてかっこ悪いですが、回を重ねるごとに強くかっこよくなっていきます。 ※ざまぁ有り、死ネタ有り ※他サイトにも投稿予定。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」

婚約破棄されたショックで前世の記憶を取り戻して料理人になったら、王太子殿下に溺愛されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 シンクレア伯爵家の令嬢ナウシカは両親を失い、伯爵家の相続人となっていた。伯爵家は莫大な資産となる聖銀鉱山を所有していたが、それを狙ってグレイ男爵父娘が罠を仕掛けた。ナウシカの婚約者ソルトーン侯爵家令息エーミールを籠絡して婚約破棄させ、そのショックで死んだように見せかけて領地と鉱山を奪おうとしたのだ。死にかけたナウシカだが奇跡的に助かったうえに、転生前の記憶まで取り戻したのだった。

醜い傷ありと蔑まれてきた私の顔に刻まれていたのは、選ばれし者の証である聖痕でした。今更、態度を改められても許せません。

木山楽斗
恋愛
エルーナの顔には、生まれつき大きな痣がある。 その痣のせいで、彼女は醜い傷ありと蔑まれて生きてきた。父親や姉達から嫌われて、婚約者からは婚約破棄されて、彼女は、痣のせいで色々と辛い人生を送っていたのである。 ある時、彼女の痣に関してとある事実が判明した。 彼女の痣は、聖痕と呼ばれる選ばれし者の証だったのだ。 その事実が判明して、彼女の周囲の人々の態度は変わった。父親や姉達からは媚を売られて、元婚約者からは復縁を迫られて、今までの態度とは正反対の態度を取ってきたのだ。 流石に、エルーナもその態度は頭にきた。 今更、態度を改めても許せない。それが彼女の素直な気持ちだったのだ。 ※5話目の投稿で、間違って別の作品の5話を投稿してしまいました。申し訳ありませんでした。既に修正済みです。

妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるフェルーナは、類稀なる魔法の才覚を持つ聖女である。 しかしある時、彼女は王国によって捕らえられてしまう。 それは、彼女の妹であるホーネリアの策略だった。 彼女は闇の魔法に手を染めており、それを用いてフェルーナから魔力を奪い、彼女を陥れたのである。 結果的に、フェルーナは国外追放されることになった。 そんな彼女に手を差し伸べたのは、隣国の王子であるアグナヴァンだった。 アグナヴァンは、前々からフェルーナの才覚と気高い精神を尊敬していた。 そんな彼に、彼女は婚約者として迎え入れられたのである。 しばらくの間、彼の婚約者として過ごしていたフェルーナの元に、とある一報が届いた。 それは、聖女に就任したホーネリアがその責務を果たせていないため、国に戻って来て欲しいという知らせだった。 しかし、そんな知らせを受ける義理は彼女にはなかった。こうして、彼女は祖国からの要請を切り捨てるのだった。

処理中です...