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午後一で王都を出たセイラ達は夕方には隣国に入り、その後1時間程で予定していた宿屋に着いた。セイラが予想していた宿屋よりも高そうな宿だった。ちなみにセイラの予想は、一般庶民が旅の途中で泊まる狭く・壁が薄く・トイレやお風呂が共同だった。しかし、用意されていたのは、貴族階級の者が療養に訪れる温泉宿だった。各部屋に温泉風呂・トイレの水回りがあり、完全個室で宿の中にはレストランが何種類かある。宿の外にも飲食店や他の宿も何軒かある。

 「うわ、凄い所ですが私が泊まって大丈夫なんですか?」

 「もちろんです。王子がセイラ様に無茶なお願いをしたのです。これくらいは当然です」

 「ありがと。デュークさんがいると何だか安心出来そう」

 デュークさんは一瞬変な顔をしたが、見なかった事にする。

 「それで、デュークさんは隣のお部屋に泊まるのですか?」

 ソファーに座りながらたずねてみる。

 「いえ、私はあちらの部屋に」

 デュークさんが指差してたのは、通常お付きのメイドが控えている部屋だった。

 「えっ!?」

 一応は同じ部屋になっちゃうんじゃないの?

 「その・・・、一応周りを欺く為に婚約者という事になってますので」

 デュークさんは言いにくそうに言った。

 「ま、まあ、そうなのね」

 この部屋の作りは入り口を入ってすぐにリビングで、右手に水回り・メイドの控え室、左手に主寝室・温泉風呂がある。

 「主寝室には鍵がかかるようになってますので、必ず鍵はかけて下さい」

 「分かりました。あ、デュークさん。控え室は狭いと思いますのでリビングでくつろいでくださいね?遠慮は無しですよ?1ヶ月は長いですからね」

 「ありがとうございます」

 デュークさんは頭を下げた。

 「婚約者設定なら砕けた口調で話してくださいね?」

 「・・・わかった」

 そんなこんなで、私の次の人生に向けての温泉宿同居生活が始まったのだ。


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