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22 ハズキ視点
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久しぶりに実家に帰ると感慨深いモノがある。
あの日、ナツキの結婚式場に向かって以来、数ヶ月振りになる実家は以前と物理的には変わらないが、空気は重苦しく鬱々としている。
「あらハズキ、久しぶりね。今日は1人で来たの?」
ナツキの部屋に向かう途中でミツキ姉に声をかけられる。
「シリウスはライトラー殿下に呼ばれて、登城」
本当は一緒に来るはずだったのだが、急遽呼び出しの伝令が来たのだ。
「そう。今はライラちゃんがナツキの様子を見ててくれてるから、ちょっと向こうで話せるかしら?」
ミツキ姉は庭を指さして、ハズキを引っ張って行った。
「で?ナツキをこんな目に遭わせたのは誰なの?」
庭に出てすぐそばに置いてあるガーデンチェアに座るなり、ミツキ姉は口を開いた。
「リンドバード男爵の娘でリーンと言うらしい。建国際で捉えられてからは貴族牢に入れられてたらしいけど、男爵家から除名され平民落ちして、今日から一般牢に移動だって。その手続きの関係でシリウスは城に行ったんだ。騎士団長の決裁がいるらしくて。」
「建国際では、ハズキとオラハルト伯爵に向かってそのリーンは来たのよね?何でなの?」
そう来るよな。
「実は、リーンには妄想癖があるらしく、シリウスと恋人同士だと思い込んでたらしい。普段は屋敷に閉じ込められてたらしいんだけど、メイドの噂話しで結婚した事を知って、何とか建国際に潜り込んだみたいだ。仮面舞踏会がアダになったって、ライトラー殿下達がぼやいてたらしい。で、リーンは俺を殺せばシリウスの妻になれると思ったらしい。で、ナイフを握って突進して来た所にナツキが割って入ったと。」
せっかくナツキの為に、色々作戦を練った舞踏会だったのに。予定外の外交が入り、ライトラー殿下の予定が変更になった挙句のナツキの事件だ。
「でも、仮面を被ってたのによく伯爵がわかったわよね?」
「ああ、俺も思った。でもリーンいわく『愛する人を間違える訳が無い』と。ある意味ストーカー。」
「そうね、怖いわね。でもまあ、ライトラー殿下がリーンを許す訳ないと思うから、きっともう2度と会う事はないんでしょうね?」
「極北にある島に送るって言ってるらしいよ」
「まあ、ある意味可哀想な運命ね。」
2人はいつの間にか用意された紅茶に口を付けた。
因みに極北にある島とは、雪と氷に閉ざされた島で、太陽がほとんど出ない地域で、数ヶ月で精神が病むと言われている。
あの日、ナツキの結婚式場に向かって以来、数ヶ月振りになる実家は以前と物理的には変わらないが、空気は重苦しく鬱々としている。
「あらハズキ、久しぶりね。今日は1人で来たの?」
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「シリウスはライトラー殿下に呼ばれて、登城」
本当は一緒に来るはずだったのだが、急遽呼び出しの伝令が来たのだ。
「そう。今はライラちゃんがナツキの様子を見ててくれてるから、ちょっと向こうで話せるかしら?」
ミツキ姉は庭を指さして、ハズキを引っ張って行った。
「で?ナツキをこんな目に遭わせたのは誰なの?」
庭に出てすぐそばに置いてあるガーデンチェアに座るなり、ミツキ姉は口を開いた。
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「建国際では、ハズキとオラハルト伯爵に向かってそのリーンは来たのよね?何でなの?」
そう来るよな。
「実は、リーンには妄想癖があるらしく、シリウスと恋人同士だと思い込んでたらしい。普段は屋敷に閉じ込められてたらしいんだけど、メイドの噂話しで結婚した事を知って、何とか建国際に潜り込んだみたいだ。仮面舞踏会がアダになったって、ライトラー殿下達がぼやいてたらしい。で、リーンは俺を殺せばシリウスの妻になれると思ったらしい。で、ナイフを握って突進して来た所にナツキが割って入ったと。」
せっかくナツキの為に、色々作戦を練った舞踏会だったのに。予定外の外交が入り、ライトラー殿下の予定が変更になった挙句のナツキの事件だ。
「でも、仮面を被ってたのによく伯爵がわかったわよね?」
「ああ、俺も思った。でもリーンいわく『愛する人を間違える訳が無い』と。ある意味ストーカー。」
「そうね、怖いわね。でもまあ、ライトラー殿下がリーンを許す訳ないと思うから、きっともう2度と会う事はないんでしょうね?」
「極北にある島に送るって言ってるらしいよ」
「まあ、ある意味可哀想な運命ね。」
2人はいつの間にか用意された紅茶に口を付けた。
因みに極北にある島とは、雪と氷に閉ざされた島で、太陽がほとんど出ない地域で、数ヶ月で精神が病むと言われている。
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