上 下
13 / 29

12 ライラ視点1

しおりを挟む
 ライラは目的の部屋に向かい、ノックも無しにバンッと乱暴に扉を開けた。既に時刻は2時に近い。相変わらず夜中だ。

「どうした、ライラ。ああ、次のパーティーは1週間後だ。またーーー」

「ナツキはもう行きませんわ」

 兄様の言葉を遮り、ナツキの意思を伝える。

「は?楽しそうだったじゃないか」

 兄様は意味が分からないとい顔をした。

 なので、さっきのナツキの宣言を伝えた。

「まあ、そうだな。状況的には辛くなる一方だよな。アイツには明日、話すよ。ナツキ嬢の事は諦めるしかないからな」

 ナツキの宣言を聞いた兄様は納得した様だ。

「でも、ライトラー殿下ならナツキやグローリー男爵家を助ける事が出来たのにね。ホント、悔やまれて仕方ないわ」

「だな、俺もそう思う。もっと早く再開出来ていればとか、公務が忙しくてなければとかな。まあ、運命だと諦めるしかないのがもどかしい。なんとかしてやりたかった。2人の為に」

「ナツキも決心したから、仕方ないわ。今後のナツキの幸せを祈るしかないわ」

「ああ・・・」

 会話が途切れたのでライラは兄の部屋を後にした。





 翌朝、ナツキはライラに見送られて馬車に乗り込んだ。

「ナツキ、私はいつでもナツキの見方だからいつでも遊びに来てね。楽しみに待ってるわ」

 しかし、ナツキもライラも分かっている。ナツキが婚家に行ってしまえば、今迄の様に気楽に遊びに行ったり来たり出来ない事を。

「ありがとう、ライラ。またねっ」

 目を真っ赤にしながらもナツキは明らかな作り笑いをした。ライラもあまり寝れなかったが、ナツキはもっと寝れなかっただろう。泣き腫らした目が痛々しかった。




 早朝、姉の屋敷に帰ったナツキはゆっくりと貸して貰っている2階の部屋に向かう。しかし、睡眠不足・精神的に不安定だったナツキは階段で躓いてしまい、バランスを崩して、階段のほぼ真ん中なら転がり落ちてしまった。

「キャーッ!!ナツキお嬢様っ!!誰かっ!!」

 メイドの叫び声と複数の足音を聞きながら、ナツキの意識は遠のいて行った。



しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【本編完結】旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:116,415pt お気に入り:8,910

王女様、それは酷すぎませんか?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:177pt お気に入り:1,554

許してもらえるだなんて本気で思っているのですか?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,991pt お気に入り:3,627

皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:134pt お気に入り:2,446

全てを奪われてしまいそうなので、ざまぁします!!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:1,080

聖女の祈りを胡散臭いものだと切り捨てた陛下は愚かでしたね。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:17,374pt お気に入り:644

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:3,119

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,231pt お気に入り:3,822

処理中です...