私が知ってる貴方

ゆきりん(安室 雪)

文字の大きさ
上 下
2 / 6

2

しおりを挟む
 頭の上で何か話し声が聞こえてきて、理沙は目覚める。

「どうだ、体調は?」

 怖い顔のイケメンに話しかけられる。

「はい。身体の痛みも引いてきたし、風邪も治ったみたいです」

「そうか」

 怖い顔のイケメンは、ふと表情を和らげる。

「もう熱も下がりましたので、明日には帰られても大丈夫だと医者も言ってました。響也様、明日の昼には自宅にお送りしてもよろしいでしょうか?」

 アイドルイケメンが、怖い顔のイケメン『響也様』にたずねている。

「そうだなハク、送ってやれ」

 そう返事を返し、響也様は部屋を出た。

 ハクと呼ばれたアイドルイケメンは、明日昼食を食べた後、家まで送ってくれると言う。それと、家に着いたらここでの事、響也様の事は他言せず忘れる事を約束させられる。了解すると、ハクさんは何やら分厚い封筒を取り出し、理沙の枕元に置くと『くれぐれもお願いしますよ』と念を押し、部屋から出て行く。

 何だろ?この封筒?と、中身を見て理沙は固まる。お札だっ、しかも帯封がしてある。て事は100万円!?何?口止め料?

 もしかして、ヤバイ人に関わってしまった?


 翌朝、朝食と共に現れたハクさんに、封筒に入った現金を返そうとするが受け取ってはもらえなかった。新しい服も用意される。何だか早く帰りたい気分だ。ハクさんに、今日は予定があるので、お昼ご飯はいらないので、帰りたい旨を伝え、早目に送ってもらう事になった。

 封筒の現金はやはり、頂いて帰る事は出来ないなと思い、枕の下に置いて帰る事にした。



 部屋を出て、廊下を何度も曲がり、やっと玄関に着く。玄関と言ってもとてつもなく広い。理沙のアパートの部屋がスッポリ入りそうだ。建物から出て立派な植木を両側に見ながら、門をくぐると黒塗りの車が止まっている。うっ、やっぱり「や」の付く職業の人なのかな・・・。車に乗せられ、家を聞かれ普通に答えてしまった。せめて最寄り駅にしとくべきだった?

 無事、アパートに送り届けられ一安心だ。お礼を言い、自分の部屋に入る。ふぅ~っと息を吐き、手に持っていた鞄と薬局で買った物、服が入った紙袋を床に置く。バランスを崩し、服の入っていた袋を倒してしまう。すると、中から見覚えのある封筒が滑り出てくる。しかも封筒には『きちんと受け取るように』と書かれている。うっ、私の行動読まれてたのか。ハクさん、侮れなかったわ。

 10日ある連休の内3日を人様の家で寝て過ごしてしまった。残りは当初の予定通りにまずは、部屋の掃除かな。午後からは部屋の掃除と冷蔵庫の片付けをする。家を空けていた間に食べれなかったモノを処分だ。野菜とか茶色い水が出てるよ・・・。

 夕方になり、近くのスーパーに買い物に行けこうと、部屋を出て鍵をかけた所で声をかけられる。

「すいません・・・」

「はい?」

  誰だろう?と思った所で、口に布を押し付けられる。

!?

 意識が遠くなりながら、バタバタと何人かの足音が聞こえた。



 頭がガンガンする。

 風邪は治ったはずなのに・・・。

 !?

「目が覚めましたか?すいません、巻き込んでしまいまして」

 ハクさんがそう言い、部屋を出るが、すぐに戻ってくる。1人ではなく、響也様も一緒だ。

「ハク、さっき話した手配を頼む」

「はいっ」

 と、ハクさんは部屋からいなくなる。

「さて、巻き込んでしまったから事情を話さないとな」

「お願いします」

 スーパーに向かうはずが、何故午前中においとました家のベッドで寝ているのか。

「実は今、跡目争いで揉めていてな。俺ともう1人いるんだが、なかなか頭が悪くて自分の実力が理解出来ないらしい。で、偶然だが俺が連れ帰ったお前を、俺の女と勘違いしたらしい。まあ、3日もいたからな。で、お前を監禁して俺に跡目を降りさせるつもりだったみたいだな」

 跡目・・・、やっぱり「や」の付く人だ!?

 逃げるなら今!?

 パニックになり、ベッドから降りようとするが、床に着いた足に力が入らず、そのまま倒れそうになる。それを響也様が抱きしめる。

「おっと、逃しはしないぜ?」

 ニヤリと笑われ、そのままベッドに戻される。何も言えず、響也様を見上げる。

「ふっ、理沙。涙目で見上げるのはダメだろうよ。ヤられるぞ?」


 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

「俺が君を愛することはない」じゃあこの怖いくらい甘やかされてる状況はなんなんだ。そして一件落着すると、今度は家庭内ストーカーに発展した。

下菊みこと
恋愛
戦士の王の妻は、幼い頃から一緒にいた夫から深く溺愛されている。 リュシエンヌは政略結婚の末、夫となったジルベールにベッドの上で「俺が君を愛することはない」と宣言される。しかし、ベタベタに甘やかされているこの状況では彼の気持ちなど分かりきっていた。 小説家になろう様でも投稿しています。

眠り姫は甘い悪魔に染められる

なかな悠桃
恋愛
仙徳ちなは、ある夢を見ていた。それは普段とは真逆の性格の同期、上出天音がいる世界・・・。 ※※今の連載が落ち着いたら続編を書く予定にしてるので、何カ所か含みのある内容になり意味が分からないと思います。すみません(´;ω;`) ※※見直してはおりますが、誤字脱字などお見苦しい点ございましたら申し訳ございません。

顔も知らない旦那さま

ゆうゆう
恋愛
領地で大災害が起きて没落寸前まで追い込まれた伯爵家は一人娘の私を大金持ちの商人に嫁がせる事で存続をはかった。 しかし、嫁いで2年旦那の顔さえ見たことがない 私の結婚相手は一体どんな人?

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

社長から逃げろっ

鳴宮鶉子
恋愛
社長から逃げろっ

魅了の魔法を使っているのは義妹のほうでした・完

瀬名 翠
恋愛
”魅了の魔法”を使っている悪女として国外追放されるアンネリーゼ。実際は義妹・ビアンカのしわざであり、アンネリーゼは潔白であった。断罪後、親しくしていた、隣国・魔法王国出身の後輩に、声をかけられ、連れ去られ。 夢も叶えて恋も叶える、絶世の美女の話。 *五話でさくっと読めます。

【完結・7話】召喚命令があったので、ちょっと出て失踪しました。妹に命令される人生は終わり。

BBやっこ
恋愛
タブロッセ伯爵家でユイスティーナは、奥様とお嬢様の言いなり。その通り。姉でありながら母は使用人の仕事をしていたために、「言うことを聞くように」と幼い私に約束させました。 しかしそれは、伯爵家が傾く前のこと。格式も高く矜持もあった家が、機能しなくなっていく様をみていた古参組の使用人は嘆いています。そんな使用人達に教育された私は、別の屋敷で過ごし働いていましたが15歳になりました。そろそろ伯爵家を出ますね。 その矢先に、残念な妹が伯爵様の指示で訪れました。どうしたのでしょうねえ。

処理中です...