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 亜美は悩んでいた。

 先日の会社に応募するか否か。

 職場は働きやすそうだ。駅から近いし会社が入っているビルも古くない。人も良さげな人が多そうだったし。仕事内容は経理。

 ただし『大人のおもちゃ』

 う~ん、どうする、どうするよ?

 ちなみに、高瀬さんにもらったココアは、もちろん美味しく飲ませて頂きました。あんなに美味しいインスタントココアはじめてかも。

 すると、スマホに着信がある。が、登録の無い番号だったから思わず出るのを躊躇っていたら切れてしまった。すぐに留守電が入ったので、聞く。
 
 『高島さん、先日は会社訪問ありがとう。高瀬です。もし、応募で悩んでる事があったら相談に乗るので連絡下さい。この番号は個人の物だから時間は何時でも大丈夫です。じゃあ』

 優しい声で高瀬さんは留守電を残してくれた。

 う~ん、一般的な会社だったら即応募なんだけど・・・、ホントどうしよう?



 「お休みの日にすみません、わざわざ来て頂いて」

 先日の留守電の後、すぐに電話をかけ悩んでる事を話した。そしたら1度会って相談に乗ってくれるという事で、今日の待ち合わせになった。

 「いやいや、会社としても貴重な人材確保の為に頑張れと、予算が付いたから大丈夫。別の日に1日お休み貰えるから」

 高瀬さんはにっこり笑う。

 「貴重な人材?何人か説明会に来てましたよね?」

 そう、確か20人の予定って言ってたけど、10人はいたはずだ。

 「毎年の事なんだけどね、『どんな会社か見てみたい』だけの説明会参加者が多いんだよ。ま、そういうのはエントリーシート見て大体分かるんだ。ただ、高島さんは、『経理の仕事がしたい』ってのは凄く伝わって来てた。資格も取ってるしね。まあ、うちの会社のモノは知らなかったみたいなだけど」

 「すいません。正直『おもちゃ』のキーワードで沢山の会社に応募して、内容まではあまり読んでいなくて。でも、良さそうな会社だとは説明会の後も、今も思ってるんです。迷ってるのは扱っているモノなんです。そういうのを扱ってる会社って家族や友達に知られるのもちょっと微妙で」

 「そうだよね。まあ、俺は会社を立ち上げた時に引きずり込まれたから何とも言えないけど」

 「えっ、そうなんですか?」

 「まあ、ぶっちゃけ話しちゃうけど。社長は滅多に会社に来ない。理由は本業があるから。根室物産って会社知ってる?」

 「はい、大手ですよね?応募して落ちました」

 そう、おもちゃの会社以外の大手も受けてるのだが、しっかり落ちている。

 「うちの会社の社長は、根室物産社長の秘書をしてるんだ。こないだの綾瀬の大学時代の同期で、その綾瀬の友達だった俺も会社設立する時に巻き添いにされた訳。で、根室物産の社長ってのが、秘書の腹違いの兄で、うちの会社は根室物産の子会社になってる。で、健康保険とかの組合は『根室物産』と同じ。うちの『N-factory』も根室のNね。だからいざとなれば『会社は根室物産の経理です』ってとぼけても大丈夫」

 「はあ。」

 イヤ、そのとぼけ方には無理があるような・・・。

 「何だったら、所属を根室物産の経理にして、うちに出向でもいいかも。うんうん、それでどお?」

 「あ、いや。どおって言われても・・・」



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