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 そろそろ来る頃だな。

 スミレは山から降りてくるガイナード殿下一行を平地で待っていた。自警団として領地内で護衛する為だ。賊が直接ガイナード殿下の一行を襲う事も考えられ、スミレはココに配置された。まあ、ガイナード殿下がどんな人となりか見れるチャンスだ。周りの者に横柄な態度を取るようなら絶対にデイジーには近寄らせない。自警団にも鎧がありスミレはそれを着ている。なので顔がバレる事は無いだろう。

 山から一行が降りて来るが様子がおかしい。普通に降りて来ればなんて事は無い斜面なのに馬が興奮して足並みがバラツキ、砂埃を上げている。スミレは双眼鏡で確認し、すぐに馬を走らせた。その後に自警団の面々は続いた。

 賊が出たのだ。

 しかも数が多い。

 こういったのを狙う賊は通常、多くても10人位だが、今は50人程の賊がいる。いくつかの賊が固まって襲撃しているようだ。対して殿下の一行はかなり数が少ないのではないかと思う。スミレは近寄りながらざっと戦況を確認する。賊はとりあえず殿下の騎士に斬りかかっているようだ。数で押されている。スミレは賊とは何度か対峙しているので、この辺りに出る賊の顔は知っているが、見かけない顔もいる。賊の中で動きがよく、騎士が押されている所に助けに入った。

 コイツ強いっ!!

 スミレは自惚れている訳では無いが、はっきり言って強い部類だ。負ける事の方が少ない。それなのに一撃一撃が強く重い。

 くっ!!負ける訳にはいかないっ!!

 スミレは体勢を立て直して賊に向かう。

 自警団が助けに入ったお陰で戦況は一転し、殿下側が優位なりはじめ、賊はかなり倒されてきた。すると賊は一旦引く事にしたようだ。

 ん?

 花の甘い香り?

 こんな所で?

 誰だよこんな甘ったるい香水付けて戦ってる騎士は?

 殿下か?

 まあ、嫌いな匂いではないな。どちらかと言えば好きな方だが、この場には不似合いだっ!

 賊が撤収し、仲間を見ると1人怪我が酷いのがいる。意識はあるようだ。何とか他の仲間に馬に乗せてもらい自警団と繋がりのある病院に運ぶ事にした。

 「ここはラリック(幼馴染み)に任せる、私が彼を病院に運んでくるっ!」

 馬を走らせ病院を目指す。止血はしてあるから間に合う筈だ。馬の揺れは我慢してよ。

 急ぐ一方で、香水臭い男はイヤだな。殿下の顔も見れなかったし、またコッソリ見る時には風上に行こう。と思っていたのだ。



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