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13 〜ギャリー視点1〜

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 デビュタントパーティには王族は必ず出席しなければならない。毎年面倒だなと思い、途中で庭園に逃げのんびりする事もある。

 そんなある年、噴水のある庭園で啜り泣く声が聞こえて来た。気になり、そちらに歩いて行くと、少しふっくらした女の子が泣いていた。ギャラレイは自分と比較的歳の近い子息・令嬢の名前は覚えるようにしていた。将来この国を任された時には自分の手足となって動いてくれる者・その者の妻になる人達だからだ。

 この子は、エルストン子爵令嬢のロクサーヌ嬢か?確か婚約者に嫌われていると噂されていて今日もエスコートされていなかったな?せっかくのデビュタントパーティなのに。ロクサーヌ嬢は明るく親しみやすいと聞く。相手のクロス公爵の子息、名前は何だったかな?その、子息はロクサーヌ嬢の体型が気に入らないらしいが、どこがだ?可愛らしいではないか?うちの妹もふっくら体型だが、ガリガリよりも健康的だろ?

 俺はロクサーヌ嬢に近づきハンカチを差し出す。驚いた顔をしながらも

 『ありがとう』

 と微笑んだ顔は天使かと思う顔だった。

 うわぁ、この子可愛いっ!

 俺の周りに寄って来る令嬢は貼り付けた様な笑顔を向け、俺の言葉にすぐにご機嫌取りを混ぜる。それなのにこの子は・・・。

 俺の初恋はその瞬間に実らない事が確定済みだ。この子には婚約者がいるんだ。

 こんな可愛い子を邪険に扱うなんて、クロス公爵の子息はろくでもないやつだな。顔を見に行ってやる、と思いその場を後にした。



 王太子と言う立場上、婚約の話しはいくつもやってくる。しかし、ロクサーヌ嬢以上に惹かれる女性は現れず、俺は婚約を上手く避けていた。ロクサーヌ嬢は公式な舞踏会などにはその後参加せず、再び会う事も無く3年が過ぎた。



 舞踏会の取りまとめの担当に探りを入れ、ロクサーヌ嬢が明日の舞踏会に参加すると聞いて俺は舞い上がった。例え婚約者がいようとダンスくらいは踊ってもいい筈だ。絶対にダンスを踊って友達になって貰おうっ!



 当日、ダンスの申し込みをしようとロクサーヌ嬢のそばに行くと、夫人達の噂話しが耳に入る。当然ロクサーヌ嬢の耳にも入っているだろう。しばらくその話しを聞いていると、ロクサーヌ嬢は庭に向かった。あの噴水のある庭だ。近くと啜り泣く声が聞こえて来た。

 もしやロクサーヌ嬢が泣いているのだろうか?

 近づいて行くと、俺の妹だった。ロクサーヌ嬢は妹に近づきハンカチを渡し、話しはじめた。穏やかな声だ。しかし、話しはだんだんと不穏な方向へ行っていた。

 『見返してやるんだからっ!』

 ロクサーヌ嬢は3年で強くなっていた様だ。

 俺は協力したいと思った。俺なら公爵子息に強く言える。もし、見返した君が婚約破棄を望むなら俺は・・・。

 



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