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30 〜クロイツ視点1〜

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 王城から領地に戻り、マリアは先に城に戻り俺はダダン騎士団長に話しがあるからと、騎士団に向かった。

 「団長、話しと言うのは?」

 団長の執務室に入り椅子に向かい合った2人は、クロイツの言葉で話しがはじまる。

 「お前、マリアの事はどうするんだ?」

 ニヤリと笑いながら聞いてくる。

 「どうとは?」

 「惚れてるんだろ?しかもマリアはお前の言葉に乗ってきた。シャール元殿下が発言している時のお前の顔、ヤツを殺しそうだったな、今日で2度。多分マリアは大聖女に戻る事になるだろうよ。このまま手放していいのか?」

 「確かに俺はマリアに好意を持っていると思う。あんな悪意に晒された後でも凛としていて笑顔も可愛い。仕事にも熱心だ。マリアが今回ポーションやお守りに力を使わなかったら神殿・王族に対して暴動が起きていたかも知れない。なのに、嫌な顔1つせずに民の為に力を使う。それに精霊にしてもそうだ。まっすぐなマリアだからこそ力を、新しい薬草を授けてくるたのだ。そんなマリアに俺では隣に立つ資格はないだろうと思う。一介の騎士でしか無い俺なんか」

 段々と気分が重くなってしまう。

 そう、俺なんかがマリアの横にいれるはずなはい。

 「じゃあ、誰ならマリアと人生を共にしていいんだ?ハイド殿下か?違うだろ?マリアは拒否したぞ?」

 「それは、大聖女に戻りたくないからで。だから国王にも俺と一緒にいたいと言ったんだと思う」

 「はぁ~、お前ら無意識に面倒だな。お前らはいつでも2人で話す時は、他では見ないような笑顔だぞ?」

 そして、シッシッと部屋を追い出された。

 団長は愛する妻が待つ家に、もう帰りたいのだろう。愛する人か・・・。



 クロイツは城に戻り、夕食を食べる。マリアは義姉とティールームでお茶をしているという。俺が覗くと2人とも楽しそうに笑い、話していて、俺にも一緒に茶を飲むように誘ってくる。

 ああ、この時間がずっと続けばいいと思い、確かに俺はマリアと離れたくないと実感した。

 しかし、この離れたくない気持ちが愛だからかと自分に問いかけてみても、よくわからないとしか答えが出ない。

 「クロイツ、お茶冷めちゃうよ?」

 マリアに言われ、ハッとする。

 カップを握りしめたまま、考え込んでしまっていたようだ。

 「疲れたからもう休む」

 心配顔の2人を残し、俺は自分の部屋に帰る事にした。




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