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 「そうか、緑の精霊様の加護をマリアは受けているのか」

 神官長様が呟く。

 神官長の横でダダン様は頷き、マリアの横でクロイツも頷く。

 「あの~、私が受けているわけではなく、土地が加護を受けてるんです。騎士団で一緒に働いてるメアリも、緑の精霊様に気に入られてるんですよ?あ、メアリは話しはできませんけどね?」

 「マリアは話せると言う事なのだな?」

 「ええ、呼びかければちゃんと返事を頂けます」

 「そうか・・・」

 ふむ・・・、と神官長様は考え込んでしまい、室内に沈黙が降りる。

 そこへ、

 「マリアが戻ってきているのかっ!?」

 ノックも無しに神官長様の部屋の扉が開けられ、見たくない顔が現れる。

 「シャール殿下、今は来客中です」

 「マリアが戻って来るなら教えてくれてもいいだろうっ!神官長っ!ああっ、マリアっ!俺は周りの文官やリリアーヌに騙されていたんだっ!!大丈夫だ、もう奴等には何も言わせないっ!!だから、早く俺と結婚しようじゃないか。ココではなく今日から俺と城に住もうっ!!」

 シャール殿下はソファーに座っているマリアねそばまで行き手を差し伸べた。

 「「「「は?」」」」

 マヌケな声が見事に4人揃ってしまった。

 「王太子の俺を支え、大聖女として国も支えて欲しい」

 室内にいる全員は、シャール殿下にされたマリアへの仕打ちを知っている。神官長がマリアの退職金の手配をし、辺境伯の地へ行く事をすすめなければどうなっていたか。

 4人は唖然とした後、怒りがこみ上げて来たが、最初に冷静に言葉を発し、行動したのはクロイツだった。

 「それは残念でしたね、シャール殿下。私はダリル辺境伯の弟でクロイツ・ダリルと申します。マリアは長年の婚約を解消・並びに大聖女としての役目を解任されとても傷付き、我が我が辺境伯領へ来ました。そして、我が城で生活し心も身体も健やかになりました。そして、私達は・・・」

 クロイツは隣に座るマリアの腰を抱き寄せ、ふふっと笑いかける。

 「今更ムシが良すぎるのではありませんか?」

 クロイツはシャール殿下を正面から見据えて言い放つ。

 クロイツの手のひらの暖かさがマリアに伝わり、思わず顔が赤くなってしまう。

 「なっ!!何だとっ!!マリア、本当なのかっ!?」

 シャール殿下は狼狽えながらマリアに聞く。

 クロイツが言葉を濁した真意に気が付いたマリアも直接的な言葉を言わず、シャール殿下ににっこりと微笑んだ。

 「ばっ、馬鹿なっ!俺は父にどう誠意を見せればいいんだっ!?」

 シャール殿下は叫びながら部屋から走り去っ行った。

 「私に誠意見せろよ~っ!!」

 思わず呟いてしまう。

 「君たちそうなの?なんだ、だからマリアは大聖女としてこちらには戻りたくないんだな?」

 神官長様は2人を指差しながらたずねてくる。

 「は?作り話ですよ?もちろん。私は大聖女を解任・婚約破棄されて正直嬉しかったんです」

 マリアはケロリと言う。

 「は?だって・・・」

 と言いながらクロイツを見る。

 「ええ、私は付き合ってるとも結婚するとも一言も言ってません。皆さん、想像が好きですね~」

 クロイツとマリアは2人揃ってニヤリと笑い、ダダン様はニヤニヤと笑っていた。



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