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 「マリア、ポーションとお守りの販売許可が出た。今まで作った分をとりあえず持って行ってもいいか?」

 「はい、どうぞ。あちらの木箱に入ってます」

 入り口周辺の木箱を指差す。

 「あと、薬草なんだが。孤児院で販売させる事にした。販売額はこちらで指示し、半分を孤児院・半分をこちらに支払ってもらう事にした。販売量を見ながら後日また検討するがな。それでいいか?」

 「分かりました。今日からの製造量はどうしましょうか?」

 「ふむ。まだ売れ行きが分からんから、今までと同じでいい」

 「はい、変更があればお知らせ下さい」

 ペコリとお辞儀をするとダダン様は部屋から出で行き、付いて来ていた者が品物を運び出して言った。

 ポーション・お守りはマリアが1人で、作業し、薬草はメアリと2人で作業を分担した。中々順調だ。ケガリンに関しては騎士団に差し入れしたら、小さな怪我もすぐに治ると好評だった。



 神殿で販売を開始したポーションとお守りは、大聖女の祈りで効果がない者が必ず買って帰り、安価にも、効果があると好評でだった。お陰でポーションは毎日当初の倍以上、ミサンガ・石はその日納入されたモノ全てに力を込めて出荷するようになった。午前中は神殿用、午後からは孤児院用とメリハリをつけて仕事を分けてこなしていった。

 ある日、ダダン様が珍しく雑談をしに来た。手にはお茶菓子がある。

 「わぁ、奥様手作りのクッキーですね?以前頂いたの美味しかったです。あっ、今日はパウンドケーキもありますねっ、ありがとうございます」

 「2人が頑張っているからな。所で、民衆から今の大聖女を解雇しろと反発が強まっているのを聞いたか?」

 ニヤリと笑いながらダダン様が話し始めた。

 「いえ、ココには噂話は入って来ませんし、お姉様、ジャンヌ夫人も特に何も言ってらっしゃいませんでした」

 「そうか。神官長から手紙が届いてな、大聖女をクビにするのをシャール殿下が止めているらしいぞ?」

 「はあ、リリアーヌはまだ大聖女としていたんですね」

 何も出来ないだろうに・・・、1カ月ほど何をしてたんだろう。思わず首を傾げてしまう。

 「最初の数日は民衆の話しを聞いてたらしいが、すぐに部屋にこもって部屋から出て来なくなったらしいぞ。だからタダの聖女に民衆への祈りをさせていたらしい。偽大聖女追放で盛り上がってるようだぞ?マリアを戻せ運動もはじまっみたいだ」

 「えっ?私は帰りませんよ?」

 「あのっ!!マリアさんって大聖女だったんですか!?」

 事情を知らなかったメアリが大声を上げた。

 「あ~、まあ、色々あって?クビになってね?」

 あははっ、と誤魔化しておく。

 絶対に後から色々聞かれそうだけどね。

 「一応、シャール殿下が王太子から降りないとマリアは帰らないと神官長には伝えておく。後は?」

 「仕事を減らして欲しい」

 「ふむ、ソレなんだが。ポーションは無理だが、お守りを聖女に作らせるのはどうだ?あと薬草もメアリと魔術師を1人雇えば出来そうじゃないか?」

 「それはそうですが・・・。私はココの生活が気に入ってるんですっ!!」

 そう、やっと自分の居場所だと思える所が出来たのだ。ココにいたい。

 



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