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 サリーに出会った頃を思い出していると、今度は静かにドアをノックする音があり、セイラが返事をするとサリーかワゴンに食事を載せて運んできた。

「さあ、セイラ様。沢山お食べ下さいね」

 ベットにいるセイラの為に、ベット上に簡易な机を置きその上に消化に良さそうなスープ・パン・果物・果実水が置かれる。スープは2種類あり、一つはコーンポタージュ、もう一つは野菜たっぷりのミネストローネだ。両方ともセイラの好物で、食欲が無い時でも出されれば食べてしまう。

 サリーが部屋を出てから、大した時間も経たずにスープ等の用意がされていたのは、前もってサリーが厨房にお願いしていたのだろう。
 
「サリー、ありがとう」

 気遣いに思わずお礼を言ってしまう。セイラにはとても優しい侍女が付いているのね。改めて感謝だわ。

 セイラ、貴方には素敵な見方が沢山いるじゃない。

 思わず嬉しくなってニンマリしてしまう。

「セイラ様・・・。ささっ、冷めてしまいますよ」

  促されコーンスープから食べると優しい味がした。

 うん、私が食べるはじめての食事だけど美味しいわ。セイラの好みって言うのもあるのだと思うけど、前世で食べたサイゼリアンのミネストローネの味に近いわね。って事はイタリアっぽい味の料理が多いのかな?セイラの記憶を辿り、料理を思い出す。

 う~ん?

 前世の色々な国を合わせた感じ?

 まあ、日本は色々多国籍料理だったけど、ココもソレっぽいかな?私では食べた事のない料理と名前が浮かんだ。

 サクサク食べ進むセイラをジッ見ていたサリーが口を開いた。

「・・・。貴方は誰ですか?」

「え?サ、サリー?もちろんセイラよ。頭を打ったけど、私、変かしら?」

 セイラぶりっ子をしながら、サリーの目を見つめる。

「そうですよね、セイラ様ですよね。間違いは無いです。昨日から色々ありましたから、セイラ様も私も疲れているんですね」

「そうよね、サリーごめんなさい。私はもう大丈夫だから、貴方も今日はもういいわ。今日はもう下がっていいわ。ゆっくり身体を休めて、また明日からお願いね」

 にっこり笑うと、サリーは微妙な顔をして食器を下げながら部屋を出て行った。





 不味いわね、サリーは常にセイラに付いていたからすぐにバレてしまうわ。でも、どうしたら元通りセイラが表面に出て来るのかしら?
 
 サリーに今の状態を話すかも兄様に相談した方がいいわね。

 それと両親。兄様はどうするつもりかしら?

 伯爵家の沽券に関わるって、私の中身じゃ伯爵家に泥を塗るとでも思ってるのかしら?

 そんな事は、ないわよ?

 多分?

 あるのかしら・・・!?







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