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5 〜マーク視点〜

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 王家は伝統を重んじる傾向がある。番もその1つだ。今の王族である、我がローランド家もそうで、もちろん現国王・王妃も番である。俺の両親でもある彼らは、幼少の頃に出会い、婚約・結婚へと順調に進んだらしい。

 しかし、俺達3王子はいい歳になっても番が見つからない。番探しのパーティなどにいくつか身分を隠し、参加しても見つからないのだ。王太子は28歳、第2王子は27歳、そして俺第3王子は26歳だ。もし30歳までに番が見つからなければ、国内行脚をしなければならない。まあ、詳細は今は省こう。

 俺達3王子は、業務の合間を見つけては街に出たり、馬で遠乗りついでに国内を見つつ、番も探している。花がないのに、花の匂いがする女性は、今迄見つからない。香水とかの人工的な、匂いではなく嗅いだ瞬間に番だとわかると両親には言われている。

 その日も馬で朝から遠乗りし、そういえばフラワーテイル祭りだったのを思い出し、王宮への道をそれなりの速度で走っていた。すると、突如薄っすらとではあるが花の匂いがした。馬で走っているにもかかわらずーーー。

 動悸のような、なんとも言えない心地になり、前方を見つめた。すると、道端に人が倒れていた。女性のようだ。彼女に近づくと、花の匂いは一層濃く、甘くなった。

 見つけたっ!!

 この子だっ!!

 俺は急いで倒れている彼女を馬に担ぎ上げ、王宮の俺の部屋に運び、医師に容態を確認させた。医師によると、軽い熱中症らしい。確かに今日は暑かったのに、彼女は日傘も差さずに歩いていた様だった。

 医師からは、涼しい場所で水を飲ませて安静にさせれば熱も下がり、体調も戻るだろうと言われた。しかし、心配でたまらない。寝ている彼女に水を飲ませるには?口移しか?

 ゴクッと喉が鳴る。

 至急、侍女に冷たい果実水を準備させ廊下で受け取る。

 よしっ、飲ませるぞっ!!と思い、部屋に入ると彼女は目を覚ました。開いた目は緑の溢れそうな程、大きかった。可愛いっ!金色のフワフワの髪といい、天使の様ではないかっ!?

 水を飲むかとたずねると、声を出そうとしたが出ないようだったか、飲みたいのだろうと判断し、予定通り口移しで飲ませた。

 コクコクと飲み干した彼女は、まだ飲みたそうだったから、再び水を口に含むと、彼女から吸い付いてきたっ!

 何と愛らしいっ!!

 何だコノ生き物はっ!!

 番っ、もう離せないっ!!

 ああ、周りにも花が舞い降りて来る。真紅の薔薇だ。彼女によく似合う。



 キスも堪能し、残念だが、彼女をーーー、ライムを家に送る。直接彼女から名前は聞けてないが、王宮では本日の有名人らしい。

 番婚約破棄、されたらしい。

 番じゃなかったと。

 思わず『はぁ?どうやったら番を間違えるんだ?』と思ってしまうのが、番をパートナーに持つ者の呟きだろう。

 その疑問は、ライムの屋敷に行った時にわかった。ライムが席を外した時に両親に聞いたのだ。何で番婚約破棄なんて事が起こったのかと。すると思わぬ答えが返ってきた。

 「実は、ライムには婚約話が殺到していたのです。ライムは親が言うのも何ですが、可愛いのです。その婚約話し中にゴルバチョフ家もあり、まだライムには早いと思い全てを断っていたら、ゴルバチョフ家のジギー子息が番だと名乗りを上げたのです。番は当人しか分かりません。しかし、ライムは匂いなんてしないと言い張るので、間違いではと何度も申したのですが、認められず、伯爵家と言う事で我が男爵家も強く出れず。そうこうしているうちに数年経ち、あのですね・・・、キスが気持ち悪かったって言ったんです。番ではあり得ません。それで私達は番じゃないと確信しましたが、何も出来ず、今日になってしまいました・・・。ライムには辛い思いをさせてしまった。どうか、マクシミリアン殿下っ!ライムを幸せにしてやって下さい!」

 もちろん、幸せにする。

 全身全霊をかけてな。しかし、その前に、今までのライムへの行為、償って貰うぞ?

 下準備をしてから、な。




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